ツァイトメッサー
収録曲
1曲目に収録の"get it ! get it !"が
- get it ! get it ! [ ] music : 松崎雄一
- close to me [ ] lyrics : ロビーダンズィー music : 雷電湯澤
- Agrion [ ] music : 松崎雄一
- ! HAヨY (イエィ!)[ ] music : 石川俊介
- Crazy Heart [ ] lyrics : ロビーダンズィー music : 雷電湯澤
- Mystery from greenman [ ] music : 石川俊介
WOWOW「東京ロンブータワー」エンディングテーマに決定!
(毎週水曜19:30〜20:00)
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聖飢魔IIというグループのCDを聴いたり、ライヴを観たりしてぼくが感じたのは、ほんとうに上手いグループだなぁ、ということと、音楽性の幅広いグループだなぁ、ということ。聖飢魔IIというと、どうしてもそのユニークなキャラクターが目立ってしまうが、実は、ロック・グループとしては、とても高い音楽性を持っていたグループだったと思う。メンバー5名は、ヴォーカルのデーモン小暮閣下を含めて、いずれも日本ではトップ・クラスといっていいテクニックと実力の持ち主だったし、それぞれのメンバーが違った音楽指向を持ち、それがいい意味でグループのサウンドをより多彩にしていた。それぞれの楽曲や、ライヴ・パフォーマンスは、とてもクォリティが高かった。そんな聖飢魔IIの音楽性をボトムでしっかりと支えていたリズム・セクションによるユニットが、この“RX”だ。 RXは91年、聖飢魔IIのメンバーによるソロ・プロジェクトの一環としてスタートしたユニットだ。リズム・セクションのライデン湯沢殿下、ゼノン石川和尚のふたりが中心となり、これに当時から聖飢魔IIのサポート・メンバーとして活躍していたキーボードの“怪人マツザキ様”こと松崎雄一、アマチュア時代から彼らとは親交のあったギタリストの宮腰雄基のふたりをレギュラー・サポート・メンバーとして起用し、同年9月21日にアルバム『Chemical Reaction』をリリースする。
ちなみに“RX”とは、“Raiden”と“Xenon”の頭文字を組み合わせたものだ。ここでは、聖飢魔IIの音楽性とはガラリと変わり、フュージョン色の強いインストゥルメンタル・ナンバーを展開して、ファンを驚かせた。またゲストとして渡辺香津美(g)、和田アキラ(g)、本多俊之(as)、市川秀男(p)、中西俊博(vln)など、ジャズ/フュージョン・シーンのトップ・プレイヤーを招き、フュージョン・ファンの間でも話題を呼んだ。
個人的な話で恐縮だが、ぼくはこのアルバムを某誌の91年度の“日本フュージョン・ベスト・アルバム”の1枚として選んだほど、好きな作品だった。ちなみにオリコンチャートも最高位14位というチャートアクションで、初登場40位からのランクアップというロングセールス。
また彼らは同年10月25日に渋谷ON AIR EASTにて単独ライヴを行ない、渡辺香津美、和田アキラ、本多俊之などが一堂に会して演奏するという、フュージョンのセッションでもなかなかお目にかかれないような豪華なステージでファンを驚かせた。
また同年10月21日には教則ビデオ『RXモンスター・リズム・バトル』もリリースされている。
その後、RXは92年は1年間活動を休み、93年にはライヴを東京で4回行ない、特に7月24日に、今はなき日清パワーステーションで行なわれたライヴの模様はライヴ・レコーディングされ、94年1月21日にセカンド・アルバム『Rare 'Xtra』としてリリースされた。このアルバムには、基本メンバー4人の他、本多俊之(as)、和田アキラ(g)、井上浩一(perc)、レクターH(key)などが参加している。だがこれを最後に、RXは一旦活動を休止する。
ちなみにこの2枚のアルバムは、いずれも現在は残念ながら生産中止になっているが、『Chemical Reaction』の中の3曲は、聖飢魔IIメンバーのソロ活動の音源を集めたCD『聖飢魔II 個悪魔活動大選抜』で聴くことができる。
そして1999年12月31日、聖飢魔IIはその“任務”を終え、解散する。だが、RXはまだ解散していなかった。雷電湯澤、石川俊介という、彼らが言うところの“世を忍ぶ仮の姿”(石川俊介に関しては、『ウルトラマン』におけるハヤタ隊員のごとく、ゼノン時代の記憶がまったくない……らしい)のふたりに加えて、松崎雄一を正式メンバーとして迎え、本アルバム『Zeitmesser』で、約7年ぶりに、新生RXとして復活したのである。
というわけでこの『Zeitmesser』は、彼らのスタジオ録音としては、9年ぶりのセカンド・アルバム。メンバーは、雷電湯澤、石川俊介、松崎雄一の基本メンバー3人にゲストとして宮腰雄基(Gr)、勝田一樹(sax)、ロビー・ダンズィー(vo)の3人が参加している。サックスの勝田一樹は、今や日本のフュージョン・シーンを代表するグループに成長したDIMENSIONのメンバー。またTUBUなどのサポート・メンバーとしても大忙しの、売れっ子プレイヤーである。
2曲でヴォーカルを聴かせているロビー・ダンズィーは、アメリカでベイビーフェイス・ラナダ マイケルウォルデン・ジャーメンジャクソン等とのセッションやボビーブラウンのオープニングアクトを努めたりしている実力派。さらにマスターズオブファンクのヴォーカルとしてもヒットを飛ばしている人物。
基本的にはこれまでの2枚のアルバムと同様、インストゥルメンタルを中心としたサウンドが展開されているが、“前回はプログレっぽい部分もあったけど、今回は前作ではやらなかった、グルーヴィーな面も出した”と彼らが言うように、よりファンキーで、ダンサブルなサウンドも展開されている。
「get it! get it!」は、松崎雄一の手によるダンサブルなナンバー。時々入るブレイクが、曲のポイントになっている。クラブでプレイしたら、人気の出そうなナンバーだ。聖飢魔II時代の彼らしか知らない人が聴いたら、きっとビックリすることだろう。RXはこんなにグルーヴィーな演奏もできるのである。ギター・ソロ、サックス・ソロも、ファンク・テイストあふれるプレイで気持ちがいい。ちなみに石川俊介のベース・ラインは、ちょっと「ザ・チキン」が入ってて、思わずニヤリ。
「Close To Me」は雷電湯澤のオリジナル(歌詞はロビー・ダンズィー)。今回彼の提供した2曲はいずれもヴォーカル・チューンだが、そういったところにも、メンバーそれぞれの音楽性が出ていて面白いと思う。ドラマーが書いたとは思えない、哀愁あふれたメロディを持つ佳曲だ。サビでレゲエっぽくなるリズム・アレンジもおもしろい。ロビー・ダンズィーのヴォーカルも、とてもドラマティックで感動的だ。
「Agrion」は松崎雄一の曲。サンプリングを効果的に使った、ダンサブルなナンバーだ。石川俊介の本領発揮ともいうべき、ファンキーなスラッピング・ベースが気持ちいい。この強力なグルーヴ感は、RXのふたりならではであり、聖飢魔II時代の彼らとはまた違った魅力を見事に発揮している。勝田一樹のサックス・ソロも、エモーショナルなブロウを聴かせてくれている。雷電湯澤のドラム・ソロ、宮腰雄基のギター・ソロも、迫力満点だ。
「!HAEY(ィエイ)」は石川俊介の曲。タイトルはもちろん「YEAH!」の裏返しであり、思わず“YEAH!”と叫びたくなる、彼らしいファンク・チューンだ。シンセ・ホーンが、タワー・オブ・パワーみたいでカッコいいし、勝田一樹のサックスによるテーマもよく歌っている。雷電湯澤の叩き出すセカンド・ライン・ビートもメチャクチャにファンキーだ。石川自身のベース・ソロも、しっかりとフィーチュアされている。後半のギターとサックスのバトルも、熱い。
「Crazy Heart」は、雷電湯澤の手によるヴォーカル・ナンバー。ちょっぴりひねくれたメロディ・ラインが彼らしい。こういう、シンプルな歌ものをリズミックに聴かせるというのは、実はすごく難しい。それを見事にこなしているRXの音楽性の高さをぜひ聴き取って欲しい。SFチックなシンセのフレーズも、いい味を出している。
ラストの「ミステリーフロムグリーンマン」は、石川俊介の手によるトリッキーなナンバー。リズム・セクションはかなり複雑な動きながら、それを難なくこなす彼らのテクニックはすごいし、さすがに息もピッタリだ。松崎雄一のシンセサイザー・ソロ、宮腰雄基のギター・ソロも、イケイケでカッコいい。
そして、アルバム全体を聴いて実感するのは、やはり彼らのテクニックの確かさと、音楽性の幅広さだ。この間までハード・ロック・バンドをやっていたリズム・セクションが、こんなにカッコ良くてファンキーなインスト・アルバムを作るのだから、ほんとうに彼らのミュージシャンとしての懐の深さと大きさには感心してしまう。聖飢魔IIは解散してしまったが、彼らの作り出す“音楽”は、まだまだ続く。彼らのこれからの活躍に大きな期待を持たせる、そんなアルバムだ。〔APR.2000 熊谷美広〕
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