◎萩谷由喜子
[Disc 1] casual & healing COCQ-83480
- プレリュード ハ長調
鍵盤楽器の1オクターヴを均等間隔に調律する平均率を高く評価したバッハは、≪平均率クラヴィーア曲集≫を書きました。これは、第1巻の巻頭を飾る有名なプレリュードで、シンプルなアルペジオの美しさが心に染みます。
- G線上のアリア
4曲ある管弦楽組曲の第3番では、長大な序曲の次に、弦楽合奏だけの夢見るようなこのアリアが奏されます。のちにヴァイオリンのG線のみで演奏する小品に編曲されたため、このタイトルで親しまれるようになりました。
- パストラーレより 第2曲 ハ長調
パストラーレとはのちの時代では牧歌のことですが、バッハの時代のイタリア風パストラーレとはキリスト生誕を祝うための音楽でした。これは、ワイマール時代に書かれた4曲からなるオルガン・パストラーレの第2曲。
- メヌエット 〜管弦楽組曲 第2番より
管弦楽組曲第2番は、独奏フルートの活躍する作品として知られています。このメヌエットは第6曲で、ゆったりとした3拍子のリズムにのって、弦楽合奏とフルートがフランス風の典雅な宮廷舞曲の旋律を歌いあげます。
- サラバンド 〜パルティータ 第4番より
パルティータとは舞曲の組曲のことで、すでに≪イギリス組曲≫と≪フランス組曲≫によってクラヴィーア組曲の頂点を築いたバッハが再びこのジャンルに挑んだ傑作が≪6つのパルティータ≫。これはその第4番の第5曲。
- アリア 〜ゴルトベルク変奏曲より
不眠に悩むカイザーリンク伯爵からの依頼により、お抱えチェンバロ奏者ゴルトベルクに演奏させるために書かれた音楽が≪ゴルトベルク変奏曲≫。このアリアをテーマに30の変奏が奏されたのち再びアリアで曲を閉じます。
- ラルゴ・マ・ノン・タント 〜二つのヴァイオリンのための協奏曲より
バッハのヴァイオリン協奏曲は3曲現存しますが、うち1曲は2挺のヴァイオリン用の協奏曲です。この第2楽章では弦楽合奏が伴奏役に徹し、2挺のソロが仲良し姉妹の語らいにも喩えられる睦まじい対話を交わします。
- コラール「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」
ライプツィヒ時代1731年に書かれた教会カンタータ第140番の中の、第4曲のコラールの旋律をもととしたオルガン曲がこの作品。最初の旋律にもうひとつ別の旋律がかぶさる典型的なポリフォニーの動きが聴きとれます。
- プレリュード 〜無伴奏チェロ組曲 第1番より
ケーテン時代、よき主君と優秀な奏者に恵まれたバッハは数々の傑作器楽曲を生みました。チェロに独奏楽器としての高い地位を与えた6曲の≪無伴奏チェロ組曲≫もそのひとつ。この即興風のプレリュードは第1番の第1曲。
- ラルゴ 〜クラヴィーア協奏曲 第5番より
バッハのクラヴィーア協奏曲は、断片を含めると1台用が8曲現存します。このラルゴは第5番の第2楽章で、弦のピツィカート伴奏にのって、クラヴィーア(ここではピアノ)がカンタービレの旋律をしっとりと歌います。
- インヴェンション 第1番 ハ長調
1723年に完成した2声の≪インヴェンション≫と3声の≪シンフォニア≫は、ともに長男フリーデマンの教育用に書かれたクラヴィーア作品集。このハ長調のインヴェンションは、ジャズなどにも編曲された有名な曲です。
- インヴェンション 第13番 イ短調
第1番と並んでよく知られた曲。4小節の主題を中心として、巧みに転調しながら2つの声部がドラマティックな展開を聴かせます。インヴェンションというのは、ちょっとした発想、思いつき、といったほどの意味でした。
- 小フーガ ト短調
同じト短調の≪幻想曲とフーガ≫が大フーガと呼ばれるのに対して、この単独のフーガは≪小フーガ≫の愛称で親しまれています。ここでバッハは、聴き手の心を強く捕らえる主題をもとに、流麗なフーガを築きあげています。
- シチリアーナ 〜フルート・ソナタ 変ホ長調より
1730年ころに書かれたと推定されるフルート・ソナタ第2番は、バッハの真作かどうかを巡って議論のある作品です。これはその第2楽章で、ト短調、6/8拍子、付点リズムによるもの悲しく美しいシチリア舞曲です。
- サラバンド 〜無伴奏チェロ組曲 第6番より
6曲の無伴奏組曲のうち、第6番だけは音域の広い5弦のチェロのために書かれたものでした。現在では普通のチェロで演奏されるため奏者泣かせの難曲です。この荘重なサラバンドは第3曲で、重音が多用されています。
- メヌエット ト長調&ト短調
2度目の妻アンナ・マグダレーナのために、バッハは立派な音楽帳に丹念な筆使いで心をこめた小品を書きこみました。この有名な1対のメヌエットもそのひとつで、長調、短調という対照性以外にも密接な関連があります。
- アルマンド 〜フランス組曲 第5番より
6曲の≪フランス舞曲≫は、伝統的な4つの舞曲、アルマンド、クーラント、サラバンド、ジーグを中心にいくつかの舞曲を組み合わせた作品集。これはその第5番冒頭の、前奏曲のような雰囲気を持つ優雅な舞曲です。
- コラール「我は汝を呼ぶ、主イエス・キリストよ」
1713年から16年にかけて書かれたオルゲルビュヒライン(オルガン小曲集)には46曲の小品が含まれていますが、これはその中の1曲で、荘重なオルガンの調べが、3声の美しいコラールを敬虔に歌っていきます。
- アンダンテ 〜音楽の捧げもの:トリオ・ソナタより
亡くなる3年前、バッハはフリードリヒ大王からポツダム宮殿に招かれ、王の示した主題に基づいて即興演奏を行ないました。それをまとめたものが≪音楽の捧げもの≫で、これは、第8曲<トリオ・ソナタ>の第3楽章。
- コラール「主よ、人の望みの喜びよ」
ライプツィヒ時代のカンタータ第147番≪心と口と行ないと生きざまもて≫は、聖母を賛美する全10曲の声楽曲です。これは、その中のコラールの旋律を独立させた作品で、ここでは弦楽合奏の調べでお聴きいただきます。
[Disc 2] essential Bach COCQ-83481
- プレリュード 〜無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第3番より
ヴァイオリンという楽器の技術的な機能と精神性を極限まで追求した6曲の≪無伴奏ソナタとパルティータ≫は古今のこのジャンルの最大傑作。これはパルティータ第3番冒頭に置かれた快活で変化にとむプレリュードです。
- ポロネーズ 〜管弦楽組曲 第2番より
弦楽合奏とフルートのみで奏される管弦楽組曲第2番は6曲の舞曲からなります。第5曲はゆったりとした3拍子の2つのポロネーズです。第2ポロネーズでは、第1ポロネーズの主旋律が通奏低音にあらわれます。
- バディネリ 〜管弦楽組曲 第2番より
バディネリとは舞曲の名前ではなく、冗談とか戯れといった意味ですが、舞曲が何曲か続いたあと、バツハはこの跳ね回るような明るい曲を最後に置いて、管弦楽組曲第2番を結びました。彼の遊び心がよくうかがえます。
- ラルゴ 〜ヴァイオリン・ソナタ 第4番より
≪無伴奏ソナタとパルティータ≫とは別に、バッハにはチェンバロ伴奏つきの6曲のヴアイオリン・ソナタがあります。これは第4番の第1楽章で、6/8拍子のリズムにのせて哀愁を帯びた旋律が歌われるシチリアーノです。
- アレグロ 〜フルート・ソナタ ハ長調より
バッハのフルート・ソナタには、無伴奏の1曲のほか、フルートとチェンバロの対等なもの4曲、チェンバロが伴奏に過ぎないもの3曲があります。これは、第3タイプのソナタの第2楽章で、3拍子の軽快な音楽です。
- ブランデンブルク協奏曲 第3番:第1楽章
ケーテン時代に書かれた6曲のブランデンブルク協奏曲は、それぞれ楽器編成に工夫がみられます。第3番は弦と通奏低音のみのシンプルな響きを大切にした曲で、この第1楽章は弾むような輝かしい主題から開始されます。
- ロンド風のガヴォット 〜無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第3番より
6曲の無伴奏ヴァイオリン作品は、ソナタが3曲と舞曲の組曲であるパルティータが3曲です。この軽快で躍動的なガヴォットはパルティータ第3番の第3曲で、単独でもしばしば演奏されるたいへん有名な曲です。
- フォルラーヌ 〜管弦楽組曲 第1番より
管弦楽組曲第1番は、フランス風の荘重な序曲に6曲の舞曲が続きます。このフォルラーヌは第4曲で、クロアティア地方起源の舞曲です。細かく動き回る伴奏にのって、民族情緒を帯びた旋律が生き生きと歌われます。
- イタリア協奏曲:第1楽章
オーケストラと独奏楽器が華やかに競うイタリアの独奏協奏曲の形を2段鍵盤つきチェンバロに移し替えたこの傑作は、バッハの鍵盤楽器作品の中でも特に有名なもの。ソロとトゥッティの対比が1台で見事に示されます。
- ブランデンブルク協奏曲 第2番:第3楽章
これは、トランペット、リコーダー、オーボエ、ヴァイオリンを独奏楽器とする協奏曲です。この第3楽章はアレグロ・アッサイで、4つの独奏楽器がユーモラスな主題に基づいてのびのびと華麗なフーガを築いていきます。
- トッカータ 〜トッカータとフーガ ニ短調より
バッハのオルガン曲のうち、もっとも有名なのがこの作品。ドラマティックな下降音型から開始される即興風の部分がこのトッカータですが、この装飾音から派生した主題によるフーガと密接に入り組んで全曲を進めます。
- カンタータ 第36番「喜びて舞い上がれ」より コラール(合唱)
バッハのカンタータは器楽を伴う独唱と合唱のための多楽章声楽曲です。その中心をなすのは約200曲現存する教会カンタータ。これは、教会暦の待降節第1日のために書かれたカンタータ第36番の中の合唱コラールです。
- アレグロ 〜二つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調より
完全に対等な2挺のヴァイオリンが弦楽合奏を背景に華やかな掛け合いを繰り広げるこの曲は、バッハの作品中でも広く愛好されているもののひとつ。この第3楽章では、2挺のソロがひときわ技巧的に名人芸を聴かせます。
- ガヴォット 〜管弦楽組曲 第3番より
管弦楽組曲第3番は、3本のトランペットとティンパニの使われている祝典的な雰囲気の作品です。この胸の弾むような力強いガヴォットは有名なアリアに続いて奏される第3曲で、2つのガヴォットから構成されています。
- ブランデンブルク協奏曲 第5番:第1楽章
従来通奏低音楽器であったチェンバロがヴァイオリン、フルートとともに独奏楽器の地位を与えられ、しかももっとも活躍するという画期的な作品です。第1楽章では、65小節に及ぶ長大なチェンバロ・カデンツァが聴きもの。
- ヴァイオリン協奏曲 第2番 ホ長調より 第3楽章
バッハ没後、その作品が省みられなかった時代にも、その溌剌とした曲風から例外的に愛好されたのがこの曲でした。この第3楽章はアレグロ・アッサイのロンドで、合奏と独奏が交互に活躍して陽気に曲を進めます。
- カンタータ 第147番より コラール(合唱)「主よ、人の望みの喜びよ
カンタータ第147番の第6、及び第10曲のこのコラールは、旋律のあまりの美しさからオーケストラや器楽に編曲されて広く親しまれています。ここでは、フランクフルト聖歌隊による敬虔な合唱でお聴きいただきます。
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