私は妊娠・出産を機に会社を辞め、フリーランスになりました。当時はあまり働くお母さんに優しい社会ではなかったので、否応なくフリーになった形でした。まだ20代と若かったことから、子育て中は社会から切り離されたかのような孤独感を日々感じていました。子育てをする喜びはあれど、それに勝る「働きたい」という欲求。しかし子どもたちが赤ちゃんの頃は、できることには限りがありました。家で仕事をしていても泣いたら中断、仕事の電話をするのもヒヤヒヤしたものです。これまで保活をしたり、忙しい時は両実家の両親にヘルプをしてもらったりして何とかやってきました。
そして現在、次女ももうすぐ小学生となり、「お世話」という点ではほとんど手がかからなくなりました。長女が小学生になった時は、それまで専業主婦だったお母さんがこぞってパートに出るようになりました。しかし、私は逆に次女の就学を機に仕事を少しセーブしようかと思うようになっています。随分前にあるお母さんを取材した時、「子どもが小学生になったら会社を辞めようと思っている」という話を聞き、その理由として「子どもが学校から帰ってきた時におかえりと言ってあげたいから」とおっしゃっていました。その時は「へえ、そんな考えもあるんだな」というぐらいで聞いていましたが、それが今ごろ心に刺さっています。現状、だいたい家にいるので「おかえり」とは言える立場にありますが、それだけなのです。そのあとは黙々と仕事をしていますから、家事をする時間もなかなかないですし、夕飯もそんなに手をかけられません。子どもに用意しなければいけないものを忘れてしまうことも度々あります。家事に仕事に子育てにとマルチにできるお母さんもいると思うのですが、8年近くやってきてどれもこれもと欲張るのは、私にはちょっと無理ではないかと今さら気づいたような気がします。
家で仕事をしていると、子どもに邪魔されることもしばしば(写真参照)。でも、考えてもみればそのたびに怒るのもなんだかおかしいものです。これまで「バリバリ稼がなきゃ!」と思っていたのですが、最近はもっと普通の日々を大切にしたいと考えるようになりました。先日、成人式の着物姿の若者たちを見て、「あ、あと11年で娘が成人…」と気づいてしまったのです。11年なんてあっという間。この短い間、母親としてやるべきことを全うしなければと思いました。働き方は人それぞれで、できること、できないこと、やれる、やれない、色々あると思うのですが目まぐるしく過ぎる日々をちょっと一呼吸置きたい。そんなことを2017年の始まりで思いました。
本田 香
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