『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー VSサウンドコレクション1』BGM解説
-
4.華麗に、音もなく
(1)M45(取引) (2)M5b(MISSION・UP TEMPO)
世間に隠れて、悪事に手を染める犯罪者集団ギャングラー。そして、そのアジトに忍び込む赤、青、黄のトリコロールの3人の影……。メニュー上、「E.サスペンス」のブロックに分類されるM45は、#1「世間を騒がす快盗さ」のファーストシーン、闇カジノの場面で選曲された1曲。本作で一番最初に使われた劇伴である。「リズム同士が会話しているようなイメージです。今回のように生じゃないと成立しない楽曲ですね」(作曲家の高木洋氏)。また、選曲家の宮葉勝行氏によれば「M41と似たようなジャズテイストのサスペンス曲ですが、中間部のムード歌謡っぽい箇所をコミカル曲として使うこともあります」とのことで、#26でノエルと初美花がオークション会場を訪れる場面では、「お金持ってそうな人ばかり～」と緊張する初美花に件のピアノのフレーズを巧く合わせており、場慣れしたノエルとの対比を音楽面からも面白さを描いている。他に同様の使い方をした例として#20、31などがある。選曲例自体は#4で警察が捜査中、つかさがサメーラちゃんのぬいぐるみを売る露天商を見つける場面、#5のジュレで3人が作戦を立てる場面など、快盗と警察、分け隔てなく選曲されており、全体を通して使用頻度が高い。M5bは「快盗戦隊のテーマ」のバリエーション。M5とはテンポが異なり、リズムセクションやトランペットのミュートの有無などの差異がある。またテンポアップした分、より潜入場面に特化したイメージだが、「快盗なのに忍び込む場面は意外となかったですね」(宮葉氏)とのことで、#11で快盗の3人が東快映画撮影所に潜入する場面、#12で透真が勇気少年を追いかける場面、#26での裏オークション場面、#46で改造ポーダマン(赤)がルールを説明する場面など使用例は限定的に留まっている。
6.異次元からの犯罪者
(1)M20(ギャングラーのテーマ) (2)M21(策略) (3)M42(犯罪の影)
ルパン家より強奪したコレクションを悪用して、人間界を破壊と騒乱に陥れる異次元犯罪者集団ギャングラー。500年間、ボスの座に君臨し続けるドグラニオ・ヤーブンを頂点に、片腕のデストラ・マッジョ、凄腕ドクターのゴーシュ・ル・メドゥらが悪事を企てる。M20は「ギャングラーのテーマ」。劇中では#1を筆頭にアジトの場面で定番的に使われているが、楽曲の個性を際立てるのは、なんといってもシュビドゥバのコーラスだろう。「他の劇伴でもコーラスを使う機会が多くて、声を使うと非常に映えるんですよね。ただ、ルパン側で使うのはどう考えてもアウトでしょうし、パト側で使うのもおかしい。それでギャングラー側で使うことにしました。またコーラスを用いたことで同じジャズの快盗側とも上手く差別化出来たんじゃないかと思います」(高木氏)。宮葉氏は「打ち合わせでは、昔のギャングっぽい雰囲気を出すためにバリトンサックスのソロを使い、コーラスはシンセくらいのつもりでいたのですが、まさか生で来るとは。これには驚きましたね」と語っているが、高木氏によれば「せっかくLowland Jazzを起用したバンド演奏なので、コーラスもシンセより生を使うべきだと思いました」と実現に至った。なお、バリトンサックスのソロは元々宮葉氏からの指定で、「(同じ犯罪者集団の)『未来戦隊タイムレンジャー』のロンダースファミリーのイメージがありました」(宮葉氏)とのことであるが、コーラスを担当したのが、『タイムレンジャー』の主題歌歌手・佐々木久美(※娘の佐々木詩織と共に参加)というのも不思議な偶然である。M21は「ギャングラーのテーマ」のバリエーションで、エレキギターがモチーフを奏でるサスペンスアレンジ曲。選曲例としては、#10で咲也の報告を受けてブレッツ・アレニシカが生きていた事に気付いた警察の場面から、続くギャングラーのアジトで、ブレッツが無事に逃げたと報告を受けるドグラニオの場面にかけて使われている。ここでは「ブレッツの生存」という共通する事実をひとつの楽曲で繋ぎ、警察側ではその存在を暗に匂わせ、ギャングラー側では楽曲が意図した通りの選曲と、同じ曲ながらも味合いが変わるところが面白い。M42は汎用性を持たせたサスペンス曲で、エレキギターをフィーチャーしたロックテイストな1曲。なお、メニュー上のM40～43はいずれもサスペンス曲だがM40はシンセ、M41はジャズ、M43はクラシック寄りとそれぞれ異なる味付けがなされている。劇中では本トラックとのイメージとは異なり、専ら警察の場面での定番曲で、初出は#1の戦力部隊のオフィスでジム・カーターが快盗について説明する場面。以後、#18、19、36、45、46と主にオフィスで事件に絡めた場面で使われている。また#10のつかさと咲也が張り込みをする場面、#38ではオフィスとジュレの双方で、宇宙ステーションからの映像でビクトリーストライカーの存在を確認する場面での選曲例がある。
8.あんたのお宝 いただくぜ!
(1)M3(快盗戦隊参上!) (2)M2(快盗戦隊のテーマ)
アルセーヌ・ルパンが密かに集めた宝物「ルパンコレクション」を取り戻すことを目的に暗躍する3人組、それが快盗戦隊ルパンレンジャーである。本トラックではルパンレンジャーの登場と活躍をイメージした2曲から構成。M3は「快盗戦隊のテーマ」のバリエーションで、モチーフがブラスセクションによってファンファーレ的に奏でられる。劇中では、#1の闇カジノの窓をぶち破って颯爽と姿を現す、快盗3人の初登場シーンで流れた音楽としてもお馴染み。楽曲自体は警察のM13に相当するが、約1分37秒の尺を持つM13に対し、M3は約25秒と短く纏められている。「通常のスーパー戦隊だとテンポの遅いテーマが必要不可欠ですが、快盗はクールに自分の目的のために行動するので、敢えてそういう曲は必要ないかと思い、短い曲として発注しました」(宮葉氏)。一方、高木氏によれば、短い曲ながら作曲は苦労したとのことで、「なかなか考えが纏まらず、3回くらいやろうとして止めては……を繰り返したのですが、レコーディング当日“ちょっとドラムの手数を増やして”とか“ギターもチャカチャカやってください”と言いながら録っていったら、結果オーライで非常にいい感じの楽曲に仕上りました」と述べている。その高木氏の指示に見事な演奏で応えたのは、気鋭のジャズバンド「Lowland Jazz」で、第1回録音では主にルパンレンジャー側の楽曲の演奏を担当している。「ちょっと大人しいなと思っていたところで臨機応変にやってもらえたので、非常に有難かったですね」とは高木氏。選曲例は多々あるが、#41で警察の3人と透真が、現実世界に戻って来る場面の選曲が興味深い。異世界から戻ってくるのは、透真と警察の3人で画的な比重は警察側にあるが、透真が去り際にデストラと戦っていたルパンレッドとアイコンタクトを交わす下りがあり、こちらにフォーカスした選曲だと分かる。あくまで重視されるのはドラマだということだ。M2は「快盗戦隊のテーマ」で、ジャジーな響きとビックバンドならではのスイング感が、まさにルパンレンジャーの華麗な活躍を体現した1曲といえよう。「ジャズバンドを起用した以上、トランペットにしろ、ピアノにしろ、プレイヤーが生き生きと演奏してもらえる箇所は絶対に欲しいところでしたね」(高木氏)。実際の選曲では、M1が実質メインテーマ扱いで使用頻度も高いが、楽曲自体は本来、M1とM2を合わせて発想されており、「快盗戦隊ルパンレンジャーのテーマ」(※主題歌CDや、「VSサウンドコレクション4」のTR25に収録)が本来の形である。「元々M1から伸ばした箇所ですが、後半部分も気に入っていたし、セパレートでも使えるようにしようと思っていたので、メインテーマのM2として生かすことにしました。Bメロから始まり、メインのモチーフに回帰する構成ですが、最初を聴いてもらえれば別曲として認識してもらえると思います」とは高木氏。宮葉氏によれば「宇都宮さんが元のデモを気に入っていて、毎回流れるテーマにしたいということで、M1とM2は同じ曲のバリエーションといった扱いになりました」とのこと。選曲例としては、#1の後半、ルパンレンジャーがガラット・ナーゴーと戦う場面が初出。以後、#15ではシザーシールド＆ブレードブーメランを装備したルパンレッドがトゲーノ・エイブスからコレクションを奪おうとする場面で使われた他、#30では名乗り～バトル、#35では戦いながらの名乗りシーンと少々変則的な選曲例がある。また#27や#48のようにM1と繋げて使われることがある他、#46のようにM1(もしくはM1Full)にM2のコーダだけ付け替えて選曲される場合もある。
9.「ルパンレンジャー、ダイヤルを回せ」
(インストゥルメンタル・ショートサイズ)
ルパンレンジャーのテーマソングのSAXによるインスト。ここに収録したのは2コーラス目をカットしたショートバージョンで、フルサイズは「VSコレクション4」のTR15で聴くことができる。
11.激闘!2大戦隊
(1)M27a(三つ巴大乱闘・ROCK) (2)M27b(三つ巴大乱闘・JAZZ)
コレクションを求めて出没するルパンレンジャー、世界平和を守る任を負うパトレンジャー。時にギャングラーを交え、繰り広げられる激しい戦い――。本トラックに収録した2曲は汎用的なアクション曲で、メニュー打ち合わせの時点では1曲だったが、高木氏のアイディアで警察をイメージしたロックベースのオーケストラによるM27a、快盗をイメージしたジャジーなビッグバンドのM27bの2曲が作られた。「戦闘テーマのメロを考え、途中で主題歌メロによる掛け合いを入れ、再び元のテーマに戻る構成です」(高木氏)。主題歌メロについては、「メニュー打ち合わせの際に宇都宮さんが“せっかく同じ作曲家なので三つ巴の乱闘は主題歌メロを使えばいいんじゃないですか”と決まりました」(宮葉氏)とのこと。また、ヒーロー同士が戦う楽曲とのことで、「単純に正義側のカッコいい曲にはできません。互角くらいのサジ加減が出るよう、気をつけたつもりです」とは高木氏。なお、演奏自体は共にLowland Jazzで、M27aのストリングスはDBで重ねている。発注に基づく、三つ巴バトルでの選曲例としては、M27aは、#2の冒頭、初変身のパトレンジャーが乱入して戦う場面、M27bは#5でルパンレンジャーが途中参戦する場面がある。また快盗、警察のコンセプトは踏まえつつ、汎用的な劇伴としても使われており、M27aは、#36で爆弾の隠し場所を握るペッカー・ツエッペリンにルパンレンジャーが手を出せない中、パトレン2号が攻撃を仕掛ける場面、M27bは#1で快盗の3人がポーダマンと戦う場面や、#9のシザーダイヤルファイター＆ブレードダイヤルファイター、#20のエックストレイン、#28のルパンカイザーマジックと巨大戦での選曲例がある。
13.完成!ルパンカイザー
(1)M8(ルパンカイザー)
グッドストライカーの「快盗ガッタイム!」の掛け声と共にルパンレッド、ブルー、イエローが操る3機のダイヤルファイターとグッドストライカーが合体、巨大ロボ・ルパンカイザーがその雄姿を現す――。M8はルパンカイザーのテーマBGMで、挿入歌「快盗ガッタイム!ルパンカイザー」(※「VSサウンドコレクション4」のTR18にインストを収録)と共通メロを持つが、高木氏によれば、挿入歌を作曲した後で、このM8が作曲されたという。演奏はやはり「Lowland Jazz」で、打ち込みを一切廃した生感たっぷりのゴージャスなサウンドが聴きどころ。以下、高木＆宮葉両氏に語ってもらった。
高木：ピアノ、ベース、ギターも全て生で、昭和の頃の劇伴は当たり前だったと思いますが、全てを生で録音するのは難しい現在では、本当に貴重なレコーディングの機会でした。宮葉：長年やってきましたが、サックスだけで、アルト、テナー、バリトンが揃っているレコーディングは、僕も久々でした。
高木：しかもテナーが2本ですからね。
宮葉：普通、サックスはブラスセクションの一員として同じ動きをするけれど、サックスだけのパートも作れますよね。 高木：サックスだけで4本、さらにトランペット、トロンボーンとブラスも大人数がいて、さらにストリングスは後から被せています。いや、実に豪華な音楽を作ることができました。
劇中では、#2のルパンカイザーの場面が初出で、以後、#6、8、10、11、18、20、26、28、29、34、45などで使われている。本作では個別メカのテーマや、ロボの強化形態の劇伴が細かく設定されていないこともあり、年間を通しての使用例も多い。選曲に際しては、挿入歌と併用することで、ロボの合体、その活躍、或いは「カエマショータイム」での各シチュエーションにも適宜対応している。
16.青春空回り
(1)M48(今日も元気だ!) (2)M6(快盗コミック) (3)M18(捜査失敗)
平時はビストロ「ジュレ」で働いている夜野魁利、宵町透真、早見初美花。一方、国際特別警察機構日本支部でも朝加圭一郎、陽川咲也、明神つかさが平穏な時間を過ごしていた――。トラック16はそんな彼らの日常を描写した音楽集。「心情曲を生で割り当てるのも贅沢ですね」(宮葉氏)というM48は、サックスが奏でるメロディにリズムセクションが快活なイメージを醸し出す。M48～50は共通のモチーフが設定されているが、作曲に際しては「やっぱり最初が肝心ですね。ダメなまま進めてしまうと、結局フリダシに戻ってしまう。そこはすごく気を使うところですね。メロを広げたり、動かしたりと、テンポを変えても大丈夫な“強いメロディ”を最初に作れるかどうかが勝負です」とは高木氏。劇中では#7で食事に誘われた咲也の元に初美花が現れる場面や、#13で初美花とつかさが遊園地で遊ぶ場面などで使われている。また#16の透真の体と入れ替わったマンタ・バヤーシが美女をはべらせ、ショッピングに興じる場面や、#31でのヨシー・ウラザーの妄想シーンのように笑いに振った選曲例もある。M6は「快盗戦隊のテーマ」を用いたコミカル曲。「快盗と警察、両方にコミカル曲がありますが、警察は真面目なのでハネないコミカルで、M6はチャカチャカとハネる感じで差別化を図ってみました」(高木)。M1とは大分趣きが異なり、そのアレンジの妙にも驚かされるが、高木氏によればやはり「強いメロディ」が大事であるという。劇中ではジュレの場面での定番曲で、初出は#1で、初美花の紹介カットから透真とのやりとりにかけて選曲。以後、3、7、9、28、45など、いずれもジュレの場面で使われている。M18は「警察戦隊のテーマ」を用いたコミカル曲で、宮葉氏によれば、アフレコで警察の笑える場面があると、キャストが口ずさむことがあるという、現場でも評判の1曲。また快盗側のコミカル曲M6とは異なり、こちらはハネない楽曲で、宮葉氏の「ハネないでコミカルは難しくないですか？」の問いに、「警察なので四角四面な感じで面白い曲にできないかと思って、フワフワしているクラビの音色を選んだり、そういう積み重ねでコミカルな雰囲気を出してみました」とは高木氏。戦力部隊のオフィスでの定番曲で、初出は#1で、「快盗が潰してくれて良かったじゃないですか」と言葉を漏らした咲也に圭一郎が怒る場面。以後、4、10、19、27、36、37等で使われている。またジュレの場面で使われることもあり、#7で食事を済ませた咲也が初美花に連絡先を渡す場面や、#13で初美花から違うぬいぐるみを渡されたつかさが「これじゃないの」とガッカリする場面の選曲例がある。それ以外のシチュエーションでは、#35で警察の3人がコピー体の人間を元に戻す場面がある。
18.悪意の微笑み
(1)M65(恐怖) (2)M22(犯罪開始) (3)M43(忍び寄る魔の手)
金庫にルパン・コレクションを入れ、その能力を自在に発揮するギャングラー怪人。人間世界に送り込まれた怪人がポーダマンと共に暗躍する。トラック18はギャングラーをイメージした3曲で構成。M65は「G.ブリッジ・ショック」からの1曲で、こうした短い楽曲は打ち込みで作られることが多いが、高木氏の拘りでストリングスは生で録っている。「セクションだけど、ひとりひとり弾いていく音符が違います。半音でグチャッてやるとおどろおどろしい感じになるのですが、現代音楽みたいな書き方をしています」とは高木氏。劇中では、#1でドグラニオが地位の譲渡を宣言する場面が初出。また#2の回想シーンでは、魁利が氷漬けになった兄を見つける場面に使われており、それと紐付けてか、#9で出勤途中の圭一郎がザミーゴとすれ違う場面や、#17のラスト、ザミーゴが氷を噛むラストカットといった選曲が印象深い。他に#6でブンドルト・ペギーがゴーシュに助けを求める場面、#18のドグラニオとゴージュの場面などがある。M22は「ギャングラーのテーマ」のバリエーションで、ジャズ風から一転してリズム体がメインのロックテイストにアレンジされており、「戦うには至らない感じ」とは高木氏。#3で悪事を行うナメーロ・バッチョの前に警察が駆けつける場面、#45でサモーン・シャケキスタンチンが暴れる場面など各話怪人で使われている他、#19では、咲也が梁上審議官の頭からスープをかける場面での選曲例があり、ここでは楽曲がギャングラーの仕業であることを暗に匂わせている。M43は汎用的なサスペンス曲として用意された中のひとつで、ストリングスが同じフレーズを繰り返し、緊張感を盛り上げていく。「弦を入れたことで他のサスペンス曲と上手く差別化が図れたのではないでしょうか」(高木氏)。選曲例としては、#5で快盗の挑戦状を受け取ったブンドルト・ペギーが3人の何者かの足音を察知する場面、#17で初美花が見る夢の中での場面、#41で「この私が人間どもに」とデストラが荒れる場面などの選曲例がある。
20.失いし時
(1)M58(孤独) (2)M7a(失われた、あの日)
快盗の3人を結び付けるもの――それは失われた大事な人を取り戻す事。トラック20は、3人の過去に絡めた心情曲集。宮葉氏が「ルパンレンジャーには過去の悲しい出来事があるので、それを踏まえて暗めの曲を発注しました」と語るM58は、ピアノとストリングスの伴奏に、深く哀惜を携えたメロディを奏でる。メロを担う楽器はイングリッシュホルンで、この曲のためだけに用意してもらったという。「オーボエだと下の音域がガサガサするので、余裕を持たせて一番美味しいところを吹いてもらおうとイングリッシュホルンを使いました」(高木氏)。劇中では#2で、ガラット・ナーゴーを取り逃がした魁利たち3人が、パトレンジャーの存在に危機感を募らせる場面で使われたのが初出。以後、#7で魁利と透真が捕らわれ、初美花が「助けられてばっか……」と落涙する場面、#10でコレクション回収に失敗した透真と初美花に魁利が怒りを露わにする場面、#16でマンタ・バヤーシと入れ替わった透真が、自らの身体よりコレクション回収を優先すべきだと魁利に伝える場面、#34で幻覚の中、大事な人を撃てずに躊躇する透真と初美花の場面、#39で初美花が咲也に悩みを相談する場面など、ウエットな快盗側のドラマシーンの数々で効果を発揮した。また終盤の#47では、咲也と初美花が「まっすぐ、まっすぐ帰ってね」「咲也さんもお気を付けて」と言葉を交わす場面での選曲も忘れ難い。M7aは「快盗戦隊のテーマ」のバリエーションで、アコースティックギターがしっとりと刻むメロディに、ストリングスが加わることで聴く者の心を揺り動かす。「Aメロがサビで構成としてはM2とほぼ同じですね。『シンケンジャー』で同じパターンの曲をよく流してもらっていて、自分でも手応えがあったので、ちょっと踏襲してみました」とは高木氏。劇中では#2でコグレが3人にVSチェンジャ―を渡す回想を経て、ジュレで3人が決意を固める場面が初出。他に#24ではギーウィ・ニューズィー撃退後、植物化した身体から元に戻ったルパンレッドの元にブルーとイエローが駆け寄る場面、#28で早見豪が魁利に娘の初美花との確執について明かす場面、#37でヤドガーに対抗するためキャンプ生活を始めた透真が、魁利と電話でやりとりをする場面、#44のラスト、誤解が解けたノエルと魁利たち4人が、コレクション回収に向けて決意を一つにする場面での選曲例がある。
21.願いは一つ
(1)M61a(思いをつなげて!・ルパンver.)
誰かが倒れても残った者が必ず願いを叶える――快盗の3人が交わした「約束」。トラック21には、「ルパンレンジャー、ダイヤルを回せ」を用いたアレンジ曲のM61aを配置した。楽曲はアクション寄りの熱い心情曲で、これもメニュー上は1曲で発注されていたが、「せっかく主題歌を作曲する機会をいただいたので、劇伴にもできるだけ取り入れようと思いました」(高木氏)とのことで、高木氏が自発的に快盗と警察の2曲を用意した。選曲例としては、#1で透真と初美花を人質に取ったガラット・ナーゴを前にした魁利、その脳裏に「約束」が過る場面が初出。他に#7で初美花がメルグ・アーリタからコレクションを盗り返し、魁利や透真との再会を喜び合う場面、#10で魁利の「氷野郎は俺に任せろ」の発言を信じる初美花と透真の場面、#16でルパンレッドが命がけの作戦で透真とマンタ・バヤーシの体を元に戻した、その手口を明かす場面などがある。なお、メロとコード違いでバックのリズムはM61bと同じなので、前奏を快盗、サビを警察(もしくは逆)に繋いで使うこともできるように作られており、#48では警察→快盗、#49では快盗→警察と編集して使われている。
23.Chase & Arrest
(1)M46(尾行) (2)M15(聞き込み)
トラック23は一転して警察の場面。尾行や聞き込みを通じ、圭一郎、つかさ、咲也の3人が事件の手がかりを得ようと奔走する。M46は、事件の捜査場面には欠かせない尾行をイメージして発注された1曲。警察絡みの楽曲だが演奏は「Lowland Jazz」の担当で「リズム体の演奏を聴いてもらうだけで楽しめると思います。ピアノもすごくいいですね」とは高木氏。「バトル中心で、中盤からはあまり使う機会がありませんでした」(宮葉氏)とのことで使用頻度は高くないが、#4で圭一郎と咲也が、人が消失した事件の捜査を行う場面での選曲例がある。他に#20では、ノエルの初登場シーンでも使われた。M15は「警察戦隊のテーマ」のバリエーションで、打ち込みのドラムにエリック・ミヤシロのトランペットが生える刑事ものならではの1曲。実際の選曲では、#22では快盗と警察、二つの顔を持つノエルに圭一郎たちが戸惑う場面、#30では圭一郎が強盗グループを瞬く間に叩き伏せる場面と、「聞き込み」に拘わらず、選曲されている。
25.総攻撃ギャングラー!
(1)M63(出現!) (2)M23(破壊開始) (3)M31(怪事件発生)
ギャングラー怪人とポーダマンたちが市民を恐怖に陥れる! トラック25はギャングラーの総攻撃をイメージした3曲を選んでみた。M63は「G.ブリッジ・ショック」のブロックから、敵の出現をイメージしたオーケストラ曲。劇中での使用頻度は高く、#3、6、7、12、13、27、44、45と怪人の巨大化シーンで定番的に選曲。それ以外にも#10ではザミーゴの前にピンチに陥るレッドの場面、#33ではエンビィ・チルダーの登場場面、#41では圭一郎と咲也の前にデストラが出現する場面、#43では冒頭の前話を振り返り、#47ではギャングラー出現の一報を受けた圭一郎たちが出動する場面など、幅広く使われている。M23は「ギャングラーのテーマ」のバリエーションで、「M23とM24が定番の大暴れで、それぞれミドルテンポとアップテンポで発注しています」とは宮葉氏。作曲に関しては「重いリズムを加えて、バラララ～♪と口ずさんでいたら出来上がりました。テーマの最初の1～2小節くらいがちゃんとしていれば、いかようにもアレンジできますね」(高木氏)と自信を持って答える1曲である。初出は#1のガラット・ナーゴが隠し腕で魁利を攻撃する場面。以後は#4でつかさがラブルム・ジョウズの前で苦戦する場面、#7でメルグ・アリータがルパンブルー、レッドを相次いで飲み込む場面、#34でコレクションの力を利用してケルベーロ・ガンガンがパトレンジャーを窮地に追い込む場面など、多くの場面で使われている。続くM31も敵側優勢のアクション曲で、やはり使用頻度は高い。「弦がメロ、エレキギターが裏メロをやり、テンポも速く『シンケン』の頃にはこうしたリズムはなかったですね。時代とともに作風は変わりますし、どんどん音数が増えています」とは高木氏。「大ピンチ系の曲ではないのでギャングラー側の優勢にもヒーローの活躍にも使えます」と利便性の高い楽曲で、#1で敵アジトに潜入した快盗3人がガラット・ナーゴに見つかる場面を皮切りに、#6でブンドルト・ペギーが快盗をおびき寄せるために暴れる場面、#7で咲也と初美花が食事中のレストランにメルグ・アリータが現れる場面、#36でペッカー・ツエッペリンの前で快盗の3人が変身する場面、#37でヤドガー・ゴーホムが暴れる場面、#45で咲也が警察チェンジして、サモーン・シャケキスタンチンに立ち向かっていく場面など、年間を通して選曲例は多い。
27.実力を行使する!
(1)M13(警察戦隊出撃) (2)M11(警察チェンジ!)
VSチェンジャーを通じ、ギャングラーや快盗と互角に戦う力を手に入れた戦力部隊の3人。VSチェンジャーを掲げ、警察戦隊パトレンジャーに変身する! M13は「警察戦隊のテーマ」のバリエーションで、快盗ではTR3の1曲目、M3(快盗戦隊参上!)に相当する。「M12の遅いバージョンで、圭一郎のキャラにあわせて努力、根性で突き進むイメージで発注しました」(宮葉氏)、「宮葉さんのイメージが明快だったこともあり、特に苦労することはありませんでした」(高木氏)と両氏は語る。劇中では#1ラスト、パトレンジャーの初名乗りで選曲されたのが初出で、#4では警察チェンジ～名乗り、#15でパトレン1号がトリガーマシンドリルで地底探査へ向かう場面、#26では圭一郎たち3人が日本警察と協力して偽オークションの関係者を逮捕する場面などの選曲例がある。劇中ではフル尺でかかる機会がなかなかなく、「中盤が熱くて好きなんですけど、美味しいところに行く前に切れてしまうこともありますよね」(高木氏)とのことだが、#15でケガを押して咲也とつかさが出撃準備する場面では、比較的長く選曲されている。M11は、劇中で定番的に使われている警察チェンジ用の楽曲。「警察戦隊のテーマ」のバリエーションで、宮葉氏が「ルパンレンジャーとの対比でできるだけデジタルの固い感じで差別化を図ってもらいました」と語っているように、ブラスやストリングスなど、いわゆる上物で生感は押さえつつも、リズムセクションでデジタルの味付けが施されている。また前奏が長いが、これはM2と同様、変身アイテムのSEを考慮したため。演奏は一流のスタジオミュージシャンによるもので、エリック・ミヤシロ率いるブラスセクションのソリッドな演奏など、快盗側の演奏を手掛ける「Lowland Jazz」と聴き比べると、そのニュアンスもかなり異なることが分かると思う。「そういう意味でも、警察側は従来の作品に近いオーソドックスなスーパー戦隊の音楽ということになりますね」とは高木氏。劇中では#2が初選曲で、#3、5、6、09、15、27、33、45の各回で使われている。また#4のパトカイザーバイカーのように巨大戦で使われた例もある。
28.Chase You Up!パトレンジャー
(インストゥルメンタル・ショートサイズ)
トラック28はパトレンジャーの活躍をイメージして、テーマソングのエレキギターによるインストを収録。ここに収録したのは2コーラス目をカットしたショートバージョンで、フルサイズは「VSコレクション3」のTR1で聴くことができる。
30.Giant Criminal
(1)M29(巨大ギャング大暴れ) (2)M30(大災害)
ゴーシュが持つコレクションの力によって巨大化したギャングラー怪人。トラック30の2曲は重厚な響きを伴うオーケストラ曲で、街を蹂躙し、破壊する巨大な怪人を表している。M29は、M27a＆bのバリエーション曲で、「1モチーフをひたすら繰り返しているだけですが、やはり最初にしっかりしたモチーフを作ったからこそ成立する楽曲です」とは高木氏。M27が等身大、M28とM29で巨大戦での使用を想定した別曲で、M29は遅いテンポ設定で、より重厚なイメージを持つ。発注意図通り、巨大化関連の定番曲で、#38のように巨大化からバトルにかけて通しで使われることもあれば、イントロ、もしくは後半部分と別々に使われることもある。#1、16、20、26、31、32、36ではイントロを巨大化シーン、#22、35、40ではイントロを抜いた後半を巨大化シーンにそれぞれ選曲。また#4ではラブルム・ジョウズーとパトカイザーの巨大戦、#25や28では巨大化からVSビークルを呼ぶまでのヒーロー側の描写に付けられているが、画には映らずとも巨大化した怪人が暴れている前提での選曲である。他に等身大では#14でトリガーマシンドリル内のパトレン1号が毒針で負傷する場面での選曲例がある。続くM30もオーケストラ主体による敵側の優勢曲。編成も厚く音数も多い、なかなかカロリーの高い1曲だが、「テンポ、リズムを配置して、このバランスならいけるかな」とは高木氏。実際の選曲では「テンポが早く、巨大戦でも等身大でも使えますね」(宮葉氏)とのことで、#18、30、34、37では巨大化関連で選曲された他、#14ではドグラニオの能力で咲也とつかさが変身解除させられ、窮地に追い込まれる場面、#32ではパトレン1号とルパンエックスの決闘シーンで選曲されている。
32.正義をつかみ取れ!
(1)M19(パトカイザー)
巨大化したギャングラー怪人の前に巨大ロボ・パトカイザーが降臨。持前のスピードと、右腕の巨大ロッド、左腕のトリガーキャノンを駆使して戦い、巨大化怪人を撃退する。M19はパトカイザーのテーマBGMで、挿入歌「警察ガッタイム!パトカイザー」(※「VSサウンドコレクション4」のTR19にインストを収録)と共通メロを持つ。ディストーションギターなどロックテイストを入れつつも、基本はオーケストラ編成で、快盗側にはないホルンが勇壮なイメージを喚起する。「快盗側のブラスはフォールさせているのですが、警察はビシッとした組織なので、フォールさせず、止めています」(高木氏)と、ロボ曲に関しても快盗側との差別化が図られている。初出は#3で必殺技「パトカイザー弾丸ストライク」を決める場面。以後、#4、12、17、21、24、29、36の各話で使われている。
35.明日への誓い
(1)M66(喜び) (2)M49(温もり) (3)M54(明日に向かって)
ギャングラーの悪事はひとまず封じられた。コレクションを回収し終えて日常生活に戻る快盗の3人と、平和のために昼夜問わず活動を続ける戦力部隊の3人。トラック35はエピローグとして3曲を並べてみた。M66は勝利のファンファーレで、快盗と警察と両方で使えるよう特定のモチーフは設定されていない。「宮葉さんからのオーダーで、次のシーンに繋げられるよう、コーダはジャンで終わらせないよう作曲しています」(高木氏)。#15、25、26では巨大戦後の決めで選曲された他、本編では#36で咲也の狙撃が爆弾に命中する場面がある。また変わった選曲例としては#23で、ライモン・ガオルファング、ギーウィ・ニューズィーの2人が透真の作った料理に感激する場面がある。M49は、M48から続く日常曲のバリエーションで、ゆったりしたテンポとサックスやフルートで奏でられるメロディに心癒される。「こういう曲は生のほうが盛り上がるので、打ち込みはひとつも入れていません。M48を作曲した際に、スローにしたM49や、ドタバタのM50でも成立するかどうか、全体のプランニングもしていました」とは高木氏。劇中ではジュレで使われることが多く、宮葉氏によれば「各話の冒頭かラストでよく使っています」とのことで、#17、22では冒頭のジュレの場面、#2、3、8、13、37では巨大戦後のジュレの場面で使われた他、#18では巨大戦後、快盗3人の元を飛び去って行くグッドストライカーの場面での選曲例もある。劇中では快盗側に選曲されるケースが多いが、#29、33では巨大戦後の警察側の描写で使われた他、#14では警察の3人が幼稚園を訪れる場面での選曲例がある。M54はスーパー戦隊では定番のマーチで、どちらかといえば警察イメージだが、M52、M53と共通する日常曲のモチーフに基づく楽曲。「例年だと主題歌アレンジに入れるところですが、今年は主題歌でマーチは作れないので、“F.心情・その他”のブロックに入れました」(宮葉氏)、「日常曲でマーチということで“どこで使うのか？”と割と悩みました(笑)。そういう意図が分かるとまた面白いですね」(高木氏)。また、宮葉氏によれば「今回は“ロボの決めでめでたし、団結!みたいなシーンはありません”と聞いていたのですが、一応押さえの意味もあって発注しました」とのことであるが、#1の国際特別警察機構の場面を皮切りに、#12では勇気が陸上の大会で1位になる場面、#20では巨大戦後、エックストレインが去って行く場面、#22では、ノエルと初美花が裏オークション参加者の思い出し作業を行う場面など多岐に渡って使われており、音楽メニューの一部として見事その役割を果たしている。「いや、ちゃんと使ってもらえたので、作曲しておいて良かったです」とは高木氏。
『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー VSサウンドコレクション2』BGM解説
-
1.「ルパンレンジャーVSパトレンジャー」(インストルメンタルTYPE-SG)
「サウンドコレクション2」の頭を飾るのは、OP主題歌「ルパンレンジャーVSパトレンジャー」のインストルメンタル。ここでは男声パートをサックス、女声パートをエレキギターでMIXしたバージョンをフルコーラス収録。劇中では、#13でルパンイエローとパトレン3号が協力してナイーヨ・カパジャーと戦う場面で選曲。作品の性質上、共闘する場面が限られるため、主題歌自体が選曲される機会も少なく、歌入りが使われたのも3回のみ、インストも#13が唯一の選曲例となっている。但し、#34では短く編集され、次回予告編音楽として使われた。
2.仮面舞踏会への招待状
(1)M68(ショックB) (2)M44(不思議) (3)M40(不安) (4)M10(コグレ・ミステリー) (5)M102b(Xサスペンス・リズム抜き)
アルセーヌ・ルパン家が集めた数々の秘宝、ルパン家に仕えるコグレやノエルのどこか謎めいた雰囲気。トラック2は神秘的なサスペンス音楽を5曲集めてみた。シンセメインのM68は「G.ブリッジ・ショック」からのショートピース。「高い音でヒンとやるのは普通ならストリングスでやるところですが、同じような曲を『シンケン』でやっていたので、今回はシンセにしました」とは高木氏。選曲例としては、#7で目の前でルパンレッドとブルーが消失した際に、詩穂の事件がフラッシュバックし、茫然自失となるルパンイエローの場面、#16でルパンレンジャーがマンタ・バヤーシーと対峙する場面がある。「シンセの雰囲気もので、メロディが特にないものをお願いしました」(宮葉氏)という、M44は汎用的なサスペンス曲で、高木氏によればレコーディングの二日くらい前、ギリギリで作った曲だという。とはいえ、こうした地味な楽曲にも高木氏は確たる信念を持ち、「基本的に音色重視の曲ではあるんですけど、やっぱり大事なのはメロディなんですよね。フワッと和音を鳴らして終わるのではなく、ちゃんと旋律を作り、それに合う音色を選んでいます。劇伴としては、やはり旋律があるほうがいいと思いますね」と力説する。また、「意外とたくさん使ってもらっていますね」(高木氏)と語っているように使用頻度も高く、聞き覚えのある人も少なくないだろう。使いやすい楽曲であることはもちろんだが、高木氏の拘りに依るところも大きい。選曲例としては、#1の異次元にあるデストラの屋敷の場面を皮切りに、#8で敵のアジトで拘束されているジム・カーターの場面、#14で戦闘中のパトレンジャーが謎の声に翻弄される場面、#25ではライモンとザミーゴの場面、#34では魁利が「ゴーシュの双眼鏡、ノエルは知っているみたいだけど」の発言にコグレが眉をひそめる場面、#41でギャングラーの世界に放り込まれたつかさと透真の場面、#43では、戦力部隊のオフィスでPCから情報を得る東雲悟の場面などがある。M40は、シンセが不安を煽る汎用的なサスペンス曲。高木氏によれば「警察が捜査しているイメージ」とのことであるが、劇中では、#3で透真の焦りから快盗の3人の関係性に亀裂が生じる場面を皮切りに、#04でラブルムのアジトにワープされたつかさの場面、#20のデストラの屋敷での場面、#30で圭一郎の前に強盗グループが姿を現す場面、#43で圭一郎と東雲悟が会話する場面など、快盗、警察、ギャングラーを問わず、数々の場面で使われており、こうした「幅」も溜録り選曲方式の面白いところである。M44と同様、サントラとしては地味だが、音楽メニューとしては欠かせない楽曲であり、「こうした曲は、何もないところからいきなり作れと言われても難しいので、感情が入る材料が何か欲しい。そうしたときに有難いのが台本の存在です。イメージが膨らむと音になるんです。それこそ、映画音楽を作曲するようなノリで“このシーンにこの曲を”と思い浮かべて作曲し、それをメニュー表のMナンバーに落とし込んできました」と、作曲の秘訣を述べている。余談ながら、東映特撮では『妖術武芸帳』(69年)の音楽で知られる冬木透もこうした手法を採っており、時代も場所も異なれど、一流の導き出す答えはひとつということだろうか。M10は2曲ある「コグレのテーマ」の内、サスペンスに振ったもので、チェンバロの音色が厳かでミステリアスなムードを醸し出す。「発注の時点ではコグレさんがどうなるか決まってなかったので、もし悪くなっても使えるように作曲しました」と高木氏。「コグレが昔のルパン家について語る場面ではだいたいこの曲を使っています」(宮葉氏)とのことで、#1がコグレと面会中の魁利が、ルパンコレクションについて語る場面が初出で、#18ではコグレがアルセーヌ・ルパンとグッドストライカーの過去を話す場面、#21のノエルとコグレの場面、#42でコレクションを奪われたことで、コグレがノエルを叱責する場面、#44でノエルが、快盗の3人に自らの正体を明かす場面での選曲例がある。M102bは追加録音で用意された「エックスのテーマ」のバリエーションで、「サビ頭をマイナーにして持ってきました」(高木氏)と、敵か味方か分からないノエルの場面を想定した楽曲にアレンジ。劇中では、#44で全てを失って絶望するノエルの場面が唯一の選曲例だが、それまでにM101やM103や挿入歌「M・A・X POWER」を通じて「エックスのテーマ」が浸透していたこともあり、まさにこれ以外の曲はあり得ないベストな選曲であった。
3.Three Shadows
(1)M41(疑惑) (2)M5(MISSION) (3)M9(コグレ) (4)M5b-2(MISSION・UP TEMPO、4リズムのみ)
コグレからの情報を元にルパンコレクションを求めて暗躍する快盗の3人。トラック3は行動開始や潜入など、ややリズムのあるサスペンス曲集。演奏は全て、Lowland Jazzによるもので、やはり生感が聴きどころとなっている。M41は、バンド演奏で他のサスペンス曲との差別化が図られている1曲。「ベタといえばベタですが、せっかくドラマーを呼んでいるわけですし、今は逆に目新しいですね」(高木氏)。使用頻度も高く、#08でデートに誘う咲也を透真と魁利が怪しむ場面、#09では、ルパンコレクションの情報を得た快盗が、エマ・ゴルディーニの元へ向かう場面、#34のルパンマグナムの隠し場所へ潜入する場面、#40では、魁利を尾行する初美花と透真の場面で使われた他、#18、23ではジュレの場面での選曲例がある。また、快盗の場面で使われることが多い本楽曲だが、#36では戦力部隊のオフィスで「僕に何かできることがあれば……」と言う咲也の場面で選曲された例もある。M5は「サウンドコレクション1」のTR4に収録したM5のテンポ違いだが、こちらのほうが使用頻度が高い。発注イメージに基づく選曲例としては、#1で快盗衣装に着替えた3人が暮浜埠頭の工場跡へ潜入する場面、#33で子どもになった透真がVSチェンジャーを取り戻そうとオフィスに潜入する場面、#40で魁利を尾行するノエル、魁利、初美花の場面がある。その他、#14、15、20、21、45ではジュレの場面でも使われている。M9は「コグレのテーマ」でどこか怪しくもあり、メロを奏でるクラリネットがユーモラスな一面を担う。「怪しい感じがありつつも、どの程度お茶らけた感じにするのかは迷いました。快盗側は生バンドメインでその音楽設計に則り、何がメロを取れるか考え、クラリネットにしてみました」とは高木氏。「コグレ役が温水洋一さんが聞いた時点で、絶対コミカルな要素が必要だと思ってM9を発注しました。ただ、どの程度コミカルで、どの程度シリアスにするかまではその時点では見えていなかったですね」(宮葉氏)とのことだが、劇中見事なハマり具合だったことは言うまでもない。初出は#8で、魁利に変装していた魁コグレを元の姿に戻る場面。他には#26でコグレが、国際警察となれ合わないよう忠告する場面、#33でVSチェンジャーを持ち帰ったコグレが変装を解く場面、#35で3人に分裂したコグレのうち、普通のコグレが6時間以内に戻さないと3人とも命が潰えてしまうと話す場面での選曲例がある。M5b-2は、TDによるM5のバージョン違いで4リズムのみを取り出したもの。打ち込みを一切廃した生バンドだけの編成で「譜面に“オカズ“と書いておけば、ミュージシャンが自由に遊んでくれます。ピアノも実にいいですね」(高木氏)とのことで、こうした楽曲も実に味わいがある。「これを全て打ち込みでやったら大変でしたね。譜面を書いて終われるので、時間の節約にも繋がりました」(高木氏)。
4.Lupintic Showtime!
(1)M62(襲撃!) (2)M34(リズムアクション) (3)M32(無差別攻撃) (4)M35(リズムアクションMAX) (5)M1Full-3(快盗チェンジ!Long、4リズムのみ)
お宝を持ったギャングラーと快盗のUP TEMPOな争奪戦。快盗の3人は快盗チェンジし、さらなる戦いが繰り広げられる――。M62は、襲撃のブリッジ音楽で「Lowland Jazzのサックス奏者に“ブロウして悪い感じに”と演奏してもらいました」と高木氏。#19で圭一郎とつかさの乗ったパトカーがスダル・ウルキューに真っ二つにされる場面、#28でリューグ・タマテバッコが人間を老化させる場面、#35でトラックに撥ねられそうになった少年とコグレを初美花と透真が助ける場面、#41でレッド、イエロー、エックスがデストラと戦う場面での選曲例がある。#2のルパンレッドの分身で使われたのが印象深いM34は、汎用的なアクション曲で、「曲調はロックですが、演奏はジャズの人たちなので、ロッカーが演奏するロックとはまた違っていて、なかなか楽しい1曲になったと思います」と高木氏。「追い立てられるような、慌てる感じがあるし、なんとなくコード感がメジャーになるので、コミカルなアクションシーンによく使っています」(宮葉氏)。#1以外の選曲例では、#34でパトと怪人の乱闘から3人になったコグレの場面、#45でチキンにおびき寄せられ、サモーン・シャケキスタンチンが出現する場面などの選曲例がある。M32は、スーパー戦隊の劇伴ではお馴染みのギタリスト・今泉洋によるライトハンド奏法が際立つ1曲。「自分の曲ではあまりやる機会がないのですが、バリエーションとしてはあってもいいかなとやってもらいました」(高木氏)。DBによりエレキギターが加えられるのもスーパー戦隊の劇伴のひとつの特徴で、曲数も多く毎回のレコーディングは深夜にまで及ぶのが通例だが、「今泉さんの実力なら全く問題がありません」(高木氏)と、M32でも見事な演奏を聴くことができる。選曲例としては、#33でエンビィ・チルダとルパンエックスが戦う場面、#35で分身させられた悪い人たちがパトレンジャーに襲い掛かる場面、#47ではゴーシュに苦戦するパトレン(～ルパン)エックスの場面で使われている。M35は、M34をより激しくしたバリエーションで、「M34は生オンリー、M35はあまり空気を感じさせないデジタルなサウンドと対比になっています」とは高木氏。また宮葉氏によれば「ルパンレンジャー、パトレンジャーの追いかけがあり、さらに怪人が入った際に、どのキャラにも感情移入させない曲が欲しいと思って発注しました。こちらから求めたのはとにかく慌てふためいているイメージですね」とのことで、#12のジェンコ・コパミーノ戦や、#13ではナイーヨ・カパジョに翻弄されるチェーンで繋がれたパトレン3号＆ルパンイエローといった乱闘シーンで使われている。また面白い選曲例としては、#35の暴走族と化した悪いコグレさんの場面がある。M1Full-3は、「快盗チェンジ」M1のTDによるバージョン違いでリズムのみを取り出したもの。初出は#1の闇カジノでのルパンレンジャーの初登場シーンで、コーダのピアノが洒落た雰囲気を醸し出している。他に#4の変身後のルパンレンジャーがいきなり登場する場面(※途中からM1に編集)、#8では、怪人に扮したジム・カーターの前に現れるルパンレンジャーの場面などの選曲例がある。また#14では、快盗の3人が「あんたらのお宝いただくぜ」とオドード・マキシモフ＆トゲーノ・エイブスに立ち向かっていく場面でも使われているが、ここでは変身してないので軽めのM1Full-3が意図的に選曲されている。
5.「ルパンレンジャー、ダイヤルを回せ」(インストルメンタル1)
前トラック最後のM1Full-3で変身を描き、トラック5では、ルパンレンジャーの活躍をイメージして、トランペットメロによるテーマソングのインストを収録。選曲例としては、#7での変身からメルグ・アリータを撃退するまで、#28ではルパンレッドがマジックアローでリューグ・タマテバッコを翻弄し、コレクション回収を経て撃退するまでの各場面がある。
6.暗黒街の流儀
(1)M20b(ギャングラーのテーマ・コーラス抜き) (2)M21b(策略・メロ音色違い) (3)M118(黒幕)
逆転を狙うギャングラーのイメージ音楽集。M20bは「ギャングラーのテーマ」M20のバージョン違いでコーラスを抜いたもの。選曲例は、いずれもドグラニオの屋敷の場面で、#4、11、21などがある。特に#21ではドグラニオを挟んで、デストラとゴーシュがパトレンエックスかルパンエックスかで議論する場面で流れているが、ここでは会話のウェイトが多く、コーラスが入るとセリフの邪魔となるため、M20bが選曲されている。近年、こうした配慮に欠けた作品が散見されるが、適切な選曲は注目されるべきである。M21bは、「ギャングラーのテーマ」のバリエーションで、M21とは音色が異なるが、「レコーディングの際にメロの音色がセリフやSEと噛み合うかなと思って、ディストーションをかけないバージョンを作ってもらいました」とは宮葉氏。劇中では、#31のゴーシュとデストラが会話する場面から、ポーダマンに追われるヨシー・ウラザーがパトレンジャーに自首を申し出る場面にかけて使われている。M118は、追加録音で用意された「ギャングラーのテーマ」のバリエーション。「一回目より打ち込みをフィーチャーしています」(高木氏)とのことで、モチーフを生かしつつも、ジャジーな雰囲気は鳴りを潜め、話の展開を想定した重厚な楽曲へと作り変えられている。劇中では#43でゴーシュに「エックスは人間じゃないわ」と告げられた、快盗3人が動揺する場面での選曲が印象深い。
7.氷の嘲笑
(1)M25b(Mr.FROZEN・編成薄め) (2)M119(ザミーゴの本気)
快盗3人の大切な人を消失させ、ルパンコレクションの情報をギャングラーに与える謎の怪人ザミーゴ・デルマ。果たしてその目的とは……。M25bは、「ザミーゴのテーマ」M25のメロを取り出したTDによるバージョン違い。「初期の頃はキャラを分からせたくなかったので、地味なM25bを意図的に選曲していました」(宮葉氏)とのことで#6、10の選曲例がある。なお、楽曲自体については「サウンドコレクション3」のTR14を参照して欲しい。M119は追加録音分からザミーゴのテーマバリエーションで、「M25はオケイメージだったので、重いビートで口笛のメロディをディストーションギターで演奏してもらいました」とは宮葉氏。またアクション曲として用意されたものだが、引き続き宮葉氏によると「性格的にも戦っても、笑ったり、余裕がある感じのキャラなのでミドルテンポで書いてもらいました」といった狙いで発注がなされた。劇中では、#50のルパンレッドとザミーゴの対決シーンが唯一の選曲だが、実に贅沢な使い方といえよう。
8.X～交差する閃光～
(1)M102(Xサスペンス) (2)M101(エックス参上!) (3)M104(エックスエンペラー)
国際特別警察フランス本部からやってきた男――その名は高尾ノエル。ルパンエックスとパトレンエックスの二つの顔を持ち、ある時は快盗としてルパンコレクションを奪い、またあるときは警察官としてギャングラーと戦う。トラック8は、全て共通のモチーフを持つルパン(パトレン)エックスのテーマ音楽集。まず、1曲目のM102はサビメロの繰り返しによるサスペンスアレンジ曲で、シンセの無機質な感じが、謎を秘めたノエルのキャラクターをイメージ。劇中では#20のアバン、エックストレインが国際特別警察フランス本部から、日本へ出発する場面で使われている。M101は「エックスのテーマ」で、サックスを加えたオーケストラがモチーフを勇壮に奏でる。「追加録音はバンド編成ではないので、サックスは平原まことさんです。またリズムセクションは全て打ち込みですが、シンセのループやアルペジオ、SE，PADと寂しくならないよう、密度の濃い音を心がけました」(高木氏)。劇中では、#21の冒頭、ルパンエックスがザルダン・ホウーと戦う場面が初出で、「初登場回は立ち回りが2回あり、まだ正体が分からない登場時はマイナーコードの劇伴を使い、ラス立ちは挿入歌にしました」とは宮葉氏。他に#38で、スーパールパンエックスが登場するシーンでも選曲されている。M104は、同一モチーフによるエックスエンペラーのテーマ曲。「ホルンやティンパニを入れ、コードはガチャガチャと動かず、ベースを同じ音にすることで重さを表現してみました。挿入歌とはコード感が大分違いますね」とは高木氏。劇中では#20でエックストレインシルバーの召喚、#21ではエックストレンイゴールドの召喚、#22ではエックスエンペラースラッシュの合体、#23ではエックスエンペラーガンナーの合体といった各場面で選曲されている。
9.「M・A・X POWER」(インストルメンタル)
トラック9は、Project.Rの谷本貴義が歌う挿入歌のインストで、エレキギターがメロを演奏している。劇伴のM101～104と共通モチーフを持つが、劇伴がマイナーコードなのに対して、「警察になったり、快盗になったりするエックスの設定を踏まえ、メジャーとマイナーを行き来させることで、両方の顔を持つキャラクターを表現してみました」とは高木氏。劇中、#23では歌入りと編集して使用されており、四機のビークルの登場～エックスエンペラースラッシュの合体、そしてバトル前半をインストに、ウシバロック・ザ・ブロウが反撃する場面から歌入りに繋げている。他に#29で魁利たちがノエルの写真を見て、エックスの活躍を振り返る場面、#46でスーパールパンエックスが改造ポーダマン(赤)を撃退する場面での選曲例がある。
10.Mission Failed
(1)M9b(コグレ・SLOW TEMPO) (2)M18b(捜査失敗・木管抜き) (3)M103(Xコミック) (4)M26(悪党失格)
トラック10は快盗、警察、X、ギャングラー、それぞれのコミックテーマ音楽集。M9bは「A.快盗戦隊側音楽」に分類される「コグレのテーマ」M9のテンポ違いで、「レコーディング当日、M9を聴いて、ちょっとカッコいい感じがしたので、もっとコミックに寄せようと、その場で指示してスローテンポで演奏してもらいました」とは宮葉氏。高木氏によれば「現在主流となっている、打ち込みを入れて作家が持ってくるスタイルだと、その場でテンポを変えられないのですが、今回は全て生楽器だからこそ出来たことです。自分の仕事でも久々でしたね」とのこと。また単なるテンポ違いではなく、ドラムはスティックではなくブラシでの摩擦音でリズムが表現されている。#26でノエルが裏オークションに参加するため、コグレから小切手帳を受け取る場面での選曲例がある。M18bはM18のTDによるバージョン違いで、木管が外されているが、「警察側にはロボットのジム・カーターがいるので、柔らかい音を外して、メカっぽくしたものが合うかなと思いました」とは宮葉氏。#4でジムが暴れる場面、#31でコスプレしたジムとヒルトップがヨシー・ウラザーを尋問しようとする場面での選曲例がある。他に#13のチケット売り場で初美花とつかさがバッタリ鉢合わせする場面では汎用的なコミカル曲として用いられている。M103は「エックスのテーマ」のコミカルアレンジ曲で、メニュー表には「フランスチックなサウンド」と書かれているが、メロを奏でる音色としてアコーディオンが選ばれている。「打ち合わせの席上、メロをアコーディオンにするとフランス帰りっぽい雰囲気が出るんじゃないかと決まりました」とは宮葉氏。主な選曲例としては、#22のノエル絡みで3回使われており、#20、21を経てノエルと快盗、警察、それぞれの距離感を近付けている。他に#45では、パトレンエックスがエックストレインゴールドでフランスを往復し、チキンを持ち帰る場面がある。M26は、「C.ギャングラー側音楽」のカテゴリーに属する悪側のコミカル曲で、「せっかく悪側でコーラスを呼んだわけですし、コミカルで使っても面白いかなと入れてみました」とは高木氏。実際の選曲では「ヒーローでも悪でもどちら側でも使っています」(宮葉氏)とのことで、#11では女性になった圭一郎と咲也、男性になったつかさが撮影を行う場面、#21でゴーシュが金庫を開けてコレクションを入れ替える場面、#45でチキンストアー鳥金がサモーン・シャケキスタンチンに襲われる場面などの選曲例がある。
11.ビストロ 開店休業
(1)M131(シュール・コミック) (2)M50(失態) (3)M26b(悪党失格・コーラス抜き) (4)M51(CAT＆MOUSE)
トラック10に続いてのコミック音楽集だが、より汎用的な4曲を選んでみた。1曲目は追加録音分から「第1回録音はコミカル曲も豪華な編成だったので、もうちょっと安っぽいのを(笑)」(宮葉氏)ということで用意されたM131。高木氏は「もうちょっと抜ける曲もないとダメですよね(笑)。しかしこれが意外と難しいんです。全然コミカルにならなくて“あ～笑えねぇ!”と書き直したり、音を抜き差ししたり……。どうしてもカッコいい方向性になってしまい、“いやいや、そうじゃなくて!”なんて自分でツッコミを入れつつ、作曲しました」と語る。#29では、記憶喪失になった圭一郎について、ノエルの問いかけとは裏腹に、魁利たち3人が「(元に戻らなくても)困らない」と全否定する場面、#45で、魁利と咲也が閉店したローストチキンのお店を訪れる場面、#46でモノマネが受けなかった魁利の場面などの選曲例がある。また#27ではサブテーマ的な扱いがなされており、冒頭、ピョードル人間体・小紫庄右衛門が道行く人を強引に勧誘する場面、透真が気付いたら道場に入門させられている場面、咲也が庄右衛門からそれと知らずに爆弾の入った重箱を渡される場面と、計三か所で選曲されている。M51は、M48から4曲続く共通モチーフの1曲だが、もっともテンションが高い。「これはギターだけ生で、他は打ち込みですが、テンポが早いので生でやったら成立しなかったでしょうね」とは高木氏。劇中では#10で撮影所に潜入した快盗3人たちが圭一郎たちに見つかる場面で選曲された他、#27では、透真の咲也へのイライラPOWERがMAXに達する場面、魁利と初美花が透真のエアロビをまねてからかう場面と2回選曲されている。
12.VS Other Tracks
(1)M20d(ギャングラーのテーマ・コーラスのみ) (2)M1Full-2(快盗チェンジ!・Long、ドラムのみ)
トラック12は、TD時に作成した別バージョンの内、使用頻度の高い2曲を特別にまとめてみた。M20dは「ギャングラーのテーマ」M20から、佐々木久美母子によるコーラスを抜き出した別バージョン。巨大シーンの定番曲で、「まさか宮葉さんがコーラスだけ抜き出して巨大化の場面で使うなんて」と高木氏も驚く絶妙な選曲であったが、「レコーディング現場で聴いたところ、ゴーシュ役の蜂須賀祐一さんの演技に合うかなと思い、別バージョンを作ってもらいました」とは宮葉氏。引き続き宮葉氏によれば「M20dは、頭の#4くらいまで使用してキャラクターを印象付けられたので、後はドラマの流れに沿って緊迫感のある別の曲を付けていたんです。ところがあるとき、蜂須賀さんから“最近、シュビドゥバを使ってくれないんですけど、あれが流れるつもりで演技しているんですが”と言われまして。それで途中から元に戻したんです」とのこと。実際の選曲例を確認してみると、#1～4を経て、#6からは主にM63が使用されていたが、#17からは再びM20dに戻され、以後はほぼ定番的に使用されている。役者の演技にインスピレーションを与えるとは、まさに音楽の持つ力の大きさを実証するエピソードで、これには高木氏も「いや、作曲者冥利に尽きますね」と満足気な様子。続くM1Full-2は「快盗チェンジ」M2のドラムソロを取り出した別バージョン。「裸の打ち込みだと空気感がないので厳しい」(高木氏)とのことだが、ここではLowland Jazzの大場俊氏によるドラムプレイを存分に堪能してもらえると思う。また宮葉氏は「主題歌も『秘密戦隊ゴレンジャー』以来の男女デュエットですし、このドラムソロで変身というのも『ゴレンジャー』のオマージュなんです」と選曲の狙いを語ってくれた。「今回、VSチェンジャーの内蔵音声がコード感のあるメロで、さらにプロデューサーの宇都宮さんからは“流れは切らないで欲しい”と言われたので、VSチェンジャーの音声と同時に鳴らしても成立するよう、TDでドラムソロや4リズムのみのバージョンを作りました。だいたいいつものパターンだと、変身ポーズを取ったところからM1Full-2を流して、“ルパンレンジャー♪”のコールからM1を編集して使っています」(宮葉氏)とのことで、ドラムソロの立ち上げのインパクトは俄然大きく、#1のラス立ち前の名乗りで使われて以後、#2、5、7、18、23、24、25、26、28、34、37などの選曲例がある。
13.守りたい時間(とき)
(1)M52(ビストロ・オープン!) (2)M130(安らぎ) (3)M53(友情)
ひと時の安らぎ、明るく、美しい音楽――。トラック13は、快盗と警察、双方で使われている汎用的な心情曲を集めてみた。M52は、M53、M54と共通モチーフを持ち、軽快なリズムにフルートが旋律を奏でる。「例年は主題歌アレンジで、“元気よく”とか“しっとり”とか“コミック”を作るのですが、今回に限っては主題歌アレンジが成立しないので、M48～51、M52～54と日常曲の2パターンでバリエーションを増やしています」とは宮葉氏。ビストロ・ジュレをイメージした楽曲だが、劇中では場面を限定することなく、選曲されており、#8の戦力部隊の場面、#11の咲也の訓練生時代の回想、#23で料理教室の講師に扮した透真と助手役ノエルの場面、#30では旅先で出会った魁利と圭一郎が旅情を満喫する場面などの選曲例がある。M130は、追加録音からフルートとギターのための心情曲。「ハッピーエンドで普通に終われる曲ですね。落ち着いたラストだとM49に頼り過ぎていたので、それ以外の曲が欲しいと思って発注しました」とは宮葉氏。#23のラスト、ノエルを信じるようになった透真の場面、#30で迷子の少女が圭一郎のヘン顔を見て笑う場面、#46で赤ポーダマン(改)の撃退後、魁利がノエルにサイクロンダイヤルファイターを託す場面などの選曲例がある。M53は、M52のスローバージョンで、ABメロを逆転させている。「別モチーフで似たようなシチュエーションのM49がサックスとギターだったので、編成が被らないようにピアノとストリングスにしました」(高木氏)。実際の選曲時には「前半と後半で別れていて、劇中、セリフや効果音を混ぜると、余韻が消えてしまって曲が終わったように聴こえるので、間にシンバルを足して使うことがあります」(宮葉氏)とのことで、#12のラスト、勇気がコレクションを透真に返却する場面での選曲例がある。ここでは透真の「予告しただろ、大会の前にいただくって」に対して勇気が「え?」と驚く場面で、シンバルを足した形で使われている。逆に原曲のままでの選曲例としては#38や#40、また#15や#35のラストでは後半部分、#30のラストでは前半部分と、別々に使われることもある。他に#10では前半をオルゴールメロのM53b、後半をM53と繋げて使われた選曲例もある。
14.悲しみのPromise
(1)M124(裏切り) (2)M129(涙腺決壊) (3)M127(想いをつなげて)
トラック14は悲しく、辛い心情を表した音楽集。いずれも追加録音で用意された楽曲群で、終盤に向けてのシリアスな場面を想定している。高木氏が「具体的な場面は覚えていませんが、脚本を読んでいて浮かんできた楽曲です」と語るM124は、メニュー上は「E.サスペンス」のブロックに分類されるが、感情の機微を汲み取った心情曲としての側面を持つ。劇中では、#32でノエルが圭一郎に決闘を申し込む場面、#47では初美花を食事に誘いだした咲也が核心に迫ろうとする場面での選曲が印象深い。M129は、「イントロがインパクトありますね」と宮葉氏が語るようにストリングスのフレーズ、そして木管が重く沈痛な旋律を奏でる。「息の長いメロディで劇伴だから短く終えていますが、この後5分くらい書き続けられますね」(高木氏)。選曲例としては、#46でジュレの3人が快盗だと確信した圭一郎とつかさに対し、咲也が「時間を下さい」と頼み込む場面、#48で快盗の3人がマスクを外し、ついにその正体を明かす場面がある。M124、M129のような追加録音分の心情曲は、使用頻度こそ少ないが、逆にその「特別感」が重要な役割を果たしている。M127は、第一回録音分のM39をリアレンジした楽曲で、ピアノとストリングスから成る室内楽編成で、心情に寄り添った楽曲に仕上げられている。「『シンケン』でもありましたね(※M63「宿命に向かって走れ!」→M126「別離」)」とは高木氏。「M39はいいメロディで使用頻度も高かったので、もう少しバリエーションを増やそうとM127、M128を発注しました」とは宮葉氏。まさに高木氏が拘る「強いメロディ」が広がりを見せたといえよう。#47でノエルが警察の3人にVSビークルを託し、自らの気持ちを伝える場面での選曲例がある。
15.背負った使命
(1)M57(仲間割れ) (2)M17(犠牲者の思い) (3)M110(夕陽に吠えろ)
トラック15からは警察側に焦点を当て、それをイメージした3つの心情曲を並べてみた。M57は、「同じようなメニューでM55がギター、M56がストリングス、M57がピアノがメインです」(宮葉氏)と差別化が図られた汎用的な心情曲。選曲例としては#13で初美花と手錠で繋がれたつかさが「もうこれ以上、犠牲者を増やしたくないんだ」と心情を吐露する場面があるが、実際には#5のラストの魁利の場面、#10で透真がブレッツを倒した際にゴーシュが表れなかったことに疑問を浮かべる場面、#12で勇気の前に透真が現れる場面、#39でノエルからザミーゴの存在について問われた透真、初美花がはぐらかす場面など、快盗側で使われることが多い。続く2曲は「警察戦隊のテーマ」のアレンジBGMで、M17は、オーボエとピアノ、ストリングスによる悲しみの心情曲。「メインテーマの中からどこを悲しく使えるかを考え、順番を入れ替えてみました」(高木氏)。楽曲自体は、快盗のM7に相当するが、ギターメインのM7とは楽器編成も異なり、こうした音楽設計も、ひとつの作品に二つのスーパー戦隊が存在する本作ならではと言えるだろう。選曲例としては#15を取り上げてみたい。負傷したつかさが魁利に警察官としての任務の重みを伝える中、「分かってるのか、圭一郎」と毒に冒され、病床に伏せている圭一郎に語り掛ける場面、続く幼稚園を再訪した咲也が、不安がる園児に「先輩が約束しただろ」と返す場面と、二つのシーンに跨って、M17が選曲され、圭一郎との強固な絆を際立たせている。他に#32でのラスト、ノエルと圭一郎が、それぞれに決闘を振り返る場面でも選曲されている。M110はトランペットソロによる「警察戦隊のテーマ」。往年の刑事ドラマでは定番の1曲で、「発注としては、ヒルトップがブラインド越しに夕陽を眺めて物思いにふけるイメージです」と、宮葉氏が狙いを語る。トランペットソロは第1回録音とは異なり、読売日本交響楽団で首席トランペット奏者を務める辻本憲一で「クラシック畑で活躍されている方で、同じトランペットでもLowland Jazzの吉澤達彦さんとも、エリック・ミヤシロさんともまた異なる魅力がありますね」とは高木氏。代表的な選曲としては、#44で、ナリズマ・シボンズが東雲悟の化けの皮を利用したと彼の死を告げ、圭一郎とつかさが衝撃を受ける場面がある。他に東映特撮ファンクラブ(TTFC)のWEB配信作品『警察戦隊パトレンジャー Feat. 快盗戦隊ルパンレンジャー ～もう一人のパトレン2号～』後編で、東雲悟が「圭一郎をサポートするのが2号である俺の役目だ」と語っていたとつかさが圭一郎に伝える場面でも選曲されている。なお、#44の選曲例は当然、『～もう一人のパトレン2号～』を受けての選曲であり、『～もう一人のパトレン2号～』を見れば、#44の該当場面もより印象が深まるだろう。
16.正義の名の下
(1)M71b(パト・バラード) (2)M61b(思いをつなげて!・パトver.)
トラック16はパトレンジャーのテーマソング「Chase You Up!パトレンジャー」の心情アレンジ曲を2曲まとめてみた。M71bは、「Chase You Up!～」のメロを用いたピアノソロ曲で、元々、メニュー表の「H.EXTRA」のブロックは存在しなかったが、「二つのテーマソングも劇伴として流してもらいたかった」(高木氏)と、「ルパンレンジャー、ダイヤルを回せ」のアレンジ曲M71aと共に高木氏が自発的に作った楽曲である。選曲例としては、#14で少年時代の圭一郎が、通り魔を捕まえようと待ち構えているところ、お巡りさんがやって来る場面、#24でつかさが魁利に祖父との思い出を話す場面と、いずれも回想シーンで選曲されている。M61bは、「サウンドコレクション1」のTR21に収録されたM61aと対になる曲で、「基本同じような解釈のメロ違いです。両方とも便利で、とりあえず盛り上がりたいときには使っていますね」とは宮葉氏。選曲例としては、#3でパトレン2号が1号に励まされ、本気を出す場面を皮切りに、#6で、パトレン1号が瓦礫の崩落を食い止め、逃げ遅れた人を助ける場面、#17では夢世界で初美花が歌う「秘めた想い」を聴き、圭一郎が自我を取り戻す場面、#19で咲也の決意を信じたヒルトップ管理官がVSチェンジャー＆トリガーマシン2号を手渡す場面、#25ではライモンに苦戦するルパンレンジャーを見たつかさが反対する圭一郎を説き伏せ、ルパンレンジャーの援護を決める場面など、数々の熱い場面を盛り上げてきた。
17.戦力部隊24時
(1)M70(ショックD) (2)M14(謎解き) (3)M47(一瞬即発) (4)M15b(聞き込み・4リズムのみ) (5)M116(チェイス!)
トラック17の5曲は、警察戦隊の捜査や活動をイメージ。M70は、第1回録音からのショートピース。「短いミステリアス系の曲、は警察側の場面で使い道が多いですね」(宮葉氏)。主な選曲例としては、#43で東雲悟が圭一郎たちの前に姿を現す場面、オフィスでノエルに視線を移し、「かわりならもう大丈夫だ」とつぶやく場面と二度使われている。M14は、「警察戦隊のテーマ」のバリエーションで、「これは全て打ち込みですが、全てを生で録ることは出来ないので、全体を通してどの曲を生で、どの曲を打ち込みにするかを探すことも大事ですね」とは高木氏。打ち込みでも楽曲としてはきちんと成立しており、劇中では戦力部隊のオフィスでの定番曲として、#4冒頭の現場検証シーンを皮切りに、#5のオフィスでジム・カーターがVSビークルについて説明する場面など、使用例は枚挙に暇がない。M47はエレキギターをフィーチャーした重厚なサスペンス曲。初出は#3の冒頭、ジュレを訪れる警察の3人の場面で、#23では、食材を前にした透真がウシバロック・ザ・ブロウから料理対決をけしかけられる場面で使われた他、「前後編の前話解説で使うことがあります」(宮葉氏)とのことで#15、#21での選曲例がある。M116は追加録音分から「ルパンでもパトでもない、変身前に使えるアクション曲」(宮葉氏)と用意された楽曲で、双方で使えるよう、特定のモチーフは設定されていない。劇中では警察の場面では使われず、#34でルパンマグナムの隠し場所に潜入した快盗の3人が鎧騎士に襲われる場面、#46で改造ポーダマン(赤)が魁利たち3人に隠し芸を披露しろと命じる場面での選曲例がある。
18.攻防戦勃発!
(1)M62b(襲撃!サックス抜き) (2)M24(戦闘開始) (3)M28(激闘!巨大戦)
警察戦隊パトレンジャーVSギャングラーの激しい戦い――。トラック18は両者の危機感ある攻防を描いた3曲から成る。M62bはTR4に収録したM62のTDによるバージョン違い。サックスがなくなり、ロックテイストが前面に出たことで、より粗削りなイメージに。劇中では、#38で警察の3人がジム・カーターよりギャングラー出現の知らせを受ける場面での選曲例がある。M24は「ギャングラーのテーマ」のバリエーションで、M23と共にアクション用に用意された楽曲だが、M24はそのアップテンポバージョンとなる。「テンポやリズム、双方のバランスを見ながらですが、まずはプランを練るのが最初ですね。とりあえずスケッチだけ書いて、一晩寝かして、翌日聴いてみて大丈夫なら進めて、ダメだったらまた考え直します」とは高木氏。#10ではルパンレッドとザミーゴの一騎打ちを盛り上げたほか、#15でトゲーノ・エイブスが毒針で人々を襲撃する場面、#25でルパンレンジャーとライモン・ガオルファングーが戦う場面などの選曲例がある。M28はM27a、M27bと同じモチーフによる巨大戦バージョン。スネアが刻む疾走感溢れるリズム、低弦やホルンが奏でるモチーフといったシンフォニックなサウンドは、否応なくテンションが上がり、サントラとしても聴かせる1曲である。「タイトルは巨大戦ですが、テンポが早いので等身大の場面でも選曲しています」(宮葉氏)とのことで、#36ではルパンレンジャーとペッカー・ツエッペリンが戦う中、爆弾のありかを吐かせるためにパトレン3号が乱入する場面、#41で大勢のポーダマン相手に苦戦するつかさの場面で使われた他、巨大戦では、#22のドグラニオの命を受けたデストラがエックスエンペラースラッシュに苦戦するデメラン・ヤトミスのためにゴーラムを送り込む場面がある。
19.響け!正義のサイレン
(1)M16(CHASE!!) (2)M108(パトレンジャーPOWER UP)
「VSサウンドコレクション2」のトリを飾るのは、警察チェンジしたパトレンジャーの活躍を描いた2曲。激しいリズムと共にツインギターがメロディを刻むM16は、「警察戦隊のテーマ」をロックバンド編成にアレンジ。「快盗はロックはやらないですし、M16はドラムも打ち込みで、空気感満載の快盗側の劇伴とのいい対比になったのではないでしょうか」(高木氏)。代表的な選曲例としては、#2のパトレンU号の場面がある。M108は、追加録音分から「警察戦隊のテーマ」のリアレンジ曲。「M12は16ビートだったので、8ビートにすることで、刑事感も薄れ、ヒーロー感が前面に出たと思います。同じメロでも雰囲気も大分違いますね」(高木氏)。また、リズムも含め、かなり音を細かく作り込んでおり、その辺りにも耳を傾けて欲しい。劇中では、等身大、巨大戦の区別なく使われており、#41では圭一郎たちが警察チェンジする場面から、スーパーパトレンエックスとパトレンU号がデストラに必殺技を浴びせる場面にかけて選曲、#44ではサイレンパトカイザーの活躍シーンに選曲されている。また、最終回では、満を持して登場したスーパーパトレン1号を擁する警察戦隊と、ドグラニオの最終決戦を大いに盛り上げた。
『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー VSサウンドコレクション3』BGM解説
-
1.「Chase You Up!パトレンジャー」(インストルメンタル1)
「サウンドコレクション3」の頭を飾るのは、警察戦隊パトレンジャーのテーマソングのインストで、吉田仁美が歌うボーカルパートは、エレキギターが担い、そのフルコーラスを収録。劇中、歌入りのみ#6、15、29、31の各話で選曲されている。
2.VS Other Tracks2
(1)M103b(Xコミック・メロ抜き) (2)M26c(悪党失格・エレピ＋コーラス) (3)M41b(疑惑・4リズムのみ) (4)M20c(ギャングラーのテーマ・4リズムのみ) (5)M36b(強敵登場・リズムのみ)
トラック2は、劇中の様々なシチュエーションをはじめ、SEやセリフの有無などに応じて用意されたTDによる別バージョン集。1曲目のM103bは「エックスのテーマ」のコミカルアレンジ曲M103から、アコーディオンが外されている。続くM26cは、「ギャングラーのテーマ」のコミカルアレンジ曲M26から、エレピとコーラスを抜き出したもの。選曲例としては、#11でパトレン1号と3号の性別が入れ替わるシーンがある。M41bは、汎用的なサスペンス曲M41のリズムのみを抽出。初出は、#3で警察の3人がジュレを訪れた際に、透真が咲也のVSチェンジャーを盗ろうとする場面。なお、この場面では警察が事件で出動し、入れ替わりにコグレが現れるくだりから、そのままM41を編集して繋げている。また、#41で魁利と初美花が、透真のスマホを拾う場面での選曲例もある。M20cは、4リズムのみの「ギャングラーのテーマ」。洒落たピアノといい、実にムーディで一聴しただけでは、とても敵の音楽とは思えないだろう。宮葉氏によれば「宇都宮さんから“ギャングラーは大組織ではなく、割と個人営業で部下も好き勝手やっている感じ”と聞いてM20を発注しました」とのことだが、この別バージョンには、より一層そういったイメージを感じられる。劇中ではM20が使われるパターンがほとんどであったが、#7では、M20を使いつつも、デストラが「いつぞやのように思わぬ珍味を届けてくれるかもしれんな」と語るシーン終わりを、M20cのコーダに入れ替えて選曲している。本トラックの最後となるM36bは、サックスとエレキギターがユニゾンで奏でるメロディを外したバージョン違い。
3.蠢く野望
(1)M69(ショックC) (2)M64(愕然) (3)M118b(黒幕・リズム抜き) (4)M123(迫る足音) (5)M120b(新幹部登場・弦、サックス抜き)
ルパンコレクションを用いて、次なる犯罪を企てるギャングラー。その計画の実態とは……。トラック3は、静かで不気味なサスペンス音楽集。M69とM64は共に「G.ブリッジ・ショック」からの楽曲で、前者はピアノとストリングスで軽め、後者はピアノとシンセで重めのサスペンスブリッジ。「こうした曲は和音で処理する人が多いかと思うのですが、僕はそれがイヤで、やっぱりメロディを書いてナンボなので、たとえ短い曲でもメロディを書いています」(高木氏)。それぞれの選曲例としては、M69は、#6で任務を忘れて快盗に執着する圭一郎につかさが平手打ちを浴びせる場面、#21ではギャングラー出現の報を受けた警察の3人が出撃する場面があり、ここではノエルに不信感を抱く圭一郎の心情にフォーカスした選曲となっている。M64は、#4でつかさが消えたことも知らず、圭一郎と咲也のパトカーが国際警察に戻る場面で選曲されている。M118bは、「ギャングラーのテーマ」を用いた追加録音分のM118から、TDでリズムを抜いた別バージョン。選曲例としては#42で、デストラがもたらした広範囲な被害に愕然とする警察と、強力なデストラからコレクションを奪うための方策を苦慮する快盗と、続く二つの場面にかけて選曲されている。M123は、低弦の序奏にヴァイオリン群が不安を掻き立てるサスペンス曲。「前回の悪のサスペンスがジャズ系で割とキャラが立っていたので、シリアスなサスペンス曲として発注しました」とは宮葉氏。また強い打音は元々なかったが、現場で宮葉氏が閃いた「足音みたいな音が欲しい」とのオーダーで加えられたという。選曲例としては、#44で東雲悟の化けの皮を被ったナリズマ・シボンズがコレクションの力を用いて、警察の3人に互いの銃口を突き付けさせる場面、#47のラスト、デストラの元へ連れ去られたノエルの場面がある。M120bは、第2回録音で用意されたM120のTDによるバージョン違い。楽曲自体はTR14の解説を参照して欲しい。
4.ヒートアップ バトル
(1)M33(追いつ追われつ) (2)M38(闘志)
トラック4は、警察VS快盗をイメージした、アップテンポで激しいアクション音楽集。M33は、主題歌「ルパンレンジャーVSパトレンジャー」のアクションアレンジ曲で、「例年は、主題歌の作曲家は別の作家さんでガッツリ項目を作るところですが、今回のように部分的に使い込めるのは、同じ作家さんならではの贅沢ですね」とは宮葉氏。高木氏としてもお気に入りの1曲で「他の作家さんの主題歌をアレンジする場合は、なるべく変えないように気を使うところですが、自分の曲なのでどうぶった切っても大丈夫です(笑)。リズムも倍になったり、半分になったり、劇伴としても飽きさせない盛り沢山の1曲になったかと思います」。演奏は主に快盗側を担うLowland Jazzだが、警察サウンドを表現するため、DBで打ち込みとストリングスが足されている。選曲例としては、#2のVSビークルでのチェイスシーンが印象深い。また終盤の#48ではエックスエンペラースラッシュ、ビクトリールパンカイザー、ルパンマグナム(ロボモード)VS実験体(黒)の巨大戦でも選曲されたが、ここではパトレンジャーが地上から援護射撃を行う場面があることからこの曲が選曲された。またM2、M12と共に予告編音楽としてもお馴染みだが、宮葉氏によれば「当初、予告編音楽はルパンバージョンとパトレンバージョンを作るつもりだったのですが、“毎回、誰編と分かるような使い方はやめて欲しい”と言われたので、編集で4～5バージョン作って、その都度使い分けています」とのことで、#13、20、24、37の次回予告では、このM33が短く編集されて使われている。M38は、M39と同一の短いモチーフが繰り返されるロックアレンジ曲。M39に比べると使用頻度はあまり高くなく、宮葉氏は「これが合う曲だと、M2やM12とかそれぞれのテーマを使うのですが、レオタード回(#27)のロボ戦では、咲也を暑苦しくもカッコよくしたかったので、ちょうどいい曲でした」と語っていたが、本項の取材後の#47ではパトレンジャーVSゴーシュ、ルパンレンジャーVSザミーゴの場面でも使われた。
5.快盗乱舞
(1)M1Full(怪盗チェンジ!Long) (2)M4(お宝争奪戦) (3)M105(ルパンレンジャーPOWER UP)
シザーシールド＆ブレードブーメラン、マジックアロー、スプラッシュバスター、そしてスーパールパンレッドへ。トラック5は、新たなルパンコレクションの力で戦力UPしたルパンレンジャーのアクション音楽集。M1Fullは、定番曲ながら「VSサウンドコレクション1」には未収録だった「快盗チェンジ」の音楽。「快盗戦隊ルパンレンジャーのテーマ」の前半部分としては陽の目を見ていたが、単独では今回が初収録となる。楽曲自体は、TR18のM1と二種類存在するが、まずはロングバージョンのM1Fullを聴いてもらいたい。「警察チェンジのM11と同様、VSチェンジャーのSEが入る都合上、前奏を長く取り、その後でメインテーマがガツンと入る構成です」(高木氏)。選曲例としては、#10でM2と繋げて使用された他、#11ではワイヤーを使っての空中戦でピッチコックを翻弄して、ルパンコレクションを回収する場面、他に#12、21、22、39、46、47での選曲例があり、#21では4リズムのイントロをカットしてM2と繋いで編集、#46では、コーダのみM2に差し替えて使われている。M4は、軽めの編成のアクション曲で、#1の闇カジノでの快盗の3人のアクションシーンで使われたことでもお馴染みで、「メインテーマの“タータータータ”をちょっと変形させて入れています」とは高木氏。発注の時点では必ずしもジャズを指定していたわけではなかったが、快盗＝ジャズの音楽コンセプトはもちろん、Lowland Jazzの持ち味を生かす意味合いもあり、高木氏の判断でジャズとなった。また近年はブラス、弦、リズムセクションと、時間を区切って別々にレコーディングされることが多いが、Lowland Jazzに関しては、セッションレコーディング(※現場では「せーの!で録る」などと言う)が行われており、セッションならではの疾走感や各パートの掛け合い、アドリブにも耳を傾けて欲しい。M105は、追加録音からルパンレンジャーのパワーアップ曲で、「快盗戦隊のテーマ」を、また別アプローチでジャズテイスト溢れる楽曲へとリアレンジしている。「M1では、イントロに尺を割いていたので、M105は頭から派手な登場をイメージしました。またモチーフも細かく変化を付けたことで、バリエーションとしても成立したと思います」(高木氏)。追加録音分は、スタジオミュージシャンによる通常通りのレコーディングで、「リズムセクションは打ち込みで再現しているので苦労しました」(高木氏)とのことだが、ブラスセクションは生で、とりわけ縦横無尽に活躍するサックスが個性を引き立てている。「平原まことさんが気合を入れてサックスソロを吹いてくれたこともあり、いい感じになったと思います」とは高木氏。なお、サックスは、DBでアルトとテナーの2本を重ねている。劇中では、#39のスーパールパンレッドの初登場場面が初出で、次の#40ではルパンレッド＆ルパンエックスのW名乗りからスーパールパンエックスの活躍シーンで選曲されている。
6.「ルパンレンジャー Here we go!」(インストルメンタル)
トラック6は、ルパンレンジャーのアクションソングのギターメロインストをフルコーラスで収録。『忍風戦隊ハリケンジャー』や『動物戦隊ジュウオウジャー』の主題歌歌手・高取ヒデアキ率いるZETKIのセルフプロデュース楽曲となる。作曲は高取、編曲は籠島裕昌、演奏はZETKIが手掛け、どこか影のある曲調にブラスセクションをフィーチャーしたゴージャスなサウンドが、ルパンレンジャーのイメージを見事に描き出している。劇中では#26のラス立ちで、歌入りと編集して使用されており、前半が歌入り、後半の必殺技を決める下りをインストに差し替えて選曲している。
7.三つ巴大激戦
(1)M114(最終作戦発動) (2)M113(最大の決戦)
ギャングラー、怪盗、警察入り乱れての大激戦! トラック7は追加録音からのアクション曲集。M114はシンフォニックな危機感溢れる楽曲だが、追加録音分は、ハードな展開が予想される後半に向けての楽曲のため、作曲家に求められるハードルも必然的に高くなるという。「音楽のインフレも相当で(笑)、そこをなんとか捻り出して作った楽曲です。強いメロディを作ることはもちろん、打ち込みに頼る部分もあれば、自分のオケのライティングにかける部分もあります」と、作曲家もある意味、総力戦である。選曲例としては#38でデストラが現れる場面がある。M113は「快盗戦隊のテーマ」、「警察戦隊のテーマ」の二つに加え、「ギャングラーのテーマ」と三つのモチーフを用いた、まさに三つ巴の戦いを体現した曲で、「尺も長くオーケストラを鳴らすだけ鳴らし、できることは全てやり切りました」(高木氏)という入魂の1曲である。快盗から警察、そして約49秒辺りでテンポが変わってギャングラーのテーマになるが、「その裏で快盗や警察のモチーフを弱く入れていて、頑張っているけど苦戦している、といった表現をしたつもりです。三つモチーフがあれば繋げたり、積み上げたりと、色々出来るので、そういった作業はとても楽しかったですね」とは高木氏。楽曲を通じて三つのモチーフを確かめて欲しい。劇中では、#24でレッドが自らの植物化も厭わず「ラッキーペンダント」の効力でギーウィ・ニューズィーに攻撃を仕掛け、ブルーがコレクションを回収し、パトレンU号＆パトレンエックスがギーウィを撃退する場面、#38でルパンレッドがビクトリーストライカーに搭載されていたサイレンストライカーを出撃させる場面から、パトレンジャーがジャネーク・ソーサーを撃退する場面と、まさに三つ巴のバトルシーンでの選曲例がある。また短く編集して、#32、41では次回予告編の音楽としても使われている。
8.勝利を奪い取ろうゼ!
(1)M106(ルパンカイザーPOWER UP) (2)M112(銃ロボ)
トラック7を経て戦いは巨大戦へ。ここでは、追加録音分からパワーアップしたルパンカイザーと、ルパンマグナムの活躍をイメージした2曲を並べてみた。M106は、ブロー気味のバリバリ吹くサックスが個性を放つ「ルパンカイザーのテーマ」のリアレンジ曲。「パワーアップでテンポを落とすのは珍しいですね」との宮葉氏の問いに、「M8が16ビートだったので、8ビートにすることで、ロボのドッシリした感じを表現してみました」と高木氏。#38で、サイレンストライカーとジャネーク・ソーサーが戦う場面から、サイレンルパンカイザーがジャネークを撃退する場面にかけて使われたのが初出。また#40のサイレンルパンカイザーVSジュゴーン・マナッティ戦では、5体のルパンカイザーで翻弄して撃退する場面でも使われた。M112は、「ちょっと軽めでやんちゃな感じですね」(宮葉氏)というルパンマグナムのテーマ。「作曲した時点では詳しい情報がなくてイメージを掴み難かったのですが、宮葉さんから“ルパンカイザー＆パトカイザーのテーマがマイナーだったので、今回はメジャーで”とオーダーがあり、それで特徴付けられたところがあったかと思います」とは高木氏。#36、#45のルパンマグナムスペリオルの活躍シーンで使われた他、#46ではロボ絡みの総集編場面での選曲例がある。
9.「ダイヤライズ!ルパンマグナム」(インストルメンタル)
トラック9は、作曲は間瀬公司、編曲は中畑丈治によるルパンマグナムの挿入歌のインスト。メロはエレキギターで、他の挿入歌のインストと同じく、フルコーラスでの収録となる。
10.願いは遠く
(1)M53b(友情・シンセver.) (2)M7b(失われた、あの日・Shortオルゴール) (3)M55(切ない想い)
快盗として世間を騒がす魁利、初美花、透真の3人。その胸に秘めた想いとは……。トラック10は、快盗イメージのちょっと寂しげな心情音楽を集めてみた。M53bは、高木氏のアイディアで追加されたオルゴールメロバージョンで、TDによる別バージョンではない。「M53はピアノとストリングスですが、弦が入るほど盛り上がらない場面もあるかもしれないと思い、用意してみました」とは高木氏。スーパー戦隊シリーズの第1回録音の約70曲といえば、劇伴業界でも屈指の曲数の多さで知られ、歴代の作曲家は「正月は返上」と口を揃えて語るほどであるが、そんな中、自発的に曲数を増やすその狙いはどういったところにあるのだろうか。「ここ数年、自分でも増やしていくスタイルになっていて、脚本を読んで“このシーンにこんな曲がいいな”と思い付いても、メニューに当てハマらない場合もあるんですね。それでメニューにない曲を持ってくるという(笑)。まぁ、番組自体一年間続きますし、別に使っても使わなくてもいいんですけど、ひょっとしたら役立つかもしれないな、くらいの気持ちで作っています」と謙遜するが、宮葉氏が「今回はメニュー以外の曲もけっこう作ってくださって、選曲する側としてはとても有難い限りですね」と語っているように、劇中での使用頻度も高い。実際の選曲例を確認してみると、#4、5の巨大戦後のジュレの場面や、#9では魁利との出会いを通じ、エマが確執のあった姉に会い行くと電話する場面など、汎用的な劇伴としても重宝しているが、とりわけ初美花の心情曲としての選曲が興味深い。#10のラスト、コグレにザミーゴの存在を尋ねようとした初美花を、魁利が制止する場面で使われ、ここでは魁利が「ザミーゴは俺らの切り札だ」と初美花を納得させるくだりがあり、初美花に寄り添った曲としてM53bが付けられている。以後、#13では、ふわパンのぬいぐるみをゲットしたい理由をつかさに話す場面、#22では咲也が初美花に想いを伝える場面、#28のラスト、初美花とお父さんの場面での選曲例がある。M7bもオルゴールメロで、こちらは「快盗戦隊のテーマ」のバリエーション。やはり高木氏が自発的に用意したもので、「快盗側は悲しい過去のエピソードがあるので、素朴なオルゴールメロも合うかなと思って作ってみました」(高木氏)と語る。選曲例としては、#13で初美花と詩穂が、お化け屋敷を訪れた際の回想シーンがある。M55は、2本のアコースティックギターが奏でる悲しみ心情曲。「メロとハーモニーしかないんだけど、とてもシンプルで個人的にはこういった曲が好きなんです。自分でもいい曲が出来上がったと思います」とは高木氏。劇中では初美花のM53bと同じような役割で、魁利と透真の過去の場面で使われることが多く、#3、#12では透真が婚約者の大平彩と過ごす場面、#9では魁利の兄・勝利が幼い魁利が見守る中、シュートを決めてバスケの試合に勝つ場面、また#24では、つかさの祖父、魁利と兄、二つの回想を繋げる形で選曲されている。なお、同じ曲でも、透真は楽しい場面に悲しい音楽を付けることでより劇的な効果を生み出す「カウンタープンクト」と呼ばれる手法、一方、魁利の場面は勝利との確執があるため、また違う角度から掘り下げた選曲となっている。なお、初美花絡みだと#10で、ブレッツが倒された場所で破片を探す場面があり、これもまた「大切な人を取り戻す」に紐付けた選曲といえよう。
11.最後には独りきりでも・・・
(1)M71a(ルパン・バラード)
トラック11は、「ルパンレンジャー、ダイヤルを回せ」の心情アレンジBGMのM71aを配置。M71bを収録した「VSサウンドコレクション2」のTR16の解説でも触れた通り、高木氏が自発的に作曲したもので、ピアノソロのM71bに対して、こちらは今泉洋氏の演奏によるアコースティックギターがメロを刻む。劇中では、#7で自らの行いを悔やむ初美花に対して、コグレが「そうでしょうか?」と声をかけ、励ます場面。#24ではギーウィ・ニューズィー撃退後、植物化した身体から元に戻ったルパンレッドの元にブルーとイエローが駆け寄る場面などの選曲例がある。
12.二つの矜持
(1)M56(後悔) (2)M126(絶望) (3)M110d(夕陽に吠えろ・弦のみ) (4)M59b(対立・ドラム抜き)
段々と絆が深くなっていきながらも、相手を騙し、捕まえなければならない快盗と警察。トラック12は、弦楽編成による、両者の悩みや葛藤を描いた心情曲集。M56は、第1回録音で用意された楽曲中、かなりシリアスに振った楽曲で、「M55～57は同じようなメニューですが、それぞれギター、弦、ピアノと書き分けてもらいました」とは宮葉氏。M126は、後半の暗い展開を予想して発注された心情曲で、終盤での使用頻度が高く、ドラマの盛り上げに大きく貢献している。主な選曲例としては、#34で魁利と透真と初美花の3人が大切な人の幻影を見る場面で使われた他、#44では豪雨の中、快盗の3人がノエルにVSチェンジャーを突き付ける場面、#48の冒頭、ギャングラーに捕まったノエルの場面など、ノエル絡みでの選曲も印象深い。また、#46では圭一郎が2年前の大量失踪事件の被害者から、ジュレの3人が快盗であることを報告する場面での選曲例もある。M110dは、M110のTDによる別バージョンで、ストリングスによる感傷的な旋律からは、「警察戦隊のテーマ」がうっすらと聴こえてくる。#49で快盗の正体を知りながら隠していたノエルに、咲也が詰め寄るシーンに使用されている。M59bも別バージョンで、弦楽器のみになったことで、より心情に特化したイメージに。「そのときのセリフのテンションでM59と使い分けています」(宮葉氏)。主な選曲例としては、#16でマンタの体と入れ替わってしまった透真が魁利、初美花と共に透真の体を持つマンタを呼び出す場面がある。また#3では、魁利が、単独行動しようとする透真を制止する場面で、後半部分が使われた。
13.究極のコレクション
(1)M125(奇跡) (2)M107(願いは一つ!)
ルパンコレクションが全て揃ったとき、果たして何がおきるのか? 「快盗戦隊のテーマ」をアレンジした神秘的な音楽集。M125は、全てのルパンコレクションが揃ったイメージで、チェンバロの荘厳な音色と、雄大さを表現するシンフォニックサウンドが、それまでの本作の劇伴とは異なる「特別感」を描き出す。劇中では、#32でパトレン1号とルパンエックスが駆けつける場面で選曲されており、快盗と警察が共闘を決意するのはまさに奇跡であり、楽曲イメージとも合致する見事な選曲であった。また、ルパンコレクションに絡めての本来の楽曲イメージに近しい選曲としては、#35で、「足枷を外せ」の意味を悟った魁利が、幻覚から脱出してルパンマグナムを手に入れる場面がある。その他、#39で圭一郎がルパンレッドがザミーゴへ向けた気迫に何かを感じ取る場面などの選曲例がある。M107は、「快盗戦隊のテーマ」のオーケストラアレンジ曲。「第一回録音の快盗関連の楽曲は基本ジャズでしたが、今回はオーケストラへアレンジすることで新しさを出してみました」とは高木氏。選曲例としては、#39でスーパールパンレッドがザミーゴに必殺技を放つ場面、#42で快盗と警察が力を合わせたグッドクルカイザーVSXでデストラを打ち破る場面がある。
14.破壊者襲来
(1)M67(ショックA) (2)M63b(出現!・ドラム抜き) (3)M25(Mr.FROZEN) (4)M36(強敵登場) (5)M120(新幹部登場)
快盗、警察の前に立ちはだかる、強力な敵。威圧感を放つその存在を前にして快盗と警察は……。トラック14はギャングラー優勢の音楽集。M67は、オーケストライメージのショック音楽。選曲例としては、#1の冒頭、闇カジノでルレッタ・ゲロウが正体を現す場面を皮切りに、#7ではゴーシュがブレッツを巨大化させる場面、#33では、ジム・カーターがギャングラー出現を知らせる場面などの選曲例がある。M63bは、M63のTDによる別バージョン。宮葉氏によれば「その時のテンションでM63と使い分けています」とのことで、#44、45では巨大シーンで選曲されているが、それぞれM63ではなく、M63bを選んだのは、#44はゴーシュが現れるカットから音楽が入るため、#45はサモーン・シャケキスタンチンの軽いキャラを踏まえての選曲ではないかと思われる。他に#10ではザミーゴの前にピンチに陥るレッドの場面、#44では、冒頭の前話振り返り場面がある。
M25は「ザミーゴのテーマ」で、「最初は正体を見せないとの話だったので、割とハッキリとしない、おおげさではない曲調で発注しました」とは宮葉氏。楽曲は、ザミーゴが口ずさむ口笛のメロを劇伴にしたもので、劇中では、#38でイセロブ・スターフライド＆ジャネーク・ソーサーの前に苦戦するパトレンジャーの前に「よぉ、楽しそうだな」と姿を現す場面、続く#39でルパンレッドの前に姿を現す場面で選曲されている。作曲に関しては、撮影の都合もあり、口笛のメロディを先行して作曲したという。「メニュー打ち合せの段階から“テーマを口笛で吹かせたいので、先に作って欲しい”と言われ、高木さんにデモを作ってもらいました」(宮葉氏)。「デモのやりとりも出来ましたし、氷のようになるべく冷たいイメージと言われていたので、これはシンセで正解でしたね」(高木氏)。また、口笛と劇伴のメロではキーが異なり、#10では、ザミーゴの口笛の後にM10bを選曲する都合上、宮葉氏が劇伴のキーに合わせて口笛を入れ直しているが、「なかなか難しくて苦労しました」と語る。その後、#17では、実際にザミーゴ役の入江甚儀が撮影現場で吹いたメロが使われている。なお、口笛自体は、前述したように現場対応なので、音楽扱いでは用意されていない。「イントロで“出たー!”といった感じにしてください、と発注しました」(宮葉氏)というM36は、敵側のスローテンポのアクション曲。「ギターとサックスがユニゾンしていて、さらにディストーションギターで悪い雰囲気をプラスしています」とは高木氏。#8でルパンレッドの前にゴーシュが姿を現す場面、#12で勇気少年の前にジェンコ・コパミーノが現れる場面、#22で初美花がデメラン・ヤトミスの金魚鉢に閉じ込められる場面、#23でルパンエックスとルパンブルーが、ウシバロック・ザ・ブロウ、ギーウィ・ニューズィー、ライモン・ガオルファングの3怪人に苦戦する場面、#24では人々がラッキーペンダントで植物化してしまう場面など、多数のエピソードで選曲されている。M120は、「行儀の悪いサックスを吹いてもらいました」(高木氏)と、平原まことのサックスにうねるようなストリングスが絡み合う悪側の新曲。本来、ギャングラーの新幹部を想定して用意された楽曲だが、#41でデストラとパトレンエックスが戦う場面で選曲され、楽曲イメージと重量級のデストラのキャラが見事にマッチしていた。
15.Big Boss
(1)M115(正義壊滅) (2)M37(最大のピンチ) (3)M117(ドグラニオ・ヤーブン怒る)
ギャングラーの全勢力を集めた総攻撃。快盗と警察に訪れる大ピンチ! M115は「ヒーローの敗北」(宮葉氏)をテーマにした1曲。追加録音分はクラシカルな曲が多く、「二つメロがあり、途中でカノンになり、低弦とヴァイオリンで掛け合いをさせてみましたが、ハーモニーもなく、それだけで持って行くのは珍しいかもしれないですね」とは高木氏。終盤の名シーンの数々を彩った楽曲で、#42で、快盗と警察が苦戦を強いられつつ、なおもデストラに立ち向かっていく場面では、曲の途中、カノン形式になる箇所で、戦いを遠巻きに見つめるノエルの場面に当てており、その心情を掘り下げている。また#43では、東雲悟と圭一郎にノエルが追い詰められる場面で、後半部分を選曲された他、#47では、ゴーシュの圧倒的な強さの前に、パトレンジャー、ルパンエックスが変身解除させられ、ノエルが「今の僕にできること」を決意する場面でも使われた。続くM37は、第1回録音分から定番の最大のピンチ曲。基本、譜面だけで仕上げられた楽曲で「この辺りは時間のない中、ものすごい勢いで作ってましたね(苦笑)。クオリティを保ちつつ、比較的オーソドックスなオーケストラ曲として仕上げたつもりです」とは高木氏。また、「巨大戦で怪人が街を破壊するイメージです」(高木氏)とのことだが、高木氏が拘る「強いメロディ」から心情的な面も感じさせ、劇中、#6でブンドルト・ペギーを巡って警察と快盗が入り乱れる場面での選曲が忘れ難い。ここではレッドと1号が戦いを繰り広げるが、楽曲イメージがルパンレッドへの執着心と、己の任務との間で揺れ動く圭一郎の内面をも感じさせる絶妙な選曲になっていた。他に#9ではデストラの登場場面、#10ではザミーゴとルパンレッドが対面する場面、#24ではギーウィ・ニューズィーに苦戦する快盗と、警察の場面などの選曲例がある。M117は「ギャングラーのテーマ」を用いて、新しく作られたドグラニオ・ヤーブン用の楽曲。「初期のドグラニオは割と人間味溢れるキャラとして描かれていたのでジャズが合っていたけど、今回は冷徹でガチで怖い面を描くために、オーケストラを主体に打ち込みも色々混ぜてみました。ループや、アタックの強いヤツとかSEっぽい音も、ヘッドフォンで聴けば色々と感じてもらえるかと思います」(高木氏)。選曲例としては、#48でドグラニオが立ち上がる場面があり、ゴーシュが呼び出した実験体(黒)から、コレクションを奪い取ってしまうなど、まさに冷徹な場面への選曲であった。
16.絶望の選択
(1)M122(究極の選択) (2)M121(誇りの対立)
ドグラニオの猛威を前にして、なすすべもない快盗と警察。それでも進むか退くか、決断を迫られる……。トラック16は追加録音から「E.サスペンス」に分類される2曲で構成。M122は、低弦が「第1回録音のサスペンス曲との差別化を意識しました。チェロでメロを取らせたのも被らないようにした結果ですね」(高木氏)。劇中では、#22でノエルと透真の場面で選曲されたのが初出で、#44では快盗からも警察からも受け入れられない、ノエルの心情を掘り下げる楽曲として使われた。M121は、#30「ふたりは旅行中」でのパトレン1号の「行けー!」の曲と書けば、ピンとくる人も少なくないだろう。楽曲は、M122と同じくストリングスメインだが、こちらはピアノが入るため、より心情に特化しており、「圭一郎と魁利が会話しているシーンで使うつもりで発注しましたが、実際には限定せず、どんよりとした暗い雰囲気で絵に合えば使っています」(宮葉氏)とのことで、中盤以降の主要エピソードでは多数使われている。少々長くなるが、印象的な選曲例を以下に挙げておく。まずは#25でノエルが体を張って、ステイタス・ゴールドの暗証番号が6ケタであること突き止め、魁利たちに伝える場面、#38では、デストラに変身解除させられたノエルと警察が立ち上がる場面、#42では、デストラ攻略に際して、コレクションを快盗に盗らせて倒そうと決意する警察、警察を囮にしてコレクションを盗ろうと決意する快盗と、互いの思惑が一致する場面、#44では警察の3人が、東雲悟による、ノエルのスパイ疑惑が捏造だと暴く場面、#47では、ノエルがゴーシュに対して「刻むなら僕だけで十分だろ」と立ち上がり、警察の3人を守ろうとする場面、#48では巨大戦後、もうジュレには戻れない3人がそれぞれに想いを抱え、ビークルで去って行く場面がある。
17.敢然!揺るがぬ闘志
(1)M59(対立) (2)M60(怒り) (3)M39別(大逆転!・別メロSLOW) (4)M128(決意)
自分たちの願いをかなえるため、人々の平和を守るため、倒れてもなお立ち上がる燃えるスーパー戦隊魂!! M59は第1回録音から、使用頻度の高いサスペンス曲。「曲の変化がドラマの流れに合うといいなと思っていて、そこを狙って選曲することもあります。しかも短くても切れるし、とても使いやすいですね」(宮葉氏)。溜録り＆選曲方式の劇伴においては、この「使いやすさ」もまた重要であり、「それは当然考えた上で作曲しています。長い曲の場合は切りやすくするとか、こことここを繋げられるとか、ここで戻れるとか。このM59の場合も2小節で1フレーズなのですが、編集して1小節ずつに刻んで半分の尺にすることもできます」と高木氏は語る。選曲例としては、#2のラスト、警察の3人がジュレを訪れ、魁利たち3人に緊張が走る場面が初出で以後、終盤の#42では警察と快盗が、デストロを倒すために出撃する場面と、多数のエピソードで使われている。M60は、ロックバンド編成による心情曲で、曲タイトルにもあるように「怒り」を表したもの。「怒りの感情を音楽で表すのは難しいですね。“悲しい”や“嬉しい”と違って、あまりセオリーもないですし、作品によって毎回苦労しています」とは高木氏。劇中では、#49の夜のビル街で満身創痍になりながらザミーゴを探す魁利と、その魁利を探す圭一郎の激しいカットバックに使われたほか、#12の勇気少年の陸上大会の場面での選曲例がある。M39別は、メニュー上はM39と同一のMナンバーが振られているが、メロディが異なる全くの別曲である。「最初の劇伴レコーディングを終えた時に、定番の拳を握って立ち上がるような場面に使えるテンポ感の曲がなかったので、シンセの自宅録音で作ってもらいました」(宮葉氏)。この追加発注に際し、本来M39のメロディを流用すれば良いところを、「この曲用に新しくメロディを考えました」と、別曲で応えたのは、高木氏ならではの真摯な仕事ぶりの表れといえよう。劇中では、#5でルパンレッドとパトレン1号が荒々しく戦う場面でその効果を発揮したのをはじめ、#7では苦戦するパトレン2号と快盗衣装に身を包む初美花を繋ぐ形で選曲。他に#9では、デストラとルパンレッドが戦う場面、#15では、毒で負傷した圭一郎が駆けつける場面、#23では、ウシバロック・ザ・ブロウとの料理対決で、透真が料理をする場面などの選曲例がある。宮葉氏の追加発注が適切であったことが以上の選曲例からも分かると思う。追加録音時にM39のメロを用いて、再度ロックテイストのスローテンポの楽曲にしたのが、M128である。「正解はこのテンポということです」とは高木氏。また、それぞれ「スーパー戦隊の劇伴は、曲数が多いので、できるだけ同じメロを増やしたほうが印象が良くなりますね」(宮葉氏)、「追加録音で再び活躍の場をいただけるのは有難いですね」(高木氏)と語っている。選曲例としては、#22でデメラン・ヤトミスに苦戦するパトレンエックスの前にルパンレッド＆パトレンエックスが現れる場面から、パトレン2号とパトレンエックスが金魚鉢を内側から破壊する場面がある。他に44で、ノエルが東雲悟の正体を暴く場面での選曲も忘れ難い。
18.It's Showdown!
(1)M1(快盗チェンジ!) (2)M39(大逆転!) (3)M111(合体!二つの力)
快盗戦隊ルパンレンジャー、警察戦隊パトレンジャー、今、二つのスーパー戦隊が互いの手を取り合い、最後の戦いに挑む! M1は「快盗戦隊のテーマ」を用いた快盗チェンジの音楽。M1Fullとはコーダが異なり、ややおとなしめ。#4の名乗り、#40ではスーパールパンレッドがジュゴーン・マナッティからコレクションを盗る場面、#43では変身～名乗りで使われているが、直後がCMなのでコーダが短いM1を選んだものと思われる。M39はオーケストラ主体による熱い戦いのテーマで、「快盗と警察、どちらも気持ちが盛り上がったときに使える曲です」とは宮葉氏。選曲例としては、#2で快盗と警察がギャングラーと戦う場面が初出で、#30ではルパンカイザースプラッシュマジックの場面、#44ではパトレンジャーがナリズマ・シボンズと戦う場面と、快盗や警察、等身大と巨大戦の区別なく、用途に応じて様々な場面で使われている。M111は、主題歌「ルパンレンジャーVSパトレンジャー」のマーチアレンジ曲。「第1回録音にはなかったメニューですね。新しく登場するグッドクルカイザーVSXが、グッドストライカーとエックストレインに、快盗と警察のVSビークルが合体する設定だったので、それであるなら新しいメロディを作るより、主題歌を使えばいいかなと。元々二つの歌が“合体”した曲ですからね」とは宮葉氏。また発注の狙いとしては、「ボーカル曲で違うメロを一緒に歌うのはあまりないけど、器楽曲で違うメロが絡み合うのはあることなので、それを高木さんのアレンジで聴いてみたかった、というのもあります」(宮葉氏)とのことだが、「どっちも自分のメロなので書いていて面白かったですね。ただ、どちらかの楽器を強くすると片方が弱くなるので、どちらも主役であることは念頭におきました」と高木氏。劇中ではグッドクルカイザーVSXの初登場回#22で初選曲。ここでは合体シーンにM33を使い、ライモン・ガオルファングとのバトルから撃退するまでにM111を選曲するという、主題歌アレンジ2連発の熱い選曲に是非耳を傾けて欲しい。また#37では、グッドクルカイザーVSXの合体シーンでも使われている。
19.「ルパンレンジャーVSパトレンジャー」(インストルメンタルTYPE-TS)
トラック19は、勝利フラグをイメージし、OP主題歌のインストをフルコーラスで収録。「VSサウンドコレクション2」TR1収録のインストとは異なり、男声パートをトランペット、女声パートをサックスでMIXしたバージョンとなる。最終回の予告編で、短く編集して使われている。
20.それぞれの明日へ
(1)M132(大団円)
トラック20は、最終回ラストシーンをイメージした大団円の音楽。果たして、ギャングラーを倒した後の快盗と警察はどうなるのか……? 「VSサウンドコレクション3」を締め括るのは、テレビシリーズの劇伴では最後の曲となるM132。「快盗戦隊のテーマ」と「警察戦隊のテーマ」を散りばめた壮大なフィナーレで、原曲はどちらもマイナーだが、ここではメジャーに変換している。「元は全く別々の曲調ですが、破綻することなく上手く纏められたのではないでしょうか。やはり最初にしっかりしたメロディを作っておくことが大事で、後はいかようにも料理できます」とは高木氏。劇中では#42のラスト、デストラを撃退した警察がジュレで祝杯をあげる場面で選曲された他、最終回、魁利達3人の願いがついに叶い、兄たちと再会するシーンで使用されている。
『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー VSサウンドコレクション4』BGM解説
-
1.名探偵エルロック・ショルメ
(1)映画M1 (2)映画M2 (3)映画M3
トラック1～12は劇場版『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー en film』のサウンドトラックとなる。劇場版はテレビシリーズのモチーフを使いつつも、全編尺に合わせて作曲する「フィルムスコアリング」の手法が採られており、画と音楽の関係性としては、もっとも理想的なものといえるだろう。さて、1曲目となる映画M1は、物語冒頭、空港に報道陣が集まるシーンの音楽。東映マークには音楽が入らず、飛行機がカメラ頭上を通過していく本編の1stカットより音楽がインし、スネアのリズムがテレビシリーズとは異なる、劇場版ならではの緊張感を生み出している。映画M2は、イギリスから来日した名探偵、エルロック・シャメルのテーマ音楽。通称、「エルロックのテーマ」は劇中、様々な形に変奏され、劇中ではひとつの軸になる楽曲として設定されている。「事前にシャーロック・ホームズの映画とか向こうの探偵ものをいくつか観たのですが、結局のところ何も参考にならなくて(苦笑)。最終的に英国紳士っぽさを出すにはクラシカルで上品なサックスかなと思い、何回か考えては捨てて……を繰り返して現在の形に落ち着きました。また、後々正体バレした際に、悪側の曲としても使えないと具合が悪いので、その辺りも当然踏まえてモチーフを書きました」(高木氏)。映画M3は、エルロックが一人の記者に「君はギャングラーだね」と問い、周囲が騒然となる場面の音楽で、高弦と低弦が交錯してサスペンスを高める。
2.「ルパンレンジャーVSパトレンジャー」(Movie Edition)
(1)映画M4
トラック2は、タイトルロールの立ち回り用に、宮葉氏が編集を手掛けた、主題歌「ルパンレンジャーVSパトレンジャー」のMovie Edition。画が快盗からはじまるのを受け、「ルパンレンジャー、ダイヤルを回せ」を合体させているのが既出のバージョンとは大きく異なる。まずは快盗の出現から、変身前の圭一郎たち警察3人の立ち回りと変身、そして快盗の変身までが「ダイヤルを回せ」で、ルパンレッドの「あんたのお宝いただくぜ!」を受けてのタイトルバックから「ルパンレンジャーVSパトレンジャー」へと繋げている。特に「ダイヤルを回せ」のカラオケやインストを駆使した前半部分は必見必聴で、「カラオケだけでも豪華ですし、サックスのアドリブを3人の立ち回りに巧くフィーチャーしてもらえたと思っています」とは高木氏。また「ルパンレンジャーVSパトレンジャー」は尺に合わせて1コーラスハーフに編集、繰り返しを2番から持ってきている。
3.盗まれた快盗
(1)映画M5 (2)映画M6
異世界へ連れ去られるルパンレッドとパトレン1号。そして待ち受けていたギャングラー幹部たち。突如、窮地に追い込まれた二人は……? 映画M5は、戦いの模様をビルの上から見下ろす謎の怪人が、攻撃を仕掛ける場面に付けられた音楽で、よく聴くと「エルロックのテーマ」の変奏曲であることが分かる。映画M6はデストラとゴーシュ、ウィルソンが、ルパンレッドとパトレン1号を包囲する場面の音楽で、低弦が奏でるのは「ギャングラーのテーマ」。
4.4人目の警察官
(1)映画M7 (2)映画M8
謎の怪人の前に現れる高尾ノエルが、ルパン(パトレン)エックスに変身して戦いを挑む! 映画M7は、ノエルの登場音楽で、変身アイテムのSE音声や、続くエックスの活躍にウェイトが置かれるため、派手になり過ぎない曲が付けられている。映画M8は、「エックスのテーマ」で、モチーフ自体は共通だが、追加録音のM101とは別スコア。演奏面ではM101とは異なり、リズム隊が生で入っているので豪華な演奏を聴かせてくれる。なお曲がブツ切り的に終わるのは、エックスの頭上目掛け、突如、隕石群が落下してくるカットに合わせてあるため。
5.次元を超えた大ピンチ
(1)映画M9 (2)映画M10
異次元世界に連れ去られた圭一郎と快盗衣装の魁利。二人はどうにかギャングラーの手を逃れたものの、あわや崖下に転落しそうに……。その頃、国際警察では行方不明となった圭一郎の身を案じていた。映画M9の冒頭、約9秒辺りまでは、ビルから転落していくエックスを謎の怪人が見下ろす場面。続いて異次元世界での戦いの音楽になり、約24秒辺りで静かな曲調に変化し、木管やホルンが奏でるフレーズは、ルパンレッドがパトレン1号に協力を持ちかける下りに合わせてある。再び約39秒辺りから激しい曲調に戻り、3怪人の繰り出した攻撃を受けたレッドと1号が爆風に覆われていく。そして、約53秒辺りからのコーダは、ゴーシュの「跡形もなく消し飛んじゃったのね」のセリフから3怪人が立ち去って行くまで。映画M10はピアノとストリングスが奏でる心情曲で、前半は崖にぶら下がった魁利と圭一郎の場面に付けられ、目覚めた圭一郎の頬に魁利の血が落ち、圭一郎がそれをぬぐった手を見て魁利の血だと分かる場面から音楽がイン。後半はリズムセクションが加わり、約1分28秒辺りから、戦力部隊のオフィスで圭一郎を心配する咲也、つかさ、ジム・カーター、ヒルトップの場面に当てられ、画面手前、エルロックが映るカットで音楽は幕を閉じる。
6.休戦協定
(1)映画M11 (2)映画M12
それぞれに救出計画を練る国際警察、ジュレ。そして異次元世界で、焚火を挟んで語り合う魁利と圭一郎。二人は休戦協定を結ぶことに。映画M11の冒頭は再び「エルロックのテーマ」で、「エルロック関連では、ちょうどモチーフを考えていたこともあり、この場面が一番時間をかけました」とは高木氏。エルロックが自ら囮になることを申し出る場面から音楽がインし、約37秒辺りから「エルロックのテーマ」とクロスフェードする形で現れるのがジュレの場面の音楽で、ジャジーな曲調でミュートトランペットが「快盗戦隊のテーマ」を奏でる。映画M12は、魁利と圭一郎の音楽で、テレビ用M17(※「警察戦隊のテーマ」の心情アレンジ曲)をベースに新しく書き下ろされている。「ここは圭一郎がメインなので警察のメロディです」(高木氏)とのことだが、「今の俺の全部だよ」と圭一郎の問いに魁利が答える場面ではストリングスが「快盗戦隊のテーマ」を奏で(※約1分26秒辺り)、再びオーボエが「警察戦隊のテーマ」を奏でる、その裏ではストリングスが「快盗戦隊のテーマ」を奏で(※約1分52秒辺り)、二人の気持ちの変化が音楽面でも表現されている。
7.ジャックポッドストライカー登場
(1)映画M13 (2)映画M14 (3)映画M15 (4)映画M16
圭一郎と魁利の前に現れるジャックポッドストライカー。一方、現実世界では美術館で警戒中のつかさが快盗からのメッセージカードを受け取る。そして再び異次元世界では魁利と圭一郎がドグラニオ邸に忍び込もうとしていた。4曲から構成されるトラック7だが、まず映画M13は、木々が揺れて圭一郎と魁利の間に緊張感が走る脅かしの音楽。続く映画M14は、ミュートトランペットが奏でるメロディがどことなくユーモラスな「ジャックストライカーのテーマ」。高木氏によれば「このモチーフは後々、グッドストライカーとジャック～のモチーフにし、後の戦闘シーンでも使っています」とのことで、そちらは映画M24にて確認して欲しい。映画M15はピアノとストリングスによるサスペンス曲で、博物館でメッセージを受け取ったつかさ、それに驚く咲也、遠巻きにそれを見張る透真と初美花の場面、そしてシーンを跨いで、ドグラニオの屋敷前に佇む圭一郎と魁利の場面にまで付けられている。映画M16はドグラニオ邸への潜入シーンの音楽。メニュー表には「M41風に」とあり、テレビシリーズのモチーフを流用すれば、それはそれでテレビとの同一世界感が出るわけだが、邸宅の豪華なロケーションも踏まえ、高木氏によって全く別個の発想に基付いた音楽が作曲されている。約1分43秒辺りから曲調がシリアスに変化し、ドグラニオの場面になり、さらに約1分55秒から博物館の場面になり、ドグラニオのセリフからエルロックの正体が観客に向けて明かされ、「エルロックのテーマ」が怪しく奏でられる。最後大きく盛り上がる箇所は圭一郎の「なんだと!」に合わせてある。
8.脱出作戦 開始!
(1)映画M17 (2)映画M18
ドグラニオ達に見つかり、危機的状況の中、戦わざるを得なくなる魁利と圭一郎。現実世界ではウィルソンの前に快盗が現れ、快盗と警察が図らずも共闘する形となるが……。映画M17は邸宅に潜入していた圭一郎と魁利が発見されるシーンの音楽で「ギャングラーのテーマ」を用いた危機感溢れる楽曲。約39秒辺りで金管が再び「ギャングラーのテーマ」を奏でる箇所から、現実世界に現れたウィルソンの場面。映画M18は、ウィルソンの前に現れる快盗二人の場面の音楽で、M3風に新規に用意された「快盗戦隊のテーマ」。鉄板の1曲だが、つかさが「非常事態だからな」と言う場面ではサックスが快盗モチーフを奏でる裏で、ストリングスが「警察戦隊のテーマ」を奏でており、両者の共闘を音楽面からも表している。
9.燃やせ!紅の絆
(1)映画M19 (2)映画M20 (3)映画M21
名探偵・エルロックの正体はギャングラーの怪人だった! 絶体絶命のピンチに追い込まれる快盗と警察。異世界では、圭一郎と魁利が協力して現実世界へのゲートに飛び込む。映画M19は、ストリングスの序奏から、金管が奏でるのが悪の「エルロックのテーマ」。また約22秒から曲調が静かになり、異世界の魁利と圭一郎の場面になるが、「ピンチに陥った圭一郎と魁利が、柱に隠れる辺りの二人の演技が抜群にいいですね」とは高木氏。続いて「特に囮になって走って行く圭一郎がカッコいいんですよ。画に引っ張られたんでしょうね。自分で思っていた以上に力の入った音楽を書くことができました」とも語っており、約45秒辺りから展開されるアクション曲に続く、魁利が開けたゴーシュの金庫に、圭一郎がジャックポッドストライカーを突っ込むくだりでは、主として警察側のモチーフにウエイトが置かれている。映画M20は、魁利がコレクションを拾うか否かで逡巡する場面の音楽。短い曲だが、対象年齢が低めに設定されている本作では、音楽面で心情を分かりやすく伝えることもまた重要である。映画M21は変身解除した快盗と警察にエルロックがトドメの一撃を繰り出す曲で、悪側優勢ということもあり、「エルロックのテーマ」がメインとなる。「お行儀が悪い感じのアレンジですが、映画M2と同じメロディだと分かってもらえると思います」とは高木氏。
10.ルパンレンジャーplusパトレンジャー
(1)映画M22 (2)映画M23 (3)映画M24
異世界から現実へ飛び出してくる魁利と圭一郎。2大スーパー戦隊が力を合わせてギャングラーと戦う! トラック10は、快盗と警察モチーフを散りばめた聴きどころ満載の3曲。映画M22は、魁利と圭一郎が現実世界に戻って来る場面の音楽。高木氏が、テレビ用M13をベースに新しく書き下ろしており、楽曲自体は警察モチーフがメインだが、魁利が「迷子になったらおまわりさんに頼るのが一番ってね」と言う場面では、さりげなく快盗モチーフが奏でられている(※約15秒辺りのストリングス)。映画M23は、連続して描かれる快盗チェンジと警察チェンジの場面に合わせた音楽。前半の快盗チェンジは、宮葉氏がドラムソロのM1Full-2を用いたテレビシリーズの選曲フォーマットを新曲＆新録で再現しており、「これを再現したいので、ドラムを呼んだと言っても過言ではありません」(宮葉氏)と拘りを述べる。劇場版は基本スタジオミュージシャンだが、ドラムは第1回録音と同様、Lowland Jazzからドラムの大場俊が参加している。一方、警察チェンジのほうは「途中でいきなりジャンルは変えられないので、ジャズのまま警察モチーフになっています」(高木氏)とのことで、TV用M11とは全く異なる楽曲に仕上げられているが、ジャズで警察モチーフは両者の共闘を考えれば、納得の音楽設計である。楽曲としては、サックスが奏でる警察モチーフと掛け合うアドリブのピアノも聴きどころで、こちらLowland Jazzの千葉岳洋による演奏で、快盗としてのジャジーなカラーを打ち出している。映画M24は、本作の劇伴で最も尺が長いラス立ち用の音楽で、警察と快盗の二つのモチーフから成る。「いつもなら立ち回りに主題歌を付けるところですが、今回は冒頭で使うことになったので、それ用の劇伴を発注しました」(宮葉氏)。「完全に画合わせで、聴いてもらえれば、快盗と警察の活躍シーンを感じてもらえるかと思います」(高木氏)。また、約3分35秒からは、ややコミカルになるが、これは映画M14のモチーフの変装で、グッドストライカーとジャックストライカーの掛け合いからパトレンU号へと変身まで音楽が付けられている。
11.初披露!ルパントリコロール
(1)映画M25 (2)映画M26 (3)映画M27
ルパントリコロールがパトレンU号と共にエルロック＆ウィルソンを粉砕するが、ゴーシュが、コレクションの力で二大怪人を巨大化させる。周囲は闇に包み込まれ、快盗と警察はガッタイムへ。映画M25は、劇場版の新キャラ・ルパントリコロールの音楽。#3のルパンレッド分身に付けられた、テレビ用M34の選曲に基づき、尺に合わせて新しくスコアが書き下ろされている。演奏のニュアンスも異なり、「エレキギターも第一回録音はLowland Jazzのメンバーでしたが、今回は今泉さんで、その辺りの違いも面白いですね」とは高木氏。映画M26はゴーシュの巨大音楽で、こちらもテレビ用M20dを用いた選曲パターンから発想された新曲で「映画用だから、コーラスの後ろに和音を重ねてもらって豪華になりました」とは宮葉氏。映画M27は、怪人の巨大化音楽で、オーケストラのトゥッティが「エルロックのテーマ」を禍々しく奏でる。
12.爆裂!ダブルガッタイム!!
(1)映画M28 (2)映画M29 (3)映画M30
巨大化した2怪人に立ち向かうのは快盗＆警察ガッタイムで誕生したルパンレックス＆パトカイザー。トラック12はクライマックスの巨大戦と、フィナーレの音楽。映画M28は、巨大戦用の音楽で、挿入歌「快盗ガッタイム!ルパンカイザー」、「警察ガッタイム!パトカイザー」のモチーフが散りばめられている。イントロの出だしは「快盗～」、それぞれがガッタイムを終えるところは「警察～」のモチーフが変奏され、続く個々のバトルではルパンレックスはサックス、パトカイザーはホルンによってモチーフが奏でられ、途中、約1分4秒辺りから曲調が変化し、それぞれのコクピット内のジャック、グッディの描写になり、約1分16秒辺りは「君の協力が必要だ」とエルロックがウィルソンに協力を持ちかける場面に合わせて「エルロックのテーマ」となり、危機感を煽る。映画M29は、2大ロボの必殺技用の音楽で、主題歌「ルパンレンジャーVSパトレンジャー」のマーチアレンジ曲となる。途中、約2分13秒辺りで、それぞれの劇伴モチーフになるが、ここは2大ロボが、前後から挟み込んでエルロック＆ウィルソンにとどめの一撃を食らわし、爆発炎上する下りに合わせてあり、「黒バックですれ違う圭一郎と魁利がとてもカッコいいので、盛り上がるように一度劇伴のモチーフに変えてみました」とは高木氏。そして2分28秒辺りから再び主題歌マーチに戻って終わる。なお、怪人を倒した後の警察、快盗それぞれのコクピット描写には、主題歌の警察パート、快盗パートを当てるといった細かい音楽設計にも注目。映画M30はエピローグの音楽で、「杉原(輝昭)監督から“ラストはオケのジャン!じゃなくて、小粋に終わらせたい”とのことでジャズで発注しました」とは宮葉氏。「映画の終わり方としては珍しいかもしれませんが、このくらいのタッチのほうが作品的にもオシャレな感じですし、物語自体もまだまだ続く感じを出せたんじゃないかと思います」(高木氏)。バックショットから始まる警察の3人の場面は、サックスが「快盗戦隊のテーマ」、裏でフルートが「警察戦隊のテーマ」を奏で、続いて高所から警察を見下ろす快盗3人の場面はトランペットが「ルパンレンジャー、ダイヤルを回せ」を朗々と奏で、魁利と圭一郎の二面割となるラストカットは主題歌メロで、対旋律による楽曲を上手く活かした終わり方となっている。
13.ビストロ店内音楽
(1)Bistrot・Jurer1 (2)Bistrot・Jurer2 (3)Bistrot・Jurer3
トラック13～24は、EXTRA音楽及び主題歌、挿入歌のインスト集となるが、まず本トラックには、ビストロ・ジュレで流れている店内音楽3種を収録。「クランクインして第1話の時点でジュレのシーンが3回あり、さらに第3＆4話のホンを読んだら、割とジュレの楽しい場面が多く、そうなるとM6が延々流れることになるし、そこに警察が来たらどうなるんだ?と。それでメニュー打ち合わせの際に監督に“有線でBGMが流れている設定はどうですか?”と提案して店内BGMを作ることにしました」とは宮葉氏。なお作曲は高木氏ではなく、まついえつこ氏が担当。3曲中、(1)と(2)がランチ用、(3)はディナー用をイメージして発注してあるが、実際にはジュレでディナー営業シーンは無く、#47の咲也と初美花がデートするレストランの店内音楽として使用されている。
14.「秘めた想い」(ピアノソロ)
トラック14は、#17「秘めた想い」に出てくる、同名タイトルのピアノ曲を収録。当初からキャラソンを作ることが決まっており、まずは高木氏より、ポップス系とクラシック系の2種類のデモが作られ、後者が採用されたという。以下、宮葉＆高木両氏に楽曲について語ってもらった。「シナリオと渡辺(勝也)監督の意向で、クラシカルなほうになりました。ドラマ的にもウィーンにピアノ留学へ行く話ですから、弾くのはやはりクラシックですよね」(宮葉氏)。「圭一郎がクラシック好きで、どういう曲がいいのかは、渡辺監督ともお話させていただき、イメージを落とし込んでいきました。またクラシカルで上品な雰囲気を出しつつ、歌える範囲の音域を考慮しつつ、その辺りのバランスでメロディを作りました」(高木氏)。劇中では、計4回使用されており、まずは、赤来末那が自宅で「秘めた想い」が収録されたレコードを再生する場面、続いて末那の想いが通じない圭一郎を初美花が説得する場面、そして、夢の中で初美花が歌う場面では、ボーカルと被せてイメージ的に選曲。最後は末那がイヤフォンをして携帯音楽プレーヤーで聴く場面から、そのまま圭一郎と初美花の場面に続けて選曲されている。引き続き、キャラソン版の「秘めた想い」についても高木氏に語ってもらった。「歌のアレンジは一度、POPSっぽいアレンジもしてみたのですが、“シンプルなほうがいいだろう”との話になり、クラシック的な書法で、シンセですがストリングスを被せた程度のシンプルな方向性で落ち着きました。ですから、あくまでドラマメインで考えたということですね。ボーカルについても、工藤遥さんがステキに歌ってくださって、とても満足しています」(高木氏)。キャラソン自体は「快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー VSコンプリートソングコレクション」、「同 VSソングコレクション」、「同 ミニアルバム3」のいずれかの盤で聴くことができる。
15.「ルパンレンジャー、ダイヤルをまわせ」(インストルメンタル2)
トラック15は、「VSサウンドコレクション2」のTR5とは異なり、サックスによるインストをフルコーラスで収録。#7では、快盗チェンジからメルグ・アリータを撃退する場面にかけて選曲された。
16.「Chase You Up!パトレンジャー」(インストルメンタル2)
「ルパンレンジャー、ダイヤルを回せ」と同様、2種類あるパトレンジャーのテーマソングのインスト。本トラックでは「VSサウンドコレクション3」のTR1とは異なり、サックスメロをフルコーラスで収録している。
17.「Searching for Truth」(インストルメンタル)
トラック17はパトレンジャーのアクションソングのインストで、シンセメロをフルコーラスで収録。作曲はYOFFY、編曲は大石憲一郎が手掛け、『特捜戦隊デカレンジャー』のサイキックラバーが歌う「警察ソング」という布陣も実に面白い。インストは未使用だが、歌入りは#33やTTFCの配信作品『警察戦隊パトレンジャー Feat. 快盗戦隊ルパンレンジャー ～もう一人のパトレン2号～』の後編のラス立ちで選曲された。なお、この曲と「ルパンレンジャーHere We Go」の初出である「ミニアルバム3」は、実は番組タイトルに合わせ「ZETKI VS サイキックラバー」というコンセプトで制作され、作詞、作曲、編曲ともそれぞれのバンドに一任されている。「『忍び込む3人組』で戦隊デビューした高取ヒデアキ。『宇宙の警察』で戦隊デビューしたサイキックラバー。君はどっちを応援する!?って事です。その甲斐あって、それぞれのバンドの個性が出た楽曲になっているのではないでしょうか」(宮葉氏)。
18.「快盗ガッタイム!ルパンカイザー」(インストルメンタル)
吉田達彦が歌う挿入歌のギターメロをフルコーラス収録。劇中では、ルパンカイザー初登場回となる#2の巨大戦で、ロボの登場からガラット・ナーゴを撃退する場面にかけて使われた。
19.「警察ガッタイム!パトカイザー」(インストルメンタル)
トラック18に続き、今度はパトレンジャー側のロボ・パトカイザーの挿入歌のインスト。Project.Rとしては初参加となる、吉窪司が歌うボーカルパートをギターメロに置き換えて、フルコーラスで収録している。
前トラックの「快盗ガッタイム!ルパンカイザー」は劇伴のM8、「警察ガッタイム!パトカイザー」はM19と共通メロを持ち、2曲とも高木氏が作曲はもちろん、編曲を担当している。ロボソングは劇中での選曲の都合上もあり、主題歌の直後には用意されるが、「ルパンレンジャーVSパトレンジャー」、「ルパンレンジャー、ダイヤルを回せ」「Chase You Up!パトレンジャー」の3曲を手掛け、さらにロボ歌2曲と、作業的にはかなり苦労したという。「主題歌の3曲を終えて、ロボの歌2曲は1月の前半にレコーディングしたのですが、ロボ歌はカロリーが高く、音の密度も濃いのでアレンジがまた大変で(苦笑)。それで時間がかかって劇伴を書く時間がゴリゴリと削られていくという……」と苦労を述べている。しかしながらひとりの作曲家が手掛けることによる統一感は大きく、オンエアの時点で歌もの5曲に劇伴といった密度の濃さは、それこそ渡辺宙明の時代以来ではないだろうか。
20.「哀愁のコレクション」(インストルメンタル)
『手裏剣戦隊ニンニンジャ―』の主題歌歌手・大西洋平が歌う挿入歌のインストで、ギターメロをフルコーラスで収録。作曲はRaizo.W、編曲は中畑丈治が手掛けている。
21.「ビシバシ体操」(インストルメンタル)
吉田仁美が歌う挿入歌のインスト。1、3コーラスをハード、2コーラス目をコミック音のメロに編集して収録している。作編曲の三浦誠司は、『非公認戦隊アキバレンジャー シーズン痛』の第1話のED「スーパー戦隊☆非公認応援歌」の作曲者であり、公認様ではこれが初仕事となる。
22.「恋はmoon night mystery」(インストルメンタル)
透真のトラウマエピソード、#27「言いなりダンシング」のために作られた挿入歌インスト。作曲は歌菜子、編曲は高藤大樹で、ここでは1コーラス目とハーフをオルガン、2コーラス目をバイブに編集して収録。劇中では歌入りと編集して1コーラス目のオルガンメロを使用している。なお、池田彩による歌入りは、「快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー VSコンプリートソングコレクション」で聴くことができる。
23.「ルパンレンジャーVSパトレンジャー」(アバン)
OP主題歌のアバン部分のみを収録。Mナンバーは振られていないが、作曲はもちろん高木氏。アバンを編集したTVサイズは「VSサウンドコレクション1」に収録している。
24.「ルパンレンジャーVSパトレンジャー」(インストルメンタルTYPE-SS)
トラック24は、「VSサウンドコレクション2」のTR1、「3」のTR19に続いての主題歌インストで、男声、女声パート共にサックスが奏でるバージョンをフルコーラスで収録。劇中での選曲例はないが、短く編集して#7、11、20、28、35の各話で、次回予告編の音楽として使われている。
－ボーナストラックー
25.快盗戦隊ルパンレンジャーのテーマ
トラック25は、主題歌シングル限定盤に収録された「快盗戦隊ルパンレンジャーのテーマ」で、M1とM2の編集テイクとなる。「VSサウンドコレクション1」のTR8のM2の解説で書いた通り、M1とM2は音楽メニューに照らし合わせて割り振ったもので、これが本来の形となる。
26.警察戦隊パトレンジャーのテーマ
トラック26には、主題歌シングル限定盤に収録された「警察戦隊パトレンジャーのテーマ」を収録。既出盤では公表されていなかったが、音楽メニュー上のM12(警察戦隊のテーマ)がそのまま「警察戦隊パトレンジャーのテーマ」に該当する。なお、「快盗戦隊ルパンレンジャーのテーマ」のM1＋M2に倣えば、M11＋M12になるところだが、曲自体の成り立ちが異なるため、前述した通りになる。元々は「快盗戦隊のテーマ」として提出されたデモの1曲で、宇都宮プロデューサーがこれを気に入ったことから「警察戦隊のテーマ」への採用が決まった。実際にアレンジする上では「哀愁漂うメロディで、これをジャズコードでやると既出の作品を連想してしまうところですが、デジタルの要素を加え、コードを変えて刑事ドラマ風にすることで成立したと思います」とは高木氏。高木氏の師匠の羽田健太郎は、80年代に人気を博した刑事ドラマ『西部警察 PART-II(III)』の音楽でも知られているが、どこか師匠の影響を感じるのは筆者だけだろうか。なお、サックスが入っているのは元のデモの名残りで「外すと成立しない」(高木氏)と、警察関連の楽曲では唯一、Lowland Jazzが演奏している。「警察チェンジ!」のM11とは演奏が異なるので、聴き比べてみると面白いだろう。劇中では#2でポーダマンと戦う場面が初出。以後、定番曲としてパトレンジャーの活躍シーンで幾度となく選曲されている。また#47ではゴーラムとの巨大戦で、パトカイザーからサイレンパトカイザーが撃退する場面にかけても選曲された。
楽曲解説は以上となるが、その締め括りとして、作曲を手掛けた高木洋氏のコメントを紹介する。
スーパー戦隊シリーズの劇伴は、羽田健太郎先生の元で手掛けた『(爆竜戦隊)アバレンジャー』を皮切りに三度目になりますが、毎回新しいチャレンジをさせてもらえるのが作曲家としては、やり甲斐を感じるところですね。初めて単独で手掛けた『シンケン』ではオーケストラ＋和風テイストへの挑戦があり、今回の『ルパパト』では、ビッグバンドによる劇伴に取り組みました。過去にコンサートアレンジの仕事ではありましたが、自分の作品、それもこんなにガッツリとビッグバンドを書くのは初めての経験です。さらには主題歌と劇伴の両方を担当させていただきましたが、今の時代、なかなかできることではありません。非常に得難い経験だったと思います。『ルパパト』の一年を通じ、数多くの曲を書きましたが、様々なメロディが散らばっています。そういったところを感じてもらえれば嬉しいですね。
末尾に杉原輝昭監督による最終組(#49「快盗として、警察として」／#50「永遠にアデュー」／#51「きっと、また逢える」)の選曲リストを掲載する。いずれの楽曲も「VSサウンドコレクション1」＆「同 2、3、4」に収録されているので、下記を参照しつつ、名シーンを追体験してもらえればと思う。また各自でリストの順番で編集すれば、また違った味わいを感じることができるだろう。
●#49「快盗として、警察として」(脚本：香村純子 監督：杉原輝昭)
・前話振り返り M63／出現!
・ジュレの圭一郎「すまん、先に行ってくれ」～快盗の新たな隠れ家 M57／仲間割れ
・ノエルがドグラニオの金庫を説明 M40／不安
・ドグラニオとザミーゴ M123／迫る足音
・OP アバン＋「ルパンレンジャーVSパトレンジャー」TVサイズ
・ノエルの胸倉を掴む咲也 M110d／夕陽に吠えろ(弦のみ)
・魁利と圭一郎の対面 M126／絶望
・自分の不甲斐なさに怒り、泣く圭一郎 M17／犠牲者の思い
・大量失踪事件の犯人がザミーゴだとノエル M59b／対立(ドラム抜き)
・(CM明け)ドグラニオ巨大化 M117／ドグラニオ・ヤーブン怒る
・氷漬けの勝利、彩、詩穂に動揺するルパンレンジャーが窮地に M37／最大のピンチ
・焼け野原から立ち去るドグラニオ M67／ショックA
・(CM明け)昏睡状態の初美花と透真～怪我を押して隠れ家を飛び出す魁利 M58／孤独
・夜を徹して単身、ザミーゴを探す魁利 M60／怒り
・「俺がいる」と魁利に協力を持ちかける圭一郎 M110／夕陽に吠えろ
・魁利と圭一郎の別れ M61a／思いをつなげて!(ルパンver.)＋M61b／思いをつなげて!(パトver.) ※M61aの前半とM61bの後半を1曲に編集して選曲
・ザミーゴの前に現れる魁利 M118b／黒幕(リズム抜き)
・戦う二人(本編ラスト)M62／襲撃! ※途中から
・予告編 M113／最大の決戦
●#50「永遠にアデュー」(脚本：香村純子 監督：杉原輝昭)
・前話振り返り～ルパンレッドVSザミーゴ M29／巨大ギャング大暴れ
・サイレンパトカイザー＆エックスエンペラーガンナーの巨大戦 M30／大災害
・パトレンエックス、サイレンパトカイザーを見て～透真と初美花が病院を脱出するまで M57／仲間割れ
・透真と初美花の前に現れる咲也とつかさ～圭一郎とノエル M126／絶望
・想いを伝える初美花と透真～VSチェンジャーを渡す咲也とつかさ M127／想いをつなげて
・咲也「2年前に出会いたかった」～VSチェンジャーを手に出て行く初美花と透真 M53b／友情(シンセver.)
・CM明け、ザミーゴの前にピンチの魁利 M119／ザミーゴの本気
・快盗の3人～ノエルの登場 M7a／失われた、あの日
・ビークルを奪われたことを謝罪する圭一郎、続いて初美花と咲也も謝罪～出撃命令を受ける3人 M15／聞き込み
・ザミーゴの前に現れる快盗4人 M3／快盗戦隊参上!
・快盗チェンジ M1Full-2／快盗チェンジ!(Long ドラムのみ)、M1／快盗チェンジ!、M2／快盗戦隊のテーマを編集
・ドグラニオの前に現れる警察の3人～警察チェンジ～バトル M12／警察戦隊のテーマ
・ザミーゴとの戦い M105／ルパンレンジャーPOWER UP
・氷塊と化すルパンエックス M23／破壊開始
・ルパンレンジャー側の逆転 M101／エックス参上!
・ドグラニオ出現 M115／正義壊滅
・ルパンレンジャー、ドグラニオの金庫へ M56／後悔
・金庫内で戦うザミーゴとルパンレンジャー M28／激闘!巨大戦
・ルパンレッド「俺たちの勝ちだ」 M107／願いは一つ!
・元に戻る勝利、彩、詩穂 M125／奇跡
・喜び分かち合うルパンレンジャーの3人 M71a／ルパン・バラード
・ドグラニオの前に苦戦するパトレンジャー M117b／ドグラニオ・ヤーブン怒る(途中から)
・予告編 ルパンレンジャーVSパトレンジャー(インストルメンタルTYPE-SS)
●#51「きっと、また逢える」(脚本：香村純子 監督：杉原輝昭)
・前話振り返り M115／正義壊滅
・ドグラニオを対峙するパトレンジャー「ルパンレンジャーVSパトレンジャー」(カラオケ)
・ドグラニオVSパトレンジャー～金庫の中の魁利たち3人～ルパンエックスがダメージを喰らうまで M37／最大のピンチ
・ノエル変身解除 M120／新幹部登場
・CM明け ドグラニオの前に駆け付ける圭一郎たち4人 M117／ドグラニオ・ヤーブン怒る ※途中から
・宝物庫に次々と現れるルパンコレクション～力を失っていくドグラニオ M125／奇跡
・4人の警察チェンジ＆名乗り～ドグラニオとバトル M12／警察戦隊のテーマ
・台帳に最後のコレクションを収めた魁利、初美花と透真 M7a／失われた、あの日
・コレクションの力でドグラニオを圧倒するパトレンジャー M108／パトレンジャーPOWER UP
・金庫の開放を拒否するドグラニオ M118b／黒幕(リズム抜き)～M118／黒幕 ※2曲を編集して選曲。
・4人の脳裏に過る魁利たちとの思い出 M58／孤独
・魁利たちの思い出を胸に歩を進めるパトレン1号 M110／ 夕陽に吠えろ
・特別拘禁室に捕らわれたドグラニオ M64／愕然
・カーゼミーの前に駆けつける国際警察 M62／襲撃!
・快盗の参上 M107／願いは一つ!
・魁利たちの前に姿を現す謎の3人 M59b／対立(ドラム抜き)
・大切な人たちとの再会 M132／大団円
・快盗の名乗り～快盗チェンジ M1Full-2／快盗チェンジ!(Long ドラムのみ)～M1Full／快盗チェンジ! ※2曲を編集して選曲
・三つ巴のバトル「ルパンレンジャーVSパトレンジャー」 ※1コーラス＋ハーフに編集して選曲。
