(「音楽と人」2017年3月号から続きます) ――フミヤさんとコレクターズって、わりと気が合うわけですか。 加藤 「そうだね。フミヤくんはすごい気さくで、いいんだよ。この前も武道館でフジパシフィックのイベントがあってさ。俺もフジパの作家なのに、なぜか出られなくて」 藤井 「(笑)一番貢献してるのにね!」 加藤 「で、フミヤくんは〈TRUE LOVE〉の版権持ってるってだけで1曲唄わされる話になってさ。俺、結局フミヤくんたちとずっと食堂にいたもん(笑)」 藤井 「(笑)そうそうそう。俺、キャニオンレコード出身だし、フジパにけっこう曲出してると思ってたの。そしたらなぜか1曲しかないの。そん時に初めて気づいたんだよ」 古市 「それが〈TRUE LOVE〉なんだ(笑)」 加藤 「そうだったよね。で、『何で加藤くん出ないの?』って話をずっとされてて(笑)。『やりなよ、1年後に』みたいな」 ――『BS☆フジイ』がきっかけということですから、お互いのデビューからずいぶん時間が経って関係が近づいたんですね。 加藤 「そうなんだよ。あと、弟の尚くん(=藤井尚之)に俺は詞を書いてたし、コータローくんも一緒にライヴやったりして、わりと接点はあったんだけどね」 古市 「尚ちゃんとは何年か前まで、中目で呑んだりしてたよ。下北とか」 藤井 「(笑)でも狭いっちゃ、狭い範囲だよね。そんなに広くない。特に80年代からずっとやってる人たちになると、だんだん狭まっていくから」 加藤 「この前、布袋さんに会ったんだけど、俺は埼玉県の一番群馬寄りの出身で、彼は群馬の一番埼玉寄りなんだよ」 藤井 「(笑)国境寄りなんだ?」 加藤 「国境寄り。もうメキシコとニューメキシコみたいになってるから。高崎線って言っただけで心開いてくれたもん。『高崎線!』て」 藤井 「(笑)あのへんもミュージシャン層があるよね」 加藤 「あるんだよ! でも布袋さんとは、フミヤくんとのこういう感じの会話に持っていけなかったな。高崎線だけじゃ弱い(笑)。フミヤくんは柴山(俊之)さんとか、博多の人たちの流れとはまた違うんでしょ? 久留米だしさ」 藤井 「違うんだけど、『おう、フミヤくん!』という感じでは言われるよ」 加藤 「でも九州人同士はタッグ組むじゃん。だから九州男児とはなかなか付き合いが継続できないかなって最初は思ってたけど、フミヤくんがこんなに気さくだとは思わなかったのね」 藤井 「ドアに鍵をかけてない感じ?」 加藤 「そうそう。みんな、ある程度のところまでは入れてくれるんだけど、なかなかね」 ――さて、武道館に話を戻しますけど、当日の演出は何か考えてますか? 古市 「うちらは一生に1回だからさ。それなりに大げさにやろうよ」 藤井 「大げさにやったほうがいいんじゃない? だから、どの曲でグッと来るか、だよね」 加藤 「でもやりすぎると、ほら、田舎の結婚式みたいになっちゃうじゃん。ゴンドラでガーッと上がってくみたいな。喜んでるのはお父さんとお母さんだけでさ」 藤井 「あとね、武道館は広い。ステージが。広いから、もし同じことをやったとしても、ホールより疲れるよ」 加藤 「広すぎて動くからってこと?」 藤井 「そう。ヴォーカリストは特に気をつけて。そこまで客がいるから、唄いながら行くじゃん。すると、〈うわ、ヤベえ! 俺はこの間奏だけで呼吸を整えられるだろうか?〉って(笑)」 加藤 「なるほど、そういうことか~」 藤井 「MCの流れって、ある程度考えるの?」 加藤 「考えないよ。出たとこ勝負だもん、いつも」 藤井 「今回は考えたほうがいいんじゃない? 俺も昔は何も考えなかったけど、特に一発しかないライヴだと、いちおうの筋書きを立てとかないとね。長くなりすぎるとか、妙な下ネタ行っちゃって帰ってこれなくて、でもバラードだ、みたいな」 加藤 「確かに。締めの言葉だけは考えとかないと。ねえ?」 古市 「大丈夫! 加藤くんが妙にかしこまったりしたら、ちょっとヤだもん」 藤井 「オープニング、涙で客席が見えないって状況が起きるかもよ(笑)」 加藤 「起きる起きる。ミュージシャン仲間はグデングデンに酔っちゃって(笑)」 古市 「その泣いてるのをもらいそうでイヤなんだよなあ」 加藤 「(笑)インフルエンザじゃないんだからさ。もらえよ」 古市 「いやいや。KING ALL STARSでさ、おばあちゃんが〈君といつまでも〉で泣いてんの見て、みんなもらっちゃったんだよ。メンバーも」 加藤 「その場で見ちゃうともらうのかな。でももらったって、ギター弾いてんだからいいだろ?」 古市 「ギター弾いてても、見えなくなるんだよ。もらいやすいんだよ、俺。結婚式とかでもそう」 加藤 「一番最初に泣いてんだよな、お母さんへの挨拶で」 藤井 「ファンにはそういう心境あるかもね」 加藤 「あると思うよ。ずっと応援してたファンの中には〈30年かかって、やっと来たんだ〉みたいな人もいっぱいいるわけじゃん? 俺たち以上に」 藤井 「そうだね。〈遠くなっちゃった〉って思うかもしんない」 古市 「いやぁ、大丈夫でしょ! 広島でチケット、まだ残ってるから(笑)」 加藤 「そうだよな(笑)。まあ、風邪ひかなきゃ大丈夫だね」 藤井 「それ! もう1ヵ月前からキヨーレオピンとか飲みはじめたほうがいいよ(笑)。免疫力高めるような」 加藤 「武道館ではないでしょ? 風邪ひいてやったこと」 藤井 「あるよ! 俺ね、チェッカーズの解散コンサートの2デイズは40度近い熱の中で唄ったもん。声も出なくなって、バンドは半音下げなきゃいけなくなってね」 加藤 「ああ、チューニングをね」 藤井 「そう、チューニングはいいけど、尚之は手順が変わっちゃうからさ」 古市 「うわぁ、厳しい!」 藤井 「あれはけっこうきつかった。血を吐くような思いで唄ったもんね。病院で点滴打って、そっから武道館行ったもん。だから体調管理だけはちゃんとしないとね。1週間はマジメな生活したほうがいいよ(笑)」 加藤 「コータローくん、隔離するつったもんな、俺のこと(笑)。面会謝絶だ!って」 藤井 「ジョギングとかしなよ」 加藤 「よけい筋を伸ばしたりしそうじゃん(笑)。何もしないほうがいいんじゃないかなって。犬にぶつかるとか、とんでもないこと起きそうな気がするんだよ」 藤井 「気負いすぎるとね(笑)。でもお祭りだね。楽しいなあ」 加藤 「うん。いやあ、今日はいいアドバイスもらえて良かったな」 ――ではキヨーレオピンで、ぜひ。 加藤 「うん。どうにか乗り切りますよ!」 (文:青木 優)
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