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連載内容

オペラをこよなく愛する吉田光司さんがお送りするオペラ・ニュース月報。国内外の歌劇場の様々な話題、ニュースを活きのいいうちにご紹介。5分で世界のオペラ界が垣間見える、月1回更新の速報型ウェブ連載!
※煩雑になるので伝聞調を採っていませんが、基本的に実際に公演を観た人から得た情報を基に書いています。

プロフィール

吉田光司

早稲田大学法学部、および国立音楽大学声楽科卒。音楽関係の会社に勤務後、現在はフリーで活動中。オペラDVDの日本語字幕翻訳・制作、ノーツ執筆両方を手掛ける職人であり、また稀にNHK-FMのクラシック番組で案内役も務める。大のオペラ好きで、オペラと名のつくものは何でも聴くが、特にお気に入りはヘンデルとロッシーニ。イタリア、ペーザロで開催される「ロッシーニ・オペラ・フェスティバル」には十年来通い詰める常連である。オペラ公演は「自腹で聞くのが当然」の主義。和食の魚、ことに寿司と干物が好物。猫をこよなく愛する。

日本コロムビア

オペラ・コラム道場

オペラ・ニュース月報:マンスリー“オペラ”レポート/吉田光司

第7回 まだまだ第一線のデヴィーア ほか

 パリ・オペラ座、グノー《ミレイユ》

パリのオペラ座は、9月14日、ガルニエ宮でのグノー《ミレイユ》でシーズンを開幕。モルティエの後継としてこの夏よりオペラ座監督に就任したニコラ・ジョエルによる演出は、彼らしい保守的なものだが、装置担当のエツィオ・フリジェリオが作った舞台美術の美しさが話題になった。マルク・ミンコフスキの生き生きとした指揮はもちろん大好評。加えてタイトルロールのインヴァ・ムーラの瑞々しい歌声が好評だった。この上演に恵まれないグノーの隠れた傑作の真価を存分に発揮した上演となった。第2幕の二重唱の一部を映像で見ることができる。
第2幕の二重唱

 ルイゾッティ、サンフランシスコ歌劇場の音楽監督に着任

日本でもおなじみのニコラ・ルイゾッティが、このシーズンからサンフランシスコ歌劇場の音楽監督に就任。最初の公演はヴェルディ《イル・トロヴァトーレ》。評判は上々のようである。劇場のサイトで3分の抜粋映像が見られ、これだけでもルイゾッティの新鮮で流れの良い音楽が感じられる。マルコ・ベルティのマンリーコ、ディミトリ・フヴォロストフスキーのルーナ伯爵、そして今メキメキと頭角を現している米国のソプラノ、ソンドラ・ラドヴァノフスキー(これがサンフランシスコ歌劇場へのデビュー)が出演。デイヴィッド・マクヴィカーの演出は、メトロポリタン歌劇場のプロダクションと同じもの。
サンフランシスコ歌劇場のサイト

 ネーデルラント・オペラの《ユダヤの女》

近年、アレヴィの《ユダヤの女》が頻繁に上演されている。1999年10月に初演されたウィーン国立歌劇場での上演が話題となって以降、ケルン(演奏会形式)、メトロポリタン歌劇場、チューリヒ歌劇場、ロンドン(演奏会形式)、パリなどで上演されている。この9月4日は、アムステルダムのネーデルラント・オペラで、劇場監督のピエール・オーディの新演出で上演された。指揮のカルロ・リッツィとラシェルのアンヘレス・ブランカス・グリンはチューリヒで、エレアザールのデニス・オニールはロンドンで、ウドクシーのアニク・マシスはパリで既に《ユダヤの女》に出演している。これだけ出演者に経験者が多いというだけでも、いかに《ユダヤの女》が定着しているかが理解できるだろう。オーディは、舞台の現代化と伝統的な衣装を巧妙に使い分けることで、《ユダヤの女》が持つ問題提起の普遍性を際立たせている。ちなみに、2010年6月にはウィーンでさらなる再演が予定されている。

 スカラ座でのモンテヴェルディ

スカラ座の来日公演が終了した直後の9月19日、スカラ座では留守を預かるかのようにモンテヴェルディの《オルフェオ》が上演された。指揮はリナルド・アレッサンドリーニ。オーケストラは、スカラ座のメンバーとバロック音楽の専門奏者の混成だそうだ。演出はロバート・ウィルソン。彼独特の様式化された舞台が美しい。タイトルロールのゲオルク・ニグルは、オペラファンにはまだあまりなじみのない名前かもしれないが、実は日本でも一部で有名な人。1972年、ウィーン生まれで、1980年代にウィーン少年合唱団のソリストとして絶大な人気を博した。バリトンとなった今では、モーツァルトから現代の作曲家の作品まで、幅広く活躍している。上演にはさらにロベルタ・インヴェルニッツィ(エウリディーチェ、音楽、エコー)、サラ・ミンガルド(使者、希望)、フリオ・ザナージ(アポッロ)と、非常に豪華なキャストが配され、満場の聴衆を堪能させた。
スカラ座のサイトの《オルフェオ》ページ。FOTOのページで舞台写真が見られる。

 

 まだまだ第一線のデヴィーア

日本でも大人気のソプラノ、マリエッラ・デヴィーアは、今年の4月で61歳になったが、まだまだ現役第一線である。今年の夏は、マチェラータのスフェリステーリオ・オペラ・フェスティバルでヴェルディ《椿姫》に出演した後、来日して公開講座とジュゼッペ・フィリアノーティとのジョイント・コンサート。10 月にはベルガモでも《椿姫》を歌い、そのまま歌劇場引越し公演として日本でも2010年1月に歌う予定だ。その先の予定としては、3月にナポリでドニゼッティ《アンナ・ボレーナ》、5月にカリアリでベッリーニ《清教徒》、さらにアンコーナのムーゼ劇場でドニゼッティ《マリア・ストゥアルダ》を歌うそうだ(ただし現時点で正式に公表されているものはまだない)。今年4月の来日リサイタルでも、崩れのまるでない歌を披露してくれたデヴィーア、まだまだ活躍は続きそうだ。

第7回・了

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