COCP-31368/\3,059(tax in)
収録曲
- Tempest
作曲:雷電湯澤 編曲:松崎雄一- Skip Jack
作曲:石川俊介 編曲:松崎雄一- Endless Spiral
作曲:松崎雄一 編曲:松崎雄一- ARCADIA
英詞:John Wetton 作曲:雷電湯澤 編曲:松崎雄一
(原曲作詩:デーモン小暮)- I am innocent
作詩:John Wetton 作曲:松崎雄一 編曲:松崎雄一- Polar bear
作曲:雷電湯澤 編曲:松崎雄一- Shining Crazy Man
作曲:松崎雄一 編曲:松崎雄一- Filmnoir
作曲:石川俊介 編曲:松崎雄一PRODUCED BY RX
SOUND PRODUCED BY YUICHI MATSUZAKIRAIDEN YUZAWA: DRUMS
SHUNSUKE ISHIKAWA: ELECTIC BASS
YUICHI MATSUZAKI: KEYBOARDS & PROGRAMMINGGUITARS GUEST MUSICIANS
和田アキラ (M1, M3), 岩見和彦 (M8), 福原将宣 (M2, M7), 藤井YOUICHI (M5, M6), ルーク篁 (M4)SAXOPHONE GUEST MUSICIANS
勝田一樹 on Alto (M2, M7), 岩佐真帆呂 on Soprano & Flute (M1)
ジョン・ウェットンというミュージシャンがいかに素晴らしいシンガーでありベーシストであり、そしてメロディーメイカーであるかは、彼がこれまでに関わってきたグループを挙げれば明白だ。ブラス・ロック・バンド、MOGUL THRASHの'70年発表のアルバム『Mogul Thrash』でベーシストとしてプロ・キャリアをスタートさせたジョンは、その後FAMILY、KING CRIMSON、ROXY MUSIC、URIAHHEEP、U.K.、ASIAと、ブリティッシュ・ロックを代表するバンドに次々と参加する。なかでもKING CRIMSONにおける3枚のスタジオ盤『Lark's Tongues inAspic』('73年)、『Starless And Bible Black』('74年)、『Red』('74年)と1枚のライヴ盤『U.S.A.』('75年) で、彼のヴォーカリスト、ベーシストとしてのステイタスは確実なものになる。
キング・クリムゾンまではバンドのイニシアティヴを取るに至らなかったジョンだが、'77年に結成したU.K.以降は自らが中核に位置する活動が増えていく。U.K.の1st『U.K.』('78年)および2nd『Danger Money』('79年)、そしてラスト・アルバムとなる日本公演を収録したライヴ盤『Night After Night, Live!』('79年)は歌、ベース、楽曲と、どれを取っても当時のブリティッシュ・プログレッシヴ・ロックにおける最高峰のクオリティを持っている。しかし不幸なことに時代は世界中がパンク・ロックの波に飲まれており、U.K.は実力に見合った評価を受けることなく解散してしまう(日本での評価が最も高かった!)。
ジョンが商業的に最も成功したのがASIAだ。バンドの構想自体はU.K.よりも前、'76年に始まっていたというが、デビューは6年後の'82年。
これが結果的にはパンクのブームを避ける形になり、アルバム『Asia』はニュー・ミュージック/MTVの波に乗り全米No.1をあっさりと獲得。さらに続く『Alpha』('83年)で人気を確実なものにした。
Asia以降はソロやプロジェクトでの活動が多くなる。ソロとしてはこれまでに5枚のスタジオ・アルバムを発表しており(最新作は2000年発表の『Welcome toHeaven』)、他にもライヴ盤多数。プロジェクトとしてはロキシー・ミュージック時代に活動を共にしたフィル・マンザネラ(g)とのWETTON/MANZANERA('87年)、Asiaの朋友カール・パーマー(ds)とのQANGO(2000年)などが主なところだが、ゲスト参加やプロデュースを加えるとそれこそ枚挙に暇がない。なかには日本のへヴィ・メタル/ハード・ロック・グループ、VOW WOWのシングル「Don't Leave Me Now」('90年)のプロデュースというのもある。
そして今回のRXだ。なんとそのジョン・ウェットンがゲスト・ヴォーカルで2曲に参加したという。これまで前面に押し出されてきたフュージョン色、特に前作『Zeitmesser』に馴染んだ人にはジョン・ウェットンという名前を出してもちょっとピンと来ないかもしれないが、ロック・サイドからRXの二人、そして聖飢魔を見てきた人にはこれがもう納得モノの人選と言えるのだ。個人的には「こっちが本来のテリトリーなんじゃないの?」と思っていたぐらいだし。以前、雷電湯澤氏と取材の合間に話をした時に(取材内容はたしかジョン・ボーナムのドラムについてだったと思う)、氏はたいそうプログレッシヴ・ロックがお好きで、その手のドラマーとしてラッシュのニール・パートやフランク・ザッパ・バンド〜U.K.のテリー・ボジオがフェイバリットだと仰っていた。その嗜好があまりにも私とダブったために話は取材本編以上に盛り上がったのだが、そして今回ジョン・ウェットンがゲスト参加と聞いてまた嬉しくなった。やっぱり同じだ!(笑)
ただし実際に音を聞くまでは「ジョンが参加しても音楽性はこれまでのフュージョン路線のままなのか?」という疑問は残っていた。それじゃあ意味がないだろう、と。そうしたらどうだ、ジョンが参加するのには必然性があった。本作『Elements』は音楽性のベクトルをググッと大幅にロック、正確にはプログレッシヴ/ジャズ・ロック寄りに向けてきたのだ。今回の音楽性がまずあってジョンにお願いしたのか、ジョンに参加してほしくて音楽性を決めたのかは定かでないが(笑)、ともかく彼の参加によって作品の表情が一際豊かになったのは間違いない。
現在の時点でラフのラフ、ミックスどころかダビングも終わっていない段階の音源しか聞いていないので多くは語れないが、ジョンが参加の2曲に関しては、とにかく彼が歌えば何でもジョン・ウェットン作のようになってしまうところがすごい。雷電湯澤作曲の「ARCADIA」はコンパクトなまとまり具合が最近のジョンのソロ作品に近い印象を与えるメロディアスな曲。そして松崎雄一による「I am Innocent」はU.K.をちょっと彷彿させるようなフックの効いた曲だ。もっとテクニカルでプログレチックな曲が他にもあったが、ジョンのヴォーカルをフィーチュアした歌モノという観点からすれば、その存在感を最も引き立てる選曲と言えるだろう。いずれにしてもまたコレクターズ・アイテムが増えてしまったなぁ。ジョン・ウェットンは3月いっぱいUKツアーを行なっており今年中には再来日ツアーも実現しそうなので、その際には是非ともRXのステージにも顔を出してほしいなぁ、なんていうのは贅沢すぎるだろうか。
(MAR.2001/野田雅之)RX、“本気”だ――このアルバムを聴いて、そう感じた。ユニットとしては9年ぶりの作品となっ前作『Zeitmesser』から、わずか1年足らずで、早くも新作が登場してきたのだ。かつては聖飢魔IIのサイド・プロジェクト的存在だったRXだったが、いまや本格的な“バンド”として動き出している。その証明ともいうべき作品が、この『Elements』だといえるだろう。“Elements”=“要素”というタイトルどおり、今回のアルバムでは、これまでのRXらしさを維持つつも、さらに多彩な要素が詰まって、よりヴァラエティ豊かなサウンドが展開されている。まさに“バンド”として一人歩きをはじめたRXの本領が、見事に発揮されたアルバムだといえるだろう。石川俊介、雷電湯澤、松崎雄一の3人は、RXを唯一無比のインスト・ユニットにするべく、そのサウンドにさらに磨きをかけているのである。
今回もこれまでのアルバムと同様、素晴らしいミュージシャンたちが参加し、RXサウンドをサポートしているが、その中でも最大の注目点は、やはりジョン・ウェットンの参加だろう。ジョン・ウェットンは、キング・クリムゾン、UK、ユーライア・ヒープ、エイジアなどといったスーパー・グループで活躍してきた、ブリティッシュ・ロックの“生きる伝説”ともいうべきベーシスト/ヴォーカリストである。石川俊介は、中学生時代に彼のベース・プレイを聴いて、一発で彼を尊敬することに決めたという。今回、そんな彼にダメもとで声をかけてみたところ、なんとすんなりOKが出て、夢の共演が実現したそうだ。もちろんRXにはベーシストがいるので、今回はヴォーカリストとしての参加となったが、彼はヴォーカリストとしても素晴らしい声の持ち主であり、ここでもその魅力的な歌声をたっぷりと聴かせてくれる。憧れの人との共演に、さすがにRXのメンバーたちも最初は緊張していたが、ジョンは人柄もすごく穏やかな人で、レコーディングはとてもスムーズに進んだという。彼が歌っているのは2曲で、「ARCADIA」は、聖飢魔IIの99年のマキシ・シングル(聖飢魔II的には“最大小教典”という)「蝋人形の館 '99」に収録されていた、雷電湯澤のナンバーのRXヴァージョンだ。そして「I am innocent」は松崎雄一のオリジナルで、どちらの曲もジョン・ウェットンが英語詞を書いている。「ARCADIA」のドラマティックで哀愁を帯びたメロディは、ジョンのウェットなヴォーカルにピッタリだ。聖飢魔IIの仲間だったルーク篁のギターも、そんなナンバーをさらにドラマティックに盛り上げている。「I am innocent」は、エイジアあたり通じる、プログレ・テイストもあるポップ・ナンバーで、こちらもジョンのヴォーカルの良さをうまく活かした楽曲に仕上がっている。ちなみにジョンは、今回の共演でRXのことがすっかり気に入ったようで、レコーディングに続いて行なわれたRXのライヴにも参加し、さらになんとロンドンでの彼のライヴに、RXをバンドとして呼びたい、とまで言い出した。そういったことも含め、今回の共演は大成功だったといえるだろう。
ジョンの他にも、『Chemical Reaction』に参加していたプリズムの和田アキラ、2001年2月のツアーにも参加していた元ナニワ・エキスプレスの岩見和彦、2000年11月のライヴに参加していた元NOBU-CAINE、Bingo Bongoの福原将宣、JIMSAKUなどとも共演経験のあるセッション・プレイヤーの藤井Youichi(エンジニアの内田氏の紹介で、今回参加することになったということだ)、という豪華なギター陣、DIMENSIONのメンバーで、『Zeitmesser』にも参加していた勝田一樹、2000年7月に参加した岩佐真帆呂というサックス陣と、本当に豪華なメンバーたちが参加し、エネルギッシュなプレイを聴かせてくれている。こういった素晴らしいメンバーが集まるというのも、RXの音楽性の高さと、彼らの人柄によるものだろう。
二転三転する展開と、和田アキラのハードなギター・プレイ、そしてファンキーでタイトなビートが絶妙にパランスしている、雷電湯澤の本領発揮ともいうべき強力チューン「Tempest」からこのアルバムはドラマティックにスタートし、松崎雄一のヴォコーダーがスペイシーなムードを醸し出してる、プログレ・スピリット全開の「Endless Spiral」(和田アキラのギターと雷電湯澤のドラムとのバトルは壮絶の一言だ)、ストリングスも取り入れたフュージョン・タッチのサウンドに乗せて、福原将宣、松崎雄一、勝田一樹が超強力なソロを聴かせる「Shining Crazy Man」、7拍子という、変則的ながら、たたみかけるようにグルーヴしてくるリズム隊がすごい「Polar bear」、石川俊介らしいファンキー・グルーヴが気持ちいい「Skip Jack」(勝田一樹のサックスもゴキゲンだ)、岩見和彦のジャジーなギターがオ
トナのムードを醸し出している「Film noir」と、本当に多彩なナンバーが詰め込まれている。だが、これほどまでにいろいろなタイプのサウンドが並んでいても、全然とっ散らかった印象にならないのは、彼らのセンスの良さと、プレイのしなやかさによるものだろう。どんな曲をプレイしようと、RXらしさというものが本当によく出ていると思う。雷電湯澤のドラムはタイトでエネルギッシュだし、石川俊介のベースはファンキーで重いし、松崎雄一のキーボードはセンシティヴでカラフルだ。インストゥルメンタルという、プレイヤーとしての実力も音楽性も、すべてが裸になってしまうシチュエーションの中で、ここまで高い音楽性を表現しながら、しっかりと自分たちらしさを出している彼らのミュージシャンとしての才能は、本当に素晴らしいと思う。
こんなに密度の濃いアルバムを作り上げたRXに、もはや“元聖飢魔II”という説明は不用だろう。彼らはRXとして、彼らでしか作ることのできないサウンドをクリエイトしようしている。この『Elements』は、21世紀のRXの進む方向性も示唆している、意欲的で完成度の高い力作だ。できるだけ大きな音で、この音に賭けた男たちの裸のプレイを浴びるように聴いて、心と体で感じてほしいな、と思う。
〔Mar. 2001 熊谷美広〕Kiss of Life |Elements | Zeitmesser | Live in London | RX LIVE IN AX | 表紙へ戻る
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