PK shampoo

『PSYCHIC FES 2024』 After Interview

8月4日(日)大阪・心斎橋エリアの心斎橋BIGCATを始めとするライブハウス6会場にて、PK shampoo presents『PSYCHIC FES 2024』が開催された。初開催となった去年は東京・歌舞伎町エリアで行われ、大盛況だったこのサーキットフェス。今年はPK shampooの本拠地といえる大阪へと開催場所を移し、出演アーティストも増強。昨年に勝るとも劣らぬ大盛況ぶりを見せた『PSYCHIC FES 2024』について、主催者であるPK shampooの4人にたっぷり話を訊く10,000字インタビューを敢行。堂々たるライブアクトでフェスを締めくくった大トリのステージに込めた想いや、Secret Actとして登場した“ケンマーン”秘話や、いよいよ9月から始まる全国ツアー『「輝くもの天より堕ち」 Release One Man Tour“A Day to Remember”』への意気込みなど、貴重な話題が満載です!

偶発性とか化学反応とか、アクシデントさえ面白いと思える、 「狙い通りではないのが狙い通り」
ってところにたどり着けた

――まずは『PSYCHIC FES 2024』大成功おめでとうございます!
4人 ありがとうございます!
――サイキックフェス翌日に行われているこの取材。フェスを終えての率直な感想から聞かせて下さい。

にしけん まずはいっぱいの人が集まってくれてありがたかったのと。猛暑でしたけど、大きな怪我人も出ることなくて。自分たちのライブもたくさんの人が観てくれて嬉しかったですし。たくさん出演してくれたバンドのライブも、良い感じにお客さんが散らばってて。みんなが満足出来る1日になったんじゃないか?と思います。

カズキ 僕は7バンドくらい観たんですけど、みんなすごい良い演奏してて。ジャンルレスな対バンやったんですけど、どれもすごく盛り上がってたし、普段は交わらないバンドの化学反応や偶発性もすごく面白かったし。「これは負けられないぞ!」って気持ちにもなって、僕らもやり切れた感があったし、悔いなくドラムを叩くことが出来て。終わった後は、学祭の後みたいな達成感と寂しさみたいなものがありました。

カイト 僕もバンドのラインナップが良かったなっていうのが、すごくあって。個人的に『火影 -HOKAGE-』に好きなバンドが集中してたので、HOKAGEメインで観てたんですけど。その縦軸だけ見ても、すごい良いイベントになってるなと思ったし。それが各会場で起こってるって考えた時、「ホンマに豪華なフェスなんやな!」って改めて思いましたね。

――縦軸もですが、横軸で見ても全7ステージで同時多発的にすごいライブが行われていて。みんな、タイムテーブルとにらみ合いながら、「どれ見よう!?」ってものすごい悩んだと思いますよ。
カイト 俺らもそうでしたからね(笑)。そこも含めて、楽しんでもらえたと思います。
――では、ヤマトくん。率直な感想をお願いします!
ヤマト (小声で)……疲れたッスね。今日は朝9時まで呑んでて、明日もライブが控えてるんですけど、いまもスギム(クリトリック・リス)とのファンダンゴの加藤さんが呑んでるみたいで、そこに呼びつけられてて。パーティーはまだ終わってないです(笑)。
――声が完全な二日酔い&寝不足ですね(笑)。ヤマトくんは他のライブも観れたんですか?
ヤマト 僕はBIGCATでライブを見たり楽屋を回ったり、ANIMAのカラオケとかイベントっぽい感じのところを回ったり。朝、Pangeaでよさこいマンを見たり、ケンマーン(Secret Actで出演した、ヤマト以外のPK shampooメンバーによるハマヌーンのカバーバンド)をプロデュースしたり、トラブルシューティング的なことをやったり。一番、裏方っぽいことをやらせてもらってました。
――開催前から当日まで、お客さんには見えないところでのトラブルもたくさんあったと思いますが。開催直前に“山田亮一とアフターソウル”が出演出来なくなって。前日夜中に“Secret Act(by PK shampoo)”の出演発表がありました。
ヤマト “Secret Act”って大々的に出して、「何が来るんやろ?」って過度に期待されても困るので。「DJブースとカラオケブースが出来たよ」ってアナウンスと一緒に、ごちゃっと発表しました(笑)。本当はハマヌーンの代わりに、お笑いのハマカーンを呼ぼうとしたり、ハンマーカンマーでハリウッドザコシショウを呼ぼうとしたりしたんですけど、スケジュールが合わずで。
――わはは、一応オファーはしたんだ。

ヤマト 正式にオファーして、それなりのギャラも覚悟したんですけどダメで(笑)。だからって、他のバンドを入れようというのも、どっちにも失礼やと思って。「ここはケンマーンしかないんじゃないか!?」と。

にしけん ……それ思考、だいぶ狭ないですか?(笑)

ヤマト 決めた時は大スベリして、プチ炎上するくらいの覚悟もあったんですけど。僕のハッシュタグ付けたサイキックフェスのポストでは、“#ケンマーン”が一番伸びてるんです。

――思った以上の良い反応があったと。にしけんくんはケンマーンのアイデアが最初に出た時、どう思いました?

にしけん イヤでした(笑)。でも、山田亮一さんが出れんくなって、ヤマトさんやみんながいろいろ考えて。「ケンマーンで行こうや」って決まったのに、「やらない」って言えないじゃないですか?

カイト いや、めちゃめちゃ抵抗してたやん(笑)。

にしけん やると決まったからには、やるしかないけど。カイトとカズキには「ホンマにイヤや!」って言ってましたし、「なにか別の方法で流れへんかなぁ?」って直前まで思ってました(笑)。

カイト やるって決まったのがもう1週間も無いくらいで。そこから結構、ギリギリで色んなことが決まっていって。

カズキ やる曲が決まったのが4日前ですからね! で、3日前にスタジオ入って本番って感じで。ドラムがホンマ難しくて、僕も「当日飛ぶから、代打のドラムを探してくれ」って言うてました(笑)。

――でも、お客さんの反応を見る限り、やって良かったですよね?

カイト 結果、良かったです。スタジオも最後、楽しくなってきて。

カズキ にしけんが練習を重ねるごとに上達していって。最後、ステージで一番良い状態に持っていったんで、「こいつ、主人公やな!」と思いましたよ。

カイト そう、ライブの時は新しいアレンジとかも入れてたりして。

カズキ スタジオで弾けてなかったイントロも、本番では弾けてたもんな。

――なんだ、「ホンマにイヤや」とか言いながら、家でしっかり練習してんじゃないですか。
にしけん そりゃ、恥ずかしいもの見せるわけにはいかないですからね! “Secret Act”って書き方やと、お客さんめっちゃ来る可能性あるんやないかと思ってましたし。その状態で全然出来なかったら、一番ダサいじゃないですか? だから、ちゃんと出来るレベルには持っていかないとなと思って、結構練習しました。
――ヤマトくんはケンマーンのステージ見て、いかがでした?
ヤマト まぁまぁ、おおむね良かったんじゃないですか?(笑)俺とか、そういういちびりみたいなことを好きでやるタイプですけど、にしけんはそういうタイプやないので。絶対イヤがるやろうなというのは分かってたんですけど。俺とかがいちびって、「ヤママーンです!」とかやる方が、絶対スベるんで。
――ちゃんと愛とリスペクトがあるものを見せたかったと。

ヤマト そうですね。2日くらい前、アフターソウルのメンバーの方々と事前に呑ませてもらって。ジャパさん(Ba)が当日も見に来てくれて、ケンマーンを見て涙を見せてたという裏話もあったり。

にしけん それはホンマに嬉しいなぁ!

ヤマト 出れなくて悔しいのと、ありがとうって気持ちなのか分からないですけど。ジャパさんにも色んな感情があったんやろうなと思って。それがまた次に繋げれたらええなと思ってます。

――次の繋がる物語がひとつ出来た感じですね。
ヤマト 飲み会とかもそうなんですけど、いっぱい人を集めてなんかやってると、いらんことが起こるもんで。床にゲロはくヤツもおれば、ケンカするヤツもおるかも知れない。めちゃくちゃ面白い宴会芸で盛り上がるかも知れないし、いらんこと言うてもうたなって後悔することもあるし、仲良くなれて良かったなと思うこともあるし。会が大きくなればなるほど、そういうアクシデントというかハプニングみたいなものが起きるもんやし、サーキットやフェスもそういうもんやし。そもそも、バンドだって4人とか5人でやってると、「カイト、なんで言うたことやってけぇへんねん!」みたいに本気でムカつくこともあるし。あんだけ濃密濃厚でジャンルレスなメンツで、世代も関係無しでやってれば、イレギュラーなことが起きて当然なので。本気でムカついたり、本気で喜んだりみたいなことが、自然と起きてくれるイベントやったなと思って。
――アクシデントも含めて、しっかり楽しめたってことですね。
ヤマト でもまぁ、これくらいが限界かな?と思いますけどね。「次は67組」とか言うたら行き過ぎやと思うんで、40組くらいがちょうどええと思います。
――去年より出演者数が増えて、しかも大阪に場所を移して開催というところは、実際やってみていかがでした?
ヤマト 去年、新宿でやった時はそこまで大きなアクシデントは起きなかったんですが。出演者を増やして40組くらいにしたら、やっぱりアクシデントはあったけど、これが黄金比やなと思ったし。これ以上増やしたら、追いきれんなというのは思いました。
――実際、参加してみて、BIGCATを拠点にライブハウスが密集してる心斎橋エリアの雰囲気がすごくいいなと思いました。カルチャーが密集してる街というのもあるけど、ライブハウスだけでなく、街全体をサイキックフェスの良い雰囲気が包んでいました。
ヤマト 歌舞伎町的な治安の悪さがないのが良いですよね(笑)。もっとカルチャー寄りな下北沢とか吉祥寺に近い感じというか、心斎橋エリアにはそれをギュッと凝縮したイメージがあるんで。あとは大阪という土地柄もあって、ちょっとしたトラブルがあっても、「ユーモラスに乗り切ろうぜ」みたいな感じも街全体にあるんです。もしかしたらSNSで東京から見てる人とかは、「ケンマーンってなんやねん!」とかマイナスに思ってる人もいるかも知れないけど、現場の空気は全然そんなことなかったし。それはSNS全般に言えるかも知れないけど、「実際に行って実際に見てみろよ、全然違うから!」っていうのは思いましたね。
――確かに入場規制も多くあって、SNSで見ると「なんだよこのフェス、入場規制ばっかじゃねぇか」とか思っちゃうけど。早く行って並べばちゃんと見れるし、見れなくても別会場で面白いことが待ってるし。実際、そこに文句言ってる人を現場で見なかったです。
ヤマト お目当てのバンドが入場規制やとしても、どこ行くか迷うくらい個性的で良いアーティストがたくさんいますからね。「じゃあ、隣のライブハウス行ってみようか」で新しい出会いがあったり、ふと入ってみたら良かったみたいな、新しい出会いを繰り返して欲しいなと思ってたし。実際、そういうことがたくさんあったと思うんで、その狙いは当然ありました。そこで横並びのクオリティを担保出来るのも、6会場が限界で。それ以上やと、「俺的にはちょっと」ってバンドも入れなきゃいけないかも知れなくて。
――なるほど。自信を持って勧められるアーティストを揃えるのも、6会場40組くらいが限界だと。

ヤマト 人気があるないも大事ですけど、基本的には個性的である人たちをブッキングさせてもらっているので。見てみたら、「なんじゃ、これ!」ってのもあるかも知れないけど、それも新しい出会いってことで(笑)。スギムさん(クリトリック・リス)が僕らの真裏でやってもらいましたけど、SNSで見たら、裸で汗だくのおっさんがステージの上によじ登ってる映像が流れてきて。それをLOSTAGEの五味(岳久)さんが見てて、「蜘蛛の糸や」って(笑)。

カズキ 「伝説や!」言うてましたね。

ヤマト 汗だくのおっさんが裸でよじ登って降りただけで、なにが伝説やねん(笑)。でも、初めて見た女の子がおっさんの汗が飛んできてるのを見て、「イエ~ッ!」って言ってるわけじゃないですか? そういうのが僕は好きなんで、その瞬間も嬉しいっていうか。

――うん、PK shampoo主催のサーキットイベントってことで、「俺達が自信を持って見て欲しいと言えるアーティストだけを揃えました」ってところと、そこで起きる事件がすごく重要で。
ヤマト そうなんです。なんとなく思い出深いのが、Pangeaでど頭に出た、よさこいマンを見てて。段ボール投げ合ったり、段ボールの山にダイブしたりして、「なんじゃこりゃ!?」なライブなんですけど。僕も一緒に段ボール投げ合って、へとへとになったから一回後ろに下がったら、スマホで動画撮ってる女の子と完全に目が合って。僕、その子のスマホとハンディフォンをむしり取ってカウンタに置いて、その子を段ボールの山に投げ込んだんですよ(笑)。そしたら、その子がその瞬間から「ワ~ッ!」って段ボールを投げ始めて。そっから最後までずっと楽しそうに投げとって、それがすごい嬉しかったし、忘れられなくて。
――よさこいマンは俺も見てましたけど、イベントど頭から全員参加で盛り上がって。終わった後はみんなで協力して、段ボールをゴミ捨て場に運び出していて。すごく良い雰囲気だったし、今日は絶対に良い一日になるなと思いました。
ヤマト ライブはあり得ないくらいバカバカしいですけど、あれがある種の象徴みたいなイベントやと思いますよ。シリアスな演奏から熱いライブまで含めていろいろある中で、あのバカバカしさがサイキックフェスらしいし、大阪って街がそうさせた気がするし。
――ヤマトくん以外のメンバーは、サイキックフェスで印象に残っているシーンはありますか?

カイト 僕はTEMPLEっていう、PK shampooの前身バンドのトラッシュノイズのベーシストのGoくんがやってるバンドで。TEMPLEってかなりハードコアに寄ってるんで、大丈夫かな?と思ってたんですけど、すっごいクオリティが高い圧倒的なライブで。普段からハードコアを見てる感じじゃない人も、目と口をポカーンと開けて見てて。軽い気持ちで見に来た人も圧倒するライブをしてるのを見て、「俺が見れてないだけで、この状況が各所で起こってるんやろうな」と思ったら、すげぇ良いイベントだなと思いました。

カズキ 僕はANIMAの一発目に見た、古墳シスターズですね。大学の頃から好きで、コピーバンドもしてたんですけど。「ヤマトさんと前身バンドの頃から繋がってて、僕は十数年バンドをやってて。だからこそここに立てて、知らない人と会えてる。バンドをやってると、こんなに良いことがあるんだと思えてる」って、すごい良いMCをしてて。一発目からクライマックスみたいな演奏して、お客さんもすごいノッてて。「今日はすごい日になるな」って意味で、印象的でしたし。そういう意味では、BIGCATの一発目にやったバックドロップシンデレラもヤマトさんの開会宣言の2分後にはフロアで上下逆さまになって、犬神家のポーズで足でリズムを取ってて、「今日はすごい日になるな」と思いました(笑)。どのバンドも良いライブやったんですけど、一発目から気を抜かず、後に続く人がやりづらいくらいのライブをしてくれたのがカッコ良かったし。同時多発的にそれが起きてるのが、すごいなと思いましたね。

にしけん 僕はBIGCATで僕たちの前にやってくれた、キュウソネコカミが印象的でした。自分たちも良いライブ出来たなって思ったんですけど、それはキュウソを見て感化されたところもあって、あれはかなり気合い入りましたね。かなり先輩なんですけど、あそこまで気合い入れてライブやっていただけて。その前のTHE BACK HORNも、最後に向けてしっかりアゲてくれて。「先輩たちがここまでしてくれたら、僕らも下手なライブ出来ないな」って思いました。

――そして、そんな先輩たちからのバトンを受けて、大トリで登場したPK shampoo。どんな想いでライブに臨んだのでしょうか?
カイト 僕は始まった時、あんまり耳が聴こえてなくて。自分の音とか、ドラムやベースが全然聴こえなくて「大丈夫か、これ?」と思ったし、体も思うように動かん状態でガーッとやってたんですけど。徐々に耳も体も戻ってきて、「学生街全能幻想」のMCくらいで意識が帰ってきたんですけど。たぶん、ずっとライブハウスにおったから耳もおかしかったし、疲労もあったしで、頭回らなくて。しかもガムシャラでライブやってるから、そこまでの記憶が全然無いんですけど。バーッて意識が帰ってきた時に見た風景はすごい印象的やったし、「もう終わっちゃうんや」と思ったのがその瞬間で。そこからは噛み締めて演奏出来たんですけど、ガムシャラにやって覚えてないくらいのライブが一番理想のライブやと思うんで。あまり覚えてないけど、すごく良いライブが出来たなという気が、個人的にはしています。
――にしけんくんはリハでベースの音が出なくて。「あれ? この人はケンマーンで仕事終わったみたいな感じになってんのかな?」と思いましたけど、本番前にトラブル解消出来て良かったですね。

ヤマト こいつ、機材トラブル多いんですよ。弦4本をボーンと鳴らすだけなのに、それが鳴らないっていう。バカデカい機械をわざわざ車で運んできて、念入りにチェックして、「最後、大トリ行きまっせ!」ってところで鳴らないって、何がしたいねん!?(笑)

にしけん 機械のことやから、しゃあないやろ! ただ、音が出ない間は「どうしよう!?」と思って汗が止まんかったけど、あのおかげでいつも通りの気持ちでやれたところはありましたね。

ヤマト 俺が場を繋ごうと思って、「いや~、今日はホンマに」って話し始めたら、♪ボーンって音が鳴って「鳴った鳴った!」やて。 僕はそんなイラつきから始まったライブでした(笑)。ま、それもいつも通りっちゃいつも通りで。昼から暑い中を歩き回って、立ちっぱなしで踊りっぱなしで、みんなも疲れてたと思うんですけど。いまのところ大きな怪我があったって報告はなかったことが、なにより良かったなって思いますし。アクシデントも含めて、笑える範疇でなんとかなったって感じでしたね。

――自分たちでも手応え感じてると思いますけど、ライブはめちゃくちゃ良かったですし。主催者として大トリとして、サイキックフェスをしっかり締めくくったと思います。
ヤマト トリを任せてもらったというところで、当然気合いは入りますし。あの状況やともう、何をやってもちょっとエモくなるんですよ(笑)。「みんな疲れてるやろ!? 俺も疲れとるわ!」みたいな煽りがMCとして成立しちゃうみたいなところもあるし、なにやっても成立する空間ではあったので。
――あの濃厚な1日を共に過ごした連帯感もあるし、PK shampooやサイキックフェスをよく理解して、期待してくれてる仲間たちが集まってるわけですからね。
ヤマト 僕の中では、いかに事件を起こしていくか? だったり、アクシデントも飲み込んでいくか? みたいなことで出来上がった空間やなとも思ってて。サイキックフェスって、良いことも悪いことも含めて、これまでいろんなことが起きてきた俺らやから作れるフェスやと思ってるし。ロックンロールとかバンドって、事件性やと思ってて。さっきも言いましたけど、サイキックフェスは人数増やしたことによる偶発性とか化学反応とか、アクシデントとか「大丈夫か?」みたいなところも面白いと思ってるんで。狙い通りではないのが狙い通りってところにたどり着けたと思うし、それが確信出来たというか、確証に変わってきた感じはあると思います。
――サイキックフェスは色んな場所で、いろんな事件が同時多発的に起こってて。それを目撃した参加者一人ひとりに、全然違った1日の物語があったと思うんだけど。大トリのPK shampooのライブがそれぞれの物語を結実させたというか、美しいエンディングを作ってあげた気がしたんです。
ヤマト ウチは“狙ってほったらかすみたいな”スタンスなんで。例えば、「モッシュダイブは禁止です」みたいなルールがないとルールを破れないし。ルールを破った時にリスクを背負っていくのも面白さだと思うんで。狙ってほったらかすみたいなやり方しか出来ないですけどね。
――こっちは何も決めつけないし、押し付けないから、それぞれが感じてくれってことですよね。それと俺が昨日のステージを見て思ったのは、去年のサイキックフェスのステージと比べた時、楽器隊の3人の個がすごく見えるなと思って。以前はヤマトくん主導でライブを引っ張ってという見え方だったけど……って、「輝くもの天から堕ち」のタイミングで、みんなに色々話を聞いてたからっていうのもあるかも知れないけど。
ヤマト じゃあ、それじゃないですか(笑)。
――まぁ、そうかも知れないけど(笑)。「天使になるかもしれない」はカズキくんのドラムがガツンと出てたし、「夏に思い出すことのすべて」はカイトくんのギターもすごい良かったし。にしけんくんも色々頑張ってたし、「リボルバー」も良かったし。

にしけん 「リボルバー」はPKの曲ちゃうやないですか(笑)。

ヤマト 鳴らんと思ってたベースも鳴ったしな(笑)。意外と理解されていないというか認識されてないのが、僕らって演奏上手いんですよ。キャラやMCの悪ふざけに注目されがちやし、「下手くそやけど、なにか伝わってくる」みたいなタイプのバンドに解釈されがちなんですけど、演奏自体は意外としっかりしてる。大学のサークルの中でもそれなりに上手いヤツを集めたっていうのもあるし、結成した頃から同い年くらいのバンドと比べた時に上手い方やったし。それこそ、ケンマーンを見てても「結構、上手いな」と思って。普段、自分のライブを生で客観的に見ることは出来ないですからね。ギターとベースの持ち替えもありましたけど、メンバーが演ってるのを見て、「にしけん、結構ギター弾けるんや」とか思いましたね。小さいライブハウスやなくて、BIGCATの大きいステージで聴いても成立してましたからね、しかも3ピースで。

カズキ お~、良かったです! 僕はヤマトさん入ってきてから、にしけんとの声量の違いにビックリしましたけどね。「これがメジャーアーティストの声量か!」って(笑)。あと、僕がサイキックフェスで思ったことは、去年はヤマトさんやスタッフ、マネージャー陣に任せっきりで、なにをして良いか分からん状態やったんですけど。今年は去年を踏まえて、メンバーの動き方もちょっと分かって。各々で行動出来たってところも良かったなと思って。「こういうところで力になれる」っていうのが、それぞれ分かって動けたところもあって。カラオケも良かったですしね?

ヤマト そうやな。俺とカズキでハッピ着てやったんですけど、ORANGE RANGE歌ったり、しょうもないといえばしょうもないことやってるんですけど。そのしょうもなさを変な感じじゃなくやれるのもPK shampooの強みというか……いや、強みちゃうな? むしろ弱みかも知れへんけど(笑)。良くも悪くも学生ノリがずっとある感じで、こういうことが出来る土壌があるなら、やるしかないなって。だから、ケンマーンもその一環やと思うし。

カズキ あれをとっさに出来たのは、ここまで場数を踏んできた成果が出てきたんかな? とも思いますね。「PK shampooはヤマトだけのバンドじゃないんだぞ! にしけんもおるんやぞ!!」ってところを見せられたと思ってます。

ヤマト 「にしけん、ここにあり!」っていうのを見せたよな? それまでは、「にしけん、ここになし!」と思われてたから。

――“ここになし”なんて言葉、聞いたことないです(笑)。そして、2年目を大盛況で終えて。来年のサイキックフェスはどうなるのか?って話も訊きたいのですが。
ヤマト 来年やるなら少し時期をズラして、夏でもちょっと早めに7月上旬にするとか、秋にするとかですかね。あえて夏にやるのも良い気がするんですけどね。中高生の頃は「なんで夏休みに外出なあかんねん?」と思うとったじゃないですか? 「暑いから休みにしとるのに、それを利用して外に行くなんて言語道断や!」とか屁理屈言うてましたけど。夏に外に出るってシンドい分、思い出に残るところがあると思うので。今年もやってみて、夏にやるのはナシではないなと思ってきてます。「シンドいわ、暑いわ!」っていいながら何かやることって、カッコいい言い方すると青春に似てるじゃないですか? 「学校とかダルいわ~」って言いながら、学校に通ってたあの数年間を青春と呼んでいたりするんで。
――「今日の思い出が、夏に思い出すことのすべてのうちの10秒になれば」って、昨日のライブのMCでも言ってましたね。
ヤマト そうですね。とはいえ、暑すぎるのはイヤですけどね(笑)。あと会場は大阪で良い気がするんですけど、新宿をもう一回やりきりたいって気持ちもあるんで、めっちゃ迷ってます。やりたくても出来なかったことが、新宿にも心斎橋にもまだまだいっぱい置きっぱなしになってる感じがするし。急遽キャンセルになったアーティストや出れなかったアーティストもいるんで、まずはそれを含めて消化して、次のステップに行きたいなと思ってます。
――そして、PK shampooは9月13日(金)大阪・梅田CLUB QUATTROから始まり、全国5箇所を回るツアー「『輝くもの天より堕ち』 Release One Man Tour“A Day to Remember”」の開催も決定しています。

ヤマト サイキックフェスは祭りみたいな感じやったんで、ツアーはもっと曲とか音楽にフォーカスしていくようなライブになればと思ってて。さっきも言いましたけど、演奏力もあるし、曲もちゃんとしたのを書いてるつもりなので。キャラクター先行で聴いてもらえることもイヤやと思ってないし。曲をバズらせることよりも、キャラを周知してもらえることの方が成功難易度が高いと思ってるんで、それはそれでええんですが。もうちょっとだけ曲に注目してもらって、「意外とええ曲書いてるんやぞ」っていうのも気付いて欲しいなと思ってて。

カイト サイキックフェスのライブで「夏に思い出すことのすべて」をやった時、「締めるライブがちゃんと出来る曲が入ってるEPなんやな」って思ったし、改めてええ曲やなと思った。

ヤマト 「夏に思い出すことのすべて」って、俺もすごい良い曲やと思ってるんですよね。「天使になるかもしれない」とか「ひとつの曲ができるまで」とかはちょっとセンセーショナルな感じなんで、そっちに目がいきがちやけど。「夏に思い出すことのすべて」は自分で聴いてても、「ええ曲作ったな」って染み入るように思う曲で。

カイト 俺はむしろライブ向けの曲のような気がしてる。

ヤマト そうそう。サイキックフェスの前日に、初めてちゃんと合わせたんですけど。こうしたいとか思うところが、最初から何もなかったし。楽曲の方向性もいままでやってきたことの延長線上なんで、完全に仕上がってるというか。「PK shampooがこの曲をやるのが、一番ええやろな」って曲になってるし、「神崎川」とか「二条駅」とか、ああいう雰囲気の曲の最新型になってるから、あの曲だけでも聴きに来て欲しいなと思うくらいで。結成時からずっと追っかけてくれてる人とかは「変わっちまったな」とか思ってるかも知れないけど、「いやいや、来てみて! 来たら分かるから」って言いたいですね。それであかんかったら「じゃあ、ごめん」って言いますけど(笑)。ファイナルだけでもいいし、自分の住んでる街の近くだけでもいいし。最新型のPK shampooを一度見て欲しいです。

カズキ ツアーは東名阪だけじゃなくて、福岡や北海道もありますから。遠方でサイキックフェスに来れなかった人もいると思いますけど、今度は僕らが会いに行くんで。ぜひ遊びに来て下さい!

Interviewer:フジジュン(FUJIJUN WORKS)