![]() (「音楽と人」2017年1月号から続きます) 古市 「横浜で一緒にやったりしたこともあったよね」 曽我部 「やりましたよね。その楽屋で、コレクターズがステージに出ていく瞬間が最高だったんですよ。先輩の動きをいろいろ観察してたら、加藤さんがいろいろ指定してるんですよ。『今日は76年のフーみたいな感じで行くぞ』って(笑)」 ![]() 「そうそうそう(笑)。テーマ出してた!」 曽我部 「その指定が細かくて(笑)。『あれ、ロジャー(ダルトリー)は思いっきりやってるようで、ちょっと手抜いてるんだよ』って(笑)」 加藤 「キース・ムーンがステージの上でひっくり返ってからドラムセットに行くんだよ。だからQ ちゃんに同じことやらせて(笑)」 曽我部 「最高だなと思いましたよ。おまけにそれを、4人ともわかってるんだから。すごくカッコよかった。昔、ギターウルフと一緒になった時に、楽屋で同じようにセイジさんが『体力がいちばん偉いんだってことを見せるライヴをやろうぜ』って言って3人で出てったのを思い出しました(笑)」 加藤 「その時に初めて曽我部恵一バンドを観てさ。すごいいいライヴやだったんだよ。途中、アカペラっぽくなってみんなで唄う曲とかやっててさ」 古市 「曽我部の声が聞こえてくるんだよ。客があんまり唄ってくれなくて『みんなダメだ! 楽屋でコータローさんも唄ってんだぞ!』って(笑)」 ――ははははははは。 加藤 「その感じが、サニーデイの印象とガラッと変わってたんだよ。それを観てさ、俺とは真逆のタイプなんだな、って思ったの。俺は同じバンドを続けたくて、なんとか続けるためにいろいろ努力してきたけど、曽我部くんは、自分のやりたいことがあるんだったら多少犠牲を払ってでも飛び出すことを選ぶんだな、って。そうやって挑戦することが出来るヤツなんだな、って、ちょっと羨ましくもなった」 曽我部 「でも、僕がコレクターズに思うことは、長く一緒に続けた人たちだけが出せるバンドの音なんですよ。銀杏BOYZのトリビュートに、コレクターズも俺らも参加してるんですけど、ひと通り聴いたら。コレクターズだけ音の強さが全然違うんですよ。やっぱりそこはテクニックどうこうじゃなくて、何年一緒にやり続けてきたか、その時間だけが答えなんだな、って。だからバンドを強くしていくには、ずっとやり続けるしかないのかなって。それ見てたら、バンドずっと続けたいなって思いますよ。どんな若いバンドも、きっと」 加藤 「まあ……いい後輩持ったな」 曽我部 「続けてるから絶対そうなるわけじゃないんですよ。でも、続けないと出せない音をしてるんです。フラワーカンパニーズとコレクターズのようなバンドは本当にないですね」 ――そしてコレクターズは、12月7日にニュー・アルバムをリリースし、3月1日に日本武道館という大舞台が控えてます。 曽我部 「武道館やるのもそうですけど、近年、動員とか人気が物理的に上がってるじゃないですか。30年目を迎えるバンドで、それは凄いなって思いますね」 ![]() 「ロック界の七不思議、って言われてるんだよね(笑)」 加藤 「七不思議って(笑)」 曽我部 「日本だと一回動員落ちたら、なかなか戻らないんですよね」 古市 「動員落ちたところで、バンド側が諦めて、はぁ~ってなっちゃうからでしょ。俺らはそこの根性が違う」 曽我部 「それがすごいですよね。僕らの知らないところでいろいろあるんでしょうけど、なんか全然めげないっていうか」 加藤 「たぶんコータローくん、金あるんだよね」 ――は?(笑)。 加藤 「金持ってるんだよ(笑)。親父の遺産か株かなんか。余裕だもん、何やっても」 古市 「違う! 余裕に見せてるんだよ(笑)」 加藤 「絶対あるんだよ、この人。だってすごい窮地に立たされて、事務所なくなるとか言ってるのに、『まあ、なんとかなるでしょ』みたいな感じで、ライヴハウスにブッキングの電話してるんだもん(笑)」 古市 「いや(笑)あの時預金なんか一銭もないよ、俺。それで言ったらこないだのサニーデイのアルバム、あれは腹くくってたと思うよ。一筋縄で出来るもんじゃない」 加藤 「出来ない。あれは預金だけじゃ出来ないね(笑)。コータローくんはまだ預金の範囲内での行動しかしない」 ――はははははは。 ![]() 「でもコレクターズはそういう悲壮感が一切ないですよね。何があっても」 加藤 「不思議なことにね」 古市 「最悪さ、金なくなって路上生活しても、なんとかやっていけると思ってるんだよ。ギャンブルでも本気でやらせたら、そこそこの地位にいけると思ってるし」 曽我部 「いやあ……自分の息子がコータローさんみたいに育ってくれたらいいなあ」 古市 「息子には『自由だね』って言われるけどね(笑)」 加藤 「息子から『自由だね』って言われる親父、どうなんだよ(笑)」 ――目白で生まれ、池袋で育ったことが大きいんですかね。 加藤 「そりゃ世田谷で生まれ育ったヤツよりたくましいと思うよ」 古市 「目白だから、遊び場ずっと池袋じゃん? 小学校の時からそのへんのチンピラに蹴りとか入れられてんだよ?」 加藤 「普通じゃないよ(笑)」 ――あははは。 ![]() 「目白なんてハイソだけどね」 古市 「目白行くといきなり避暑地みたいになるんだけど、ちょっと西武線の踏切越えた瞬間に、ゴッサムシティに変わるんですよ(笑)」 曽我部 「僕も大学が池袋でしたから、こっちのエリアにはあんまり行かないようにしようとかありましたよ」 加藤 「池袋北口とか危なくて行けなかったもん。路上にいっぱい人寝てたし」 曽我部 「夜はあんまり近づかなかったですよね」 古市 「物足りない」 ――物足りないって何ですか(笑)。 加藤 「ていうかコータローくん、池袋の何なの(笑)」 古市 「俺、あらゆる経営コンサルタントでもいけるし、フィクサーでもいけるからさ」 ――フィクサー(笑)。 古市 「街のフィクサーとして」 ![]() 「なるほどね。豊島区のフィクサーね」 古市 「まあ区長っていう夢は捨てたけどね」 加藤 「え、捨てたの?」 古市 「だって俺、中卒だもん!」 加藤 「大丈夫だよ。だって『中卒弁護士』っていうドラマに出るんでしょ?」 ――何の話をしてるんですか(笑)。 加藤 「将来作りたいっていうんだよ、『中卒弁護士』」 ――あははは! じゃあ最後に加藤さんから曽我部さんへ……。 加藤 「このまま一緒に突き進みましょうよ。って感じ(笑)」 曽我部 「頑張ります」 加藤 「だって今回のアルバム作る時にさ、コータローくんから釘刺されたの。『サニーデイもスピッツもけっこう今回頑張ってるから……わかってるよね?』って(笑)」 古市 「だって俺がさ、今はなるべく買うようにしてるけど、レコード買いに行ったんだよ?しかも売り切れてて、曽我部に『どうしよう』って電話したんだよ?(笑)そしたら『大丈夫です。もうすぐセカンドプレスが出ます』って(笑)」 ![]() |
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