ジャングル大帝DVD-BOX1―国産初カラーTVアニメの制作過程―
解説:伊藤秀明/銀英社、原口正宏/リスト制作委員会
『ジャングル大帝』は、1965年(昭和40年)10月6日から翌1966年9月28日までフジテレビ系で放映された、日本初の本格的なカラーTVアニメシリーズである。
原作は手治虫氏の代表作として知られる同名漫画。製作は氏が主宰していた虫プロダクション。同社は1963年、『鉄腕アトム』でTVアニメのパイオニアとして数多くの技法的開拓を成し遂げ、この『ジャングル大帝』でもカラー化という技術革新に業界の先陣を切って挑戦したのである。提供はテレビメーカーであった三洋電機。当時はまだカラーテレビの一般家庭への普及は途上段階であり、本作がその促進に果たした役割は想像以上に大きかった。
制作には、総監督の山本暎一氏、監督補の林 重行(りんたろう)氏をはじめ、『アトム』を支えてきた社員スタッフが多数参加。音楽は冨田勲氏が担当し、重厚なシンフォニックサウンドによるオープニングやBGM、バラエティ豊かなミュージカル曲など、幾多の心に残る旋律を生み出した。本作はまた『アトム』に続く輸出作品ともなり、米国をはじめ世界各国で放映され、大きな人気を呼んだ。
当時の虫プロが持てる精力を傾注し、TVアニメの可能性を押し広げた力作、それが『ジャングル大帝』である。
本DVD-BOXの特色
虫プロの名作アニメとして高い評価を得る『ジャングル大帝』は当然のことながら、過去数度にわたり映像商品化されてきた。しかし今回のDVDシリーズでは、これまでの商品に収められた映像を単に踏襲することは避け、初心に還ってその内容の吟味を行った。その結果、発掘できた貴重な映像は本DVD中に、判明した事実の数々は本解説書中に余すことなく収録、公開してある。
最も貴重な映像は、本放映初期に使用されたオープニング(提供表示入り・歌詞版)である。残念ながらフィルムの痛みが激しく各話への収録は難しかったため、映像特典という扱いをとることにした。また、それ以外に発掘されたオープニングやエンディングのバージョン違い(映像や音声の内容が異なるもの)もすべて映像特典として収録。さらに第1巻では、第1話兼用パイロット版のカラー絵コンテ31枚もセレクトし、静止画の形で紹介している。
解説書には、虫プロ社内に保管されていた各種資料類をフルに生かしたメイキング記事を豊富に掲載。特に、当時の社内機関紙「週刊じゃんぼ」がほぼ完全に残っていたことは、細かな制作プロセスの記録を可能にしてくれた。一方、テロップカードの散逸により、エンディングクレジットの画像復元は果たせなかったが、カードの原稿である「タイトル連絡表」は現存。4〜7頁では、それをもとに書き起こしたスタッフリストを作成、掲載している。