[撮影=依田純子]
(「音楽と人」2016年6月号 連載から続き)TOSHI-LOW 「でも結成から30年ってどうなんですか? 俺らこの間20年やったばっかりなんですけど、バンド始めた当初、少しでも見えてるもの?」 加藤 「俺はもう、次の次のライヴくらいまでしか見えてないよ。だからアマチュアの頃から、俺がライヴをブッキングして、それがロクでもないバンドとのライヴだとコータローくんが『あのね、加藤くん』って説教始めるんだよ。『大きくなるやつは、アマチュアの頃から仕事選ぶんだよ』って」 TOSHI-LOW 「あははははは!」 古市 「15周年超えたくらいからだね、ほんとに考えるようになったの。いろんな先のこととか」 TOSHI-LOW 「先ってどんぐらい先のこと?」 古市 「もう死ぬまで。どういうプランでやってけば、バンドが持つのかなとか」 TOSHI-LOW 「俺は40越えて今42なんですけど、ちょっと今までと違うメンタルの問題も少し出てきて。ただ単に突っ走れたのが、去年の20周年が忙しかったっていうのもあって、今年の始め、結構どよーんとしちゃって。〈何のやる気も起きねぇわ、俺終わったわ〉みたいになっちゃって」 加藤 「俺らの場合、体力の問題もそろそろ出てくるからね。特に50過ぎてからすごく考えるね。だって20代にやってる時と同じことやってるんだからさ。それが難しいよなっていうのはすごい思う」 古市 「20周年以降は精神力だよ。やっぱ気持ちも変わってくるからさ。ホルモンのバランスとかで」 加藤 「だって今TOSHI-LOWくん後厄でしょ? 俺も後厄の時にパニック障害になったからね。そういう身体の節目でガクッと落ちるのに、10代20代と脳みそは同じで、そのままやろうとするから身体はついていかない、頭はついていかない」 TOSHI-LOW 「周りが年下ばかりになるじゃないですか。んで、年齢とか自分の出来なさとかとか、いろんなこと考えるとグーッときちゃって」 加藤 「俺も。どうなるか分かんないんだけど、それでもやらないといけないのがこの仕事だし、ロックンロールだし。事故があっても良いことがあっても乗り越えていけるようなバンドになれば良いのかなって」 ――あとよく語られていると思いますが、TOSHI-LOWが最初にコレクターズを知った時の思い出を。 TOSHI-LOW 「それまた話すのかよ。ブルーハーツを楽しみにテレビを観てたら、ガタイのいいオカッパの(笑)派手な衣装を着た人が出てきたんだよ。でも曲が良くてさ。自分が好きなパンクスタイルじゃなくても、心にスッと入ってきてさ、ブルーハーツよりも自分の中に残ったの。あと水戸にはモッズの集団がいてね。15人くらいでベスパに乗ってんのよ。そいつらとつるんでたら、みんなコレクターズのことは知ってたわけ」 ――一緒にライヴした時も、30曲くらいリクエストしたって聞きました。 TOSHI-LOW 「ポップなものっていうか、キュンとくるところが好きなんだよね。ほんとはロックの攻撃的なところが好きだったはずなのに、コレクターズに関しては自分の甘酸っぱいところにギュッとくるっていう」 加藤 「一番びっくりしたのは、トリビュートアルバムに参加をお願いしたら、〈プラモデル〉を選んできたってことだよ(笑)。その〈プラモデル〉がすごいカッコよかったんだよ。俺たちはやっぱ野暮ったいモータウンなモッズフィーリングで作ったけど、もっとモダンな感じでさ。あの頃プロデューサーとかがいて、TOSHI-LOWくんがやった〈プラモデル〉みたいなアレンジをやってたら、もうちょっと評価されたんだろうな、って思ったりしたね」 古市 「「AXのライヴに出てくれた時、TOSHI-LOWが〈プラモデル〉唄ったんだけど、出てくるなりハイキックしてんだよ(笑)」 加藤 「おっかない吉川晃司みたいになっちゃった(笑)」 古市 「そのあとうちのイベントに出てもらった時も、TOSHI-LOWと会って、いきなりボクシングの距離について話したもんね。あとKOHKIのギターがカッコ良くてさ。俺、あんまり打ち上げで音楽の話しないんだけど、KOHKIとは話し込んだね」 TOSHI-LOW 「熱烈なPですから(笑)」 古市 「すっかりBRAHMANもファミリーになったね。組合とは違う、なんかファミリーなの」 TOSHI-LOW 「準組合」 古市 「組合になるには若いからさ」 TOSHI-LOW 「MOBYより上ですよ(笑)」 加藤 「とにかく武道館頑張るからさ、応援してよ!」 TOSHI-LOW 「そりゃもちろん。楽しみですよ。昔、コブラの武道館の時はほんとに悔しくて泣いたからね。『なんでやるんだよ!』って。今回はまったく逆で、嬉しくてしょうがない。その先も考えてる、ってことも」 古市 「武道館やって、攻撃をやめるのは良くないよね」 加藤 「そう、それでまた普通のライヴハウスに戻りますみたいなことは絶対言いたくないから。武道館売り切って『再来年、ドームやるからさ』って言いたいね」 古市 「再来年はちょっと早いけど、5年後とかね。でも加藤くん、60になっちゃうのか」 TOSHI-LOW 「還暦でドームって、カッコいい」 加藤 「還暦でドームやれたらほんとに幸せだよ」 古市 「ポールを見習ってね」 TOSHI-LOW 「〈ブラックバード〉、弾き語りで(笑)」 加藤 「緊張するよ~」 古市 「やっぱりロックバンドは、何かを達成しちゃダメなんだよ。常に通過点じゃないと」 加藤 「まあね、通過点って言えるくらい、武道館に人を入れなきゃいけないんだけどね」 古市 「これコケたら通過点になんないから(笑)」 ――じゃあそのためにキャンペーンを張るわけですかね。 TOSHI-LOW 「みんなどういうふうにやっていくの? 一年間キャンペーンをしていくの?」 ――フラカンとかは一年間かけて武道館武道館と言い続けてましたけどね。 古市 「うちはそこまではやんないかな? もちろん頑張るけどね」 加藤 「フラカンとかはさ、鳴り物入りでソニーから出て、切られて事務所もなくなって一人でやって、また這い上がってみたいな、『ザ・ノンフィクション』で取り上げやすい感じじゃない。俺たちって、そういうわかりやすいドラマチックな展開があんまりないんだよ。だから『買ってください!』って感じの営業は似合わないと思うんだよね」 古市 「それはないね。要は、自分たちで物販やって、似合う人と似合わない人の違いだよ。グレート(マエカワ)が物販に立つのは自然だけど、俺とか加藤くんが立つと、その時は喜ばれるかもしれないけど、心のどこかでみんな引くと思うんだよね」 加藤 「だからわりと通常営業しながら『来たい人来てよ』って言って集まってくれれば良いけどね」 ――でも裏でいろいろな努力をすると。 加藤 「裏ではもう必死だよ。だって平日の武道館だぜ?」 TOSHI-LOW 「周りでやって欲しかった人たちが盛り上げていけば大丈夫でしょ」 古市 「フラカンとか怒髪天とか、武道館先輩がいるからね。そういう人は協力してくれると思うし」 TOSHI-LOW 「山中さわおに手売りとかやらせなくて良いんですか?」 加藤 「当日、入り口でもぎりさせようかな」 古市 「ブラフマンの会場でチケット売ってよ(笑)。『今買うと、トシロウのサインつきです』って」 TOSHI-LOW 「最後のほうでもしヤバかったら(笑)」 古市 「非常事態の時は頼むわ(笑)。うち、アリーナの客席も強気で設定するから」 ――じゃあそういう協力もしていくということで。 TOSHI-LOW 「全組合で」 加藤 「たぶん東南スタンドはピロウズが担当だな」 古市 「全部ブロックごとに担当割り振って、当日ステージから観た時に『なんだよスクービー、サボってんじゃねぇかよ』って」 ――ノルマ制だ(笑)。 TOSHI-LOW 「どのブロックでも請け負いますよ」 古市 「じゃあ1ブロックお願いするわ」 TOSHI-LOW 「地元の水戸で売らせます」 加藤 「やたらあのブロックガラ悪いな、って(笑)」 |
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