(「音楽と人」2016年7月号 連載から続き) 今月のゲストは、千葉県成田市が産んだ最強ロックブラザーズ、大木温之(The ピーズ)とTOMOVSKYの大木兄弟! 雑誌、音楽と人での連載から続けてどうぞ。消防訓練まで起こりました! ――コレクターズの魅力とは? はる 「なんかオシャレでダンディーなところだよ。俺たちって貧乏とか情けなさを売りにしちゃうけどさ、そういうことしないもん」 トモ 「自分らの中ではアウトな日本語のバンドと、セーフっていうか好きなタイプのバンドがあって。青春パンクとかは全然アウトなんですよ。ああやってこれ見よがしに若者を応援するようなのは」 古市 「これ見よがし(笑)」 トモ 「その頃はさ、すごい男くさいロックか、もしくは若者たちに〈僕ら、君らの味方だよ〉って言うようなロックか、どっちかしかいなかったんだけど、コレクターズはどっちでもなかったんだよ」 加藤 「ああ、確かにね」 トモ 「自分らはこういう音楽が好きでやってるだけなんだ、って。で、俺らもどっちも嫌いだったの。そこにシンパシー感じた。全然若者にも媚びてないしさ、別にラヴソングでもないしさ」 はる 「コレクターズの詞の世界っていうのはどっからきてるんだろうね? 洋楽を和訳するとコレクターズみたいな感じになんのかな」 加藤 「本当にそう。俺なんか、当時聴いてた洋楽かぶれなわけじゃない? だからジャムだクラッシュだセックス・ピストルズだストラングラーズだ、その和訳を読んではさ、こういうのを日本語でカッコよく唄うといいんじゃないかなとか、思ってたからね」 ――それが根っこにあるんじゃないかと。 トモ 「あと、みんなが同じところで拳あげたりとかしてたじゃない? ああいうの、気持ち悪くて。クールだったんですよ、コレクターズは」 加藤 「それが共通してるところだよね。表現してる音楽のスタイルは違うけど」 はる 「やっぱり千葉とか埼玉の人は媚びる必要がないっていうことなんじゃないのかな」 トモ 「そうそう、どうせ好かれないっていうか、好かれるほうが気持ち悪い、みたいな」 はる 「田舎から東京に出てきた人は友達作ってナンボとか、みんなと仲良くやってワイワイ騒がなきゃいけないと思って頑張っちゃうんだろうけど、千葉とか埼玉のヤツは、ちょっと傍観できるわけで」 加藤 「要するに距離感がね」 はる 「そう。ひとりでもやっていけるし、仲良くしなくたっていいんじゃないの?みたいな、そういう余裕が千葉とか埼玉にはあるんだよね」 トモ 「長嶋と掛布だからね」 はる 「そうそう、千葉はね」 加藤 「何か言ってやれよ、もう(笑)。長嶋と掛布って!」 はる 「わりともう孤独に慣れてるような感じがあるかもしれない。だって裸で外で寝てても風邪ひかないっていうのは、千葉と埼玉の特権だから」 加藤 「風邪ひくよ!(笑)」 はる 「あははは。なんか余裕があるんだよね。無理しないのよ」 トモ 「2番手ぐらいでいいや、みたいな」 加藤 「だから距離的なところはあるよね。ほんとはちょっと都内にも憧れてるんだけど、ちょっとそういうのにもなれないし、かといって覚悟決めて別に東京に出る必要もないし」 はる 「だってコータローさんなんて、もともと池袋のど真ん中でしょ。無理しなくたっていつでも東京のど真ん中にいるわけだからね」 古市 「だから今でも、ロックはレジャーだ、って言ってるもん」 はる 「ロックはレジャー? 趣味?」 加藤 「全然趣味。かまやつさん(註:かまやつひろし)かコータローかって言われてる、今」 はる 「じゃあ武道館もレジャー」 加藤 「全然レジャーだよ」 トモ 「レジャーの延長(笑)」 加藤 「必死な振りしてるだけだから」 ――じゃあ大木兄弟から、コレクターズの武道館について一言。 はる 「やっとっていうか、今さらっていうかね」 トモ 「そう。今までやってなかったんだ、って思ってさあ」 古市 「よく言うよ!(笑)」 加藤 「え、カステラの時やったの?」 トモ 「ワンマンはない。ZIGGYの前座をやったことがある」 加藤 「えええええええ、それ、チョー興味あるんだけど!」 トモ 「やったって1回だけだよ」 はる 「ビートルズのドリフみたいに?」 ――あははは! 館内放送「これは訓練です。みなさん、火事です、火事です!」(ビルの消防訓練のアナウンス) 古市 「聞いてないよ! そんなの!」 加藤 「ラッキーだよ。この訓練、チョー面白いから」 はる 「え、ほんとに?」 加藤 「おじさんが『火事です、避難してください』とか言うんだけど、必ず噛むんだよね(笑)。俺、この訓練に出たことあるんだから。『みんな忙しいから加藤さん出てください』って言われて。消火器抱えて(笑)」 ――じゃあZIGGYの武道館の話に戻って(笑)。なんでやることになったんですか? 古市 「森重が好きだったんじゃないの? カステラを」 トモ 「絶対それはない(笑)。人のライヴだから気楽っていうかさ、俺らイヤなヤツらだったからすごいバカにしてたんですよ。ZIGGYのこともZIGGYのお客さんのことも。その時〈ドイツ人〉って曲をやったんだけど、それってドイツ人の真似をして〈ドロドロデッヒ、ドロドロデッヒ、ドロドロドロドロアッアー〉でサビまでいくの。で、サビは〈イッヒーリーベ、イッヒーリーベ〉を繰り返す曲だったんだけど。そこのサビまでのAメロを全部〈ジギーノゼンザ、ジギーノゼンザ、ジギーノゼンザ、ジギーノゼンザ〉」 一同 「わははははははははは!」 館内放送「地震です、只今地震が発生しました」 加藤 「地震まできちゃったよ(笑)」 トモ 「でもね、森重さんにはあんまりいい印象を持たれてないみたい」 古市 「そりゃそうだよ!」 館内放送「震度6の地震がきますので……グエッヘン! か、館内の皆さんは身の安全を図ってください」 はる 「エヘン虫だよ、エヘン虫」 トモ 「はる、はる! 何やってんだよ! 地震だぞ! シャッターチャンスじゃないかよ!(註:机の下に隠れる)」 加藤 「聞いてないんだけど、この訓練(笑)」 ――(笑)はるさんは武道館っていうのは思い出が深いですか? はる 「AC/DCとかレインボーとか永ちゃんとかだよね。でも俺らが武道館って話があったら、アビさん『やってもいいけどデカい音出るの?』って言いそうだね。『その日空いてるけど、デカい音出なきゃイヤだよ』とか(笑)」 ――はるさんは憧れがあるんですか。 はる 「なんだろうね。武道館はね、デカい音が出ればいい。だからバンドよりも、周りの応援してる人のステイタス、夢みたいなもんじゃないのかな。だからそこまで辿り着くまでの努力をしないことには意味が無いね。だから自分らにはないところだなって思う。俺、そういうのないから」 ――いやいや、武道館バトンはコレクターズからピーズにまわりますよ。 はる 「世の中の人はそう言うけどさ、俺らツアーとかちゃんとやってないもん。そういうコンスタントな活動をして、みんなに夢見せてるようなバンドじゃないと、武道館でやるとか、口にしちゃいけないと思うね」 ――なるほど。 はる 「それだけめったにやっちゃいけないところだよ? アイドルとかやってるのを見ると、〈あれ? おかしいよな、変だな〉って思う。だからコレクターズとか怒髪天とかピロウズみたいに、年がら年中ちゃんとツアーして、そこに辿り着くまでの流れがあるんだったら全然いいよね」 トモ 「〈MARCH OF THE MODS〉だもんね、タイトル。カッコいいよね」 加藤 「ネオモッズはイギリスで1979年に誕生したって言われてるんだけど、その時、イギリスでネオモッズ連中が〈MARCH OF THE MODS〉っていうタイトルでライヴやってたのよ。その行進するマーチと3月のマーチをかけて、時期を含めて〈MARCH OF THE MODS〉、3月のモッズ、で、ちょうどダブルミーニングでいいんじゃないの?って思って。俺たちがデビューする前に、新宿でも〈MARCH OF THE MODS〉ってイベントがあったけど、もともとはイギリスでそういうのがあったのよ」 トモ 「クールでいいですよ。〈辿り着いたぜ、俺たち〉みたいな、そういうタイトルだったらイヤじゃないですか」 ――血と汗と涙、みたいな(笑)。 トモ 「〈コレクターズ・イズ・ヒア〉とかさ(笑)」 加藤 「いちばん最初にポスター作る時、いろいろ下に苦労話を書いたりするじゃん。あれもいろいろ考えたんだよ、コータローくん。ねえ? 〈ネオモッズの若獅子って言われた俺たちも50を超え〉みたいなことを書いてあって(笑)」 一同 「わははははははは!」 加藤 「〈遂に辿り着いた憧れの場所・日本武道館!〉みたいな文が書いてあって。みんなに『これやめようよ』って(笑)」 館内放送「7階の火災はボヤで鎮火しました」 加藤 「いいから、もう!」 はる 「でもメンバーが元気なうちにやっとかないとね。もう今や、スケジュールを1年先に持っていくのって、ほんとに怖いからね」 加藤 「ほんとにそうだよね。自分の体調とか」 はる 「健康でその日をちゃんと迎えられるのか、とか」 加藤 「だってその2日前に風邪ひくかもしれないしね」 古市 「おまけに時期が3月だからね、いちばん危ない」 トモ 「人ごみ行けないね」 加藤 「そういう緊張のほうがデカいよ」 トモ 「絶対注射は打ったほうがいいですね」 はる 「電車も乗らないでね。もう武道館のそばに引っ越しとけばいいじゃん」 ――あははは! 九段下に(笑)。 加藤 「もう這ってでも行けるようにね(笑)」 トモ 「家作っちゃえ!(笑)」 |
<<< ◆ VOL.11「ゲスト:クハラカズユキ」 | ◆ VOL.9「ゲスト:TOSHI-LOW(BRAHMAN)」>>> |