――最近は百々くんみたいに呑むバンドマンも減りましたね。 加藤 「うん、若手でそういうバンド、見かけないね」 百々 「ロック縦社会というか、先輩から呑み方から何から教わるとか、そういうのも俺らが最終世代かもね。下、可愛がってないもん。というか、寄ってこなくなった(笑)」 古市 「90年代入って変わったんだよ。だってその頃に思春期迎えてたら、俺、音楽始めてないもん」 百々 「ああ、別のとこ行ってるでしょうね。トッポかったり、悪いことしたかったら」 古市 「だから価値観は違ってるんだよ。音楽が好き、っていうのは同じだけどさ」 百々 「ギター練習してたら親に褒められる、感じでやってる子らが多いですね」 加藤 「もう逆に、音楽やることを親が応援するからね。専門学校行かせたりさ。俺らの時なんかエレキギター買っただけで、不良への1歩、だったから、親が目くじら立ててたもんね。俺のお袋、未だに『就職しろ』って言うんだもん」 一同 「わはははははは!」 百々 「他所様に誇れる仕事じゃない、っていうね」 古市 「まあそんなもんだよ。俺も最近やっと、これが仕事なのかな、って思えるようになってきたし」 百々 「いつ頃からそう思いました?」 古市「やっぱわかったのは、独立してからかな」 加藤 「自分たちでやってみて、商売するの難しいなぁ、って。やっぱ事務所入って給料制みたいになっちゃうと、歌という特技でサラリーマンやってるだけになって」 百々 「逆に言うと、今の若い子は諦めも早いですよ。バンドに対する思い入れって、そんなにない」 ――だから思い入れがあるというか、往生際の悪いバンドマンは、加藤さんやコータローさんを頼るんですよ。駆け込み寺的に。 加藤 「迷惑だよ(笑)」 百々 「でも加藤さん、若手を気にかけてくれるじゃないですか。俺にも会う度に『最近どう?』って」 加藤 「ていうか、コロムビアのトライアドが復活して、コレクターズもそこから出してるわけですよ。ロックバンドレーベルにするって言ってるから、それこそモーサムに戻ってきて欲しいなって、いつも思ってるし」 百々 「UK(プロジェクト)から出すって決まった後、トライアド復活って聞いて」 ――タイミング悪い(笑)。 百々 「もうちょっと早く教えてくれれば(笑)」 加藤 「そういうのもあったから、いつも気にしてるんだよ。ドミンゴスにはこういうこと言わないから(笑)」 一同 「わはははははは」 古市 「アフターミーにも言わないよね(笑)」 加藤 「そういう骨のあるミュージシャンで集まって、塊でやりたいなとは思ってるんだよ。キャリアのある人間はだんだんやり辛くなってるし、みんなリベンジして、お茶の間征服したいでしょ。俺たちだって〈TOO MUCH ROMANTIC〉でお茶の間制覇できるって思ってたもん。明日から俺たちのモッズファッションをみんなが真似する、って」 百々 「でもそんなコレクターズに影響された人、いっぱいいたと思いますよ。GREAT3の片寄さんとか」 加藤 「そうそう、片寄くんは高校生の時から観に来てた。俺がコレクターズの前にやってたバンド、知ってるんじゃないかな?」 古市 「片寄と俺が一緒に見てたんだよ、BIKEを。一緒に屋根裏の前で会って『行こうぜ』って」 加藤 「あいつ、まだ高校生だったんだよ。そしたらアイゴンと同い年だって後から聞いて。アイゴンはコレクターズのローディっていうか、コータローくんの舎弟だったから、ふたりは仲良くなったんだよね」 ――でもお茶の間征服って、ロックバンドやってる人たちのテーマなんですね。 古市 「テーマだけど、本音はどうでもいいんだよ」 百々 「今に比べて選択肢がそれしかなかったんですよね」 加藤 「歌謡シーンに対して、パンクスピリッツみたいなのをぶつけたくてしょうがなかったんだよね。お茶の間征服というより。だからちょっと言葉は悪いけど、テロリストになりたかったんだよ。テレビに出て行って、過激な格好良さを見せつけてやる。そのためのお茶の間征服。土足でそこに入り込んでいくようなさ」 古市 「だけど土足じゃ入れてくれないのよ」 加藤 「そう、出て行って、世間が『うおぉ!』って目を覚ます、そんなことを予想してたんだけど、ただ単に異端児なだけだった」 古市 「だってあの時テレビ出ると、必ず、プロデューサーに挨拶、ってしきたりがあったんだよ。挨拶は大事だよ? 廊下で会ったら挨拶するけど、なんでわざわざそんな時間を設けなきゃいけないのか、わかんなくない?」 加藤 「テレビがすっげぇ高飛車な時代でさ。〈ぼくのプロペラ〉っていう曲があったから、間奏でマイクを股間の前で回したんだよ。それをカメリハの時にやらずに、生放送でやったら、レコード会社のスタッフが怒っちゃって。番組終了して、放送室みたいなところに連れてかれて『謝れ!』って言われてさ。プロデューサー、カンカンなの」 古市 「だからタイマーズは大変なことやったんだね。ZIGGYとかは、ワルぶってるのを演出してただけだから」 百々 「俺はそのZIGGYを観て〈うわ、不良だわ〉って思ってました(笑)」 加藤 「全然違うよ。不良はこっちだよ」 百々 「テレビは何回か出ましたけど、昔、ロックバンドを10組くらい出して、その音源を街角インタビューで聴かせて『売れると思いますか?』ってアンケート取る企画があったんですよ。〈ブレイク指数〉つって。その数字、モーサムすごく低くて。20%くらいで(笑)」 古市 「支持率はすぐ誤魔化すくせになあ」 加藤 「モーサムはもう何年になるの?」 百々 「でもまだ18年とかですね」 ――この先輩バンドを見てると、参考になることも多いんじゃないですか? 百々 「やっぱ秘訣はいろいろ見えてきますよ。どんだけ人生楽しんでるかだな、って」 加藤 「あとどんだけ口先だけかなっていう」 百々 「あはははは! でも、ミュージシャンとしてのビシっとした筋の通し方は大前提で、それ以外に、男らしさとか人間臭さが見える人しか残ってないじゃないですか」 古市 「音だけじゃ無理だよ。音も素晴らしいけど、プラス人の部分がないと」 加藤 「どんだけ愛して、愛されるかだね。そうやって人と付き合っていくと、自然に自分のキャラクターがくっきりしてくるんだよ。それをわかることが、長くやっていける秘訣な気がする」 ――そうですねぇ。 百々 「たしかにそれって、20代や30代前半だったら出せてないところでしょうね。コレクターズは何年になるんですか?」 加藤 「来年が結成30周年のデビュー29年。だから再来年がデビューして30年」 百々 「何年かはアニバーサリーで食えますね(笑)。俺、こないだリキッドルームのアニバーサリーに呼ばれて出たんですけど、11周年だって(笑)。言ったもん勝ちですよね」 加藤 「ウチはホントのアニバーサリーだから。盛り上げてよ」 百々 「音楽と人で表紙ですね」 ――それ、怒髪天からも言われてるんですよね……。 加藤 「怒髪天はもう売れたからいいんだよ」 古市 「武道館やったらあと10年は持つから」 ――こないだグレートマエカワさんに『フラカンとコレクターズと怒髪天で同時表紙にしてくれ』って言われましたけどね。 百々 「抱き合わせか(笑)」 古市 「ウィーアーザワールドじゃねぇか(笑)」 百々 「じゃあ1人ずつコスプレやってくださいよ」 古市 「俺、ライオネル・リッチーだったらやりたいよ」 百々 「加藤さん誰ですか?(笑)」 古市 「カルチャークラブ?」 ――ははははは、ボーイ・ジョージですか! 百々 「立場的にはブルース・スプリングスティーンが良いんじゃないですか?」 加藤 「アツすぎるよ」 |
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