――そもそも長いお付き合いになりますよね。 加藤 「デビュー直前、ファーストアルバムをプロデュースしてくれる和田さん(註:和田博巳/元はちみつぱい)の事務所にピチカート・ファイヴがいたんですね。その頃からピチカートとは知り合い。第1期のヴォーカルだった佐々木麻美子がレコーディングに陣中見舞いに来てくれたり……だからこの世界に入って、最初に知り合ったグループなんですよ」 古市 「僕はピチカート・ファイヴのツアーにギタリストとして参加したこともあるしね。最後に真貴ちゃんを抱っこしてステージから去ったり」 ――いろいろ思い出すこともあるんじゃないですか? 加藤 「スタジオで良く会ってたよ。それにピチカートは、2代目のヴォーカルが田島くん(註:田島貴男/オリジナル・ラヴ)だったからね。彼もネオGS繋がりで知ってたし、身近だったんですよ。田島くんのラスト・コンサートで真貴ちゃんがコーラスやってたのも憶えてる。だから自然と近づいていったんだよね」 ――加藤さんにとっての野宮さんは、永遠の渋谷系の女王様、ですよね。 加藤 「うん。渋谷系が出て以降、いろんなバンドがいたけど、僕の中ではピチカートがシンボリックで頂点だし、1番カッコいいと思ってる」 ――野宮さんはコレクターズというバンドを……。 加藤 「見てないから(笑)」 古市 「真貴ちゃんあんま興味ないからね!」 野宮 「いやいや……でも、どうでしたっけ?」 一同 「(爆笑)」 加藤 「こんな調子だからさ。でもいろんな話してるんだよ。いつだったか、真貴ちゃんが曲を出すから、一緒に詞を書こう、ってなって。打ち合わせも兼ねて呑みに行ったりね」 野宮 「ちょうど私がデビュー30周年を迎えるタイミングで、今後何を唄っていこうか悩んでて。先輩に聞いたの」 加藤 「僕の中では渋谷系の永遠の女王だから、これから何をやっていくにしても、それを守っていったほうがいい、って言ったんだ。そのイメージを守っていく方がいいって」 野宮 「それが大きなヒントになって、今渋谷系を唄う、ってコンセプトの『FLASHBACK SHIBUYA』が生まれたの。加藤くんのその話はすごくヒントになった」 加藤 「でも本当に俺がやりたかったのはね、当時、渋谷系っていうすごく大きなムーブメントで活躍した人たちに、真貴ちゃんをイメージした曲を作ってもらって、それでオリジナル・アルバムを作りたかったの。〈渋谷系〉を懐かしがる人にも、なんだろうって興味を持つ人にとっても面白い1枚になるし、そのアイコンとして真貴ちゃんが真ん中に立つのは凄くいいな、と思って……でも未だにやってくれないんだよ!」 野宮 「いつかやりますよ。世界中に渋谷系のアーティスト、いますからね」 加藤 「台湾にもスウェーデンにもいるでしょ。もちろん小西くんにも1曲作ってもらって1枚アルバム作ったら、渋谷系聴いてた連中が、涙流して喜ぶと思うよ。でも真貴ちゃん、腰が重いからな(笑)」 ――コータローさんにとって野宮さんは? 古市 「俺はお姉さんみたいな感じだったなあ。リハーサルでも『コータローくん、お腹空いた?』ってピザとってくれたりして。そういう弟気分が満喫できる人(笑)」 ――野宮さんから見た古市コータローは? 野宮 「んー……」 古市 「荷物持ちだよ」 一同 「(爆笑)」 野宮 「でもギタリストとしてカッコいいな、って思ってる。こういうタイプの人、なかなかいないよね」 ――コレクターズの最新アルバムでは、野宮さんが「家具を選ぼう」にゲストヴォーカルで参加しています。 加藤 「あの歌は、カップルが自分の生活をより良くするためのラブソング、だったので、あんまり歳が離れすぎても成立しないから『真貴ちゃん以外いないな』と思って」 野宮 「この年齢にならないと書けない詞だなと思ったのと、あと加藤くんは、会うといつも『夫婦になろうよ』ってすぐ言うのね」 ――何を言ってるんですか(笑)。 加藤 「つい本音が出ちゃってね」 野宮 「口癖なのか口説いてるのかわかんないですけど、でもああいう歌の中で夫婦になれるって、音楽ってやっぱり良いな、と思って」 加藤 「だから、すごい派手な夫婦のイメージでアルバムも作りたかった。ソニーとシェールとか、ヒデとロザンナみたいな夫婦デュオ、今はいないじゃない? ていうか、俺のステージ衣装の目標は真貴ちゃんだったんだよ。かっ飛んだ衣装で驚かせるようなヤツ、他にはあんまりいなかったし」 野宮 「うん、ビジュアル系だよね、私たち(笑)」 加藤 「真のビジュアル系です。だって「〈SWEET SOUL REVUE〉あたりの真貴ちゃん、イッちゃってたもんねえ」 野宮 「イッてた。1回のライヴで10着くらい着替えてたから……曲数とほぼ同じくらい」 加藤 「そのどれもがディテールにこだわって、60年代の世界観を再現してたからね。真貴ちゃん自身の意思はそうでもなかったの?」 野宮 「そんなことないよ。信藤さんや小西くんの意見やイメージも大きかったけど、自分のやりたいことでもあったから。でも自分だけの意見だと、客観的に見れないし、新しいものをミックスしたり出来ないから、いろんな意見を聞いて、それを表現する立場でいようとするスタンスだったかな。でも1回だけ、それは絶対嫌だ、って言ったことがあって」 古市 「何それ(笑)気になる」 野宮 「それはね『シャネルスーツにスキンヘッドでやったらカッコいい』って言われて……(笑)。それだけは無理だった。でも素敵な衣装に何回も着替えたりすると、モチベーション上がるんですよね。いろんな女の人になれるし」 加藤 「あ、真貴ちゃんは30周年、終わったよね?」 野宮 「うん、4年前に。でも今コレクターズ、凄いじゃない? やっぱり人生の後半にピークが来たほうが幸せだと思う(笑)」 古市 「良いお言葉」 野宮 「だってずっと同じバンドだし、歌も全然衰えてないでしょ。同じキーで唄ってるし。凄いよ」 ――30周年はコータローさんも感慨深いんじゃないですか。 加藤 「気にしないよこの人は。他人事だから(笑)」 古市 「そう、どっかバンドのことに対して他人事じゃないと、やってらんないからね」 野宮 「それが長く続く秘訣?」 古市 「うん。そのバランス感覚は僕、自分でうまいと思ってる」 野宮 「この2人の絆が羨ましいなあ」 古市 「ピークがなかったから意地でやってるだけだよ」 一同 「(爆笑)」 加藤 「そこはコータローくんとほんとに意見が合ってる」 古市 「見ないでやめるわけにいかないじゃない?」 加藤 「売れちゃってたら、それぞれ意見が出てくるからね。実際〈世界を止めて〉がちょっと売れた時も、バンドの中、ギクシャクし始めたからね。みんなが〈自分は一流〉みたいに思い始めちゃって」 野宮 「私はそういう感覚があまりなかったからなあ。唄うことが好きで、やり続けてたらそうなっちゃったって感じで。でも全然飽きないんですよね。今でも楽しいし」 加藤 「真貴ちゃんは、そうやってがむしゃらな感じが前に出ないからカッコいいんだろうね。俺とかコータローくんは〈どっかでピーク見なきゃやめらんねぇよな?〉って。熱血だから」 ――じゃあトライアドというレーベルに対しての思い入れは? 加藤 「真貴ちゃんはあるでしょう。だって新譜のキャンペーンでラジオ局廻った時、俺達はカップ麺なのに、真貴ちゃんは高級な鯛飯食ってんだよ。タイじゃないよ、鯛だよ。コロムビアの人に言ったら『あ、バレちゃいましたか』って」 一同 「(爆笑)」 加藤 「『昼に鯛飯食べれるの、20万枚くらい売った人からなんですよねぇ』って(笑)。だからイエローモンキー、ミッシェルガンエレファントと並ぶ、ピチカート・ファイヴ。トライアドっていうレーベルを世に知らしめたっていう音楽の1つじゃない?」 古市 「今回、真貴ちゃんもトライアドから出せば良かったのに(笑)」 加藤 「そうだよ」 野宮 「加藤くんにやってもらうアルバムは、そうしてもらおうって勝手に思ってるけど(笑)」。 ――では30周年、共に何かできることを期待してます。 加藤 「デュエットね」 野宮 「じゃあ、派手な衣装で!」 加藤 「オースティン・パワーズ的な極めつけのやつをね!」 |
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