carnation(カーネーション)booby (Deluxe Edition)

DISCOGRAPHY ディスコグラフィ

carnation(カーネーション)

booby (Deluxe Edition)

[ALBUM] 2009/12/09発売

booby (Deluxe Edition)

COCP-35811-2 ¥3,080 (税抜価格 ¥2,800)

DISC-1 (*Original Release:1997.9.20)

  • 1.New Morning

  • 2.60wはぼくの頭の上で光ってる

  • 3.The Future Rock Show

  • 4.Sweet Baby

  • 5.ダイアモンド・ベイ

  • 6.Hello,Hello

  • 7.アポロ

  • 8.クエスチョンズ

  • 9.レオナルド

  • 10.影踏み

  • 11.ドラゴン・シャフト

  • 12.なんできみはぼくよりぼくのことくわしいの?

DISC-2

  • 1.60wはぼくの頭の上で光ってる
    (Golden Honey Bee Mix)
    *Released Only Sales Promotional Sonosheet
    (Outtake from「booby」)

  • 2.アポロ (Salvage Mix)
    *from single 「New Morning」c/w

  • 3.ダイアモンド・ベイ (Stereo Mix)
    *Unreleased Version
    (Outtake from 「booby」)

  • 4.One Day
    *from『ムサシノep』

  • 5.ムサシノ・ブルース
    *from『ムサシノep』

  • 6.サンセット・サンセット
    *from『ムサシノep』

  • 7.Hello, Hello (Live)
    *from『ムサシノep』

  • 8.My Little World (Live)
    *from『ムサシノep』

  • 9.アイ・アム・サル (Live)
    *from『ムサシノep』

  • 10.New Morning (Home Demo)

  • 11.60wはぼくの頭の上で光ってる
    (Home Demo)

  • 12.Sweet Baby (Home Demo)

  • 13.ドラゴン・シャフト (Home Demo)

  • 14.ムサシノ・ブルース (Home Demo)

  • 15.ダイアモンド・ベイ (Home Demo)

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1997年リリースの通算8枚目。
各メンバーの楽曲の個性が際立ち、骨太なロックでありながらも遊びゴコロ溢れるバラエティに富んだ内容。レコ発ツアー東京公演では初の渋谷公会堂(当時)ワンマンも成功させた。DISC-2には翌98年にリリースされた2枚組(新曲+ライブ)『ムサシノep』、シングルc/w曲、アルバムからの未発表アウトテイク、貴重なホーム・デモ音源等を収録。[ライナーノート:佐野郷子]


直枝政広による『booby』セルフ・ライナーノート
 『a Beautiful Day』収録「市民プール」の暑い夏。その入道雲をさらに細密描写した感のある『Girl Friend Army』は96年。前に書いたようにプロモーションは加熱した。東京近郊のJRの駅という駅に大きな宣伝の看板が出たことと、そして毎日のように寝不足の目を腫らしながら赤坂の長い坂をゆるゆると登ってレコード会社に通ったこと以外、残念ながらその夏の記憶はほぼない。
 翌97年の初春。寒空の下、ひっきりなしにカラスが鳴く日比谷公園の野外小音楽堂でバンドはトッド・ラングレン「夢は果てしなく」のカヴァーを公開録音した。これはサエキけんぞう氏がプロデュースしたトリビュート盤『トッドは真実のスーパースター』のためのセッションだった。インターネットが今のように普及していないにもかかわらず、ファンクラブの会報を通じてそのニュースは口々に伝わり、大勢の熱心なファンが現場まで応援に駆けつけてくれた。もちろん無料だし演出も仕切りもなし。一般のやじうまも浮浪者もカラスも一緒くたにひやかす客席の前でぼくらは同じ曲を何度も繰り返し、緊張の中、頭を抱えつつも納得のゆくテイクを探した。
 この異例のセッションはそもそも英国フォーク・グループHERONの野外録音を体現すべくぼくが発案したものだったが、いつしか映画『Let It Be』における最後のビートルズのライヴ演奏「ルーフトップ・セッション」の再現へとすりかわっていったようにも思える。録音現場を見せてしまうという究極のデモンストレーション。そのバンドのポテンシャルはもうすでにありきたりな方法では満足のいかないほどハイな状態にあったし、しかも当時の5人の作業ぶり、その幸せなバンドのかたちという名の素敵な記憶のおみやげを(極一部に限られたが)ファンに残すことができたことも、今となってはよかったと思っている。
 春を迎える頃、ぼくは溜まりに溜まった疲れと長く伸び過ぎた髪の毛にようやく気がついたのだった。もうちょっと気楽な服装を楽しみたくなったというか…。そんなラフな気分が『booby』にはある。この頃はプリプロを重ねて綿密に作りあげる作業をなるべく減らし、Home Demoを確かめた後はスタジオで実際に「せーの」で音を鳴らしてからアレンジを整えるようにもなった。まず、ベーシックの感覚的な部分には古典ルーツ音楽としてのザ・バンドやリトル・フィートがあった。その時代体験の記憶を紡いで生まれてきたような「New Mornig」や「ドラゴン・シャフト」がアルバムの柱だ。「影踏み」にはニュー・ルーツとしてのトム・ペティ、というより当時もっとも尖った音を作っていたリック・ルービンの影響がストレートに反映されている。クラブDJたちもヴィンテージなスワンプ・ロックのファンキーさに気づきはじめた頃だったが、ぼくたちは夜遊び用のスムースな定番曲や小洒落れたセレクションとは必ず距離を置いたし、単に聴きやすくソフトなだけの音楽ならぼくらがやるべきことじゃないとも思っていた。ロック・バンドとして演奏する上ではある意味、技術とアイデアの限界点を示しもがく道を選び、それを良しとしたそんな時期だった。
 リハーサルは駒込にあったスタジオ「サウンド・ファクトリー」。録音機材を持ち込んだ鳥羽くんがエンジニアを担当し何曲かを録音、ああだこうだとアイデアを出しあいながら白熱したセッションを重ねた。
 エンジニアの蜂屋氏は当時、斉藤和義のアルバムでどこかビートルズっぽくもとんがったサウンドを提供していたことから起用。氏は70年代ロック名盤における影の功労者で、サディスティック・ミカ・バンド『黒船』やチューリップ『Take Off』、初期オフ・コースを担当したエンジニア界の重鎮だ。バンドのあらゆるアイデア出しと無謀な実験を蜂屋氏はその堂々たるポップ・センスで一種独特のスケールの大きな、それでいてわかりやすいドメスティックな音像に仕立て上げてくれた。「Sweet Baby」のミックスは史上稀にみる煌めき。あれこそ日本の風土に似合う音楽的な湿度であり、それはそれは贅沢で立派なMIXになっていると思う。市ヶ谷は外濠付近の湿った風や夕陽が思い出される一口坂スタジオの立地印象もあるが、その洋楽経験を通して生まれた屈折した日本ロックの薄暗い風土感をたっぷり味わえる『booby』という作品は、こうしてあらためて聴くと、湿った英国臭が強烈だった時代(トータル・アルバム登場以前)のビートルズ『リヴォルヴァー』と同様、とてつもなく幅広い曲ヴァリエーションを感じるのだが、如何だろう。
 『ムサシノep』はとある冬の数日間の記録とも言えるシンプルかつロマンティックな一枚で、メンバー全員納得の内容だった。「ムサシノ・ブルース」はたまたまGラヴの新作を聴いたらそのまま出来上がった曲だが、その歌詞は77年の都立秋川高校(全寮制の男子校)時代、徴収した修学旅行費が無駄に余ったとのことで急遽学校側が企画した「ウサギ狩り」の思い出が基盤となった。ウサギ狩りは業者さん立ち合いの下に行われた。小高い丘の裾から大勢の学生が一斉に大声を張り上げながら駆け上ってゆけば追われた野ウサギを頂上に仕掛けた網で捕獲できるという非常に大雑把なもので、結局、一羽の茶色い野ウサギを捕獲、喝采。業者さんが連れて帰った。全生徒は一人あたり500gの牛肉を与えられ、丘の上では一大バーベキュー大会が行われたと…。まぁ、極めて野蛮な高校だったとしか思えない。
 「サンセット・サンセット」は歌ものとして自分ではかなり気に入った作品ゆえ、ソロの弾き語りでも取り上げることが多い。キーボードでできた曲というのもあるが、サビ手前までのコード進行は今聴いてもなかなかにひねくれていて面白い。

“Home Demo覚え書き”
 ちょうどビートルズの『ホワイト・アルバム』再認識中だった。それも「ワイルド・ハニー・パイ」あたりのやばさのみに焦点をあわせたかのような「60W」。こういう宅録感覚をそのままレコード化しようとするユーモアは『Girl Friend Army』までのかちっとした構築とは真逆の発想にて、ロウ・ファイが魅力だったあの世紀末のインディーズ・ブームを小声で予言していた曲と言えなくもない。Home Demoがやけに出来過ぎなのはいつものことだったが、スタジオでは学生以来使ったことがなかったアープ・オデッセイをレンタル、その新鮮な手触りもあって遊び気分のまま新たな音を積み上げることができた。
 メンバー全員がそれぞれの機材を駆使して作り込んだHome Demo時代でもあった。自分の曲は自分で最後までコントロールしてゆくというのがバンド内の基本ルール。特に『booby』期は内省とバンドのダイナミズムがそれぞれの曲で絶妙に噛み合わさっていた。個人的にはカセット8trのTASCAM488で仕上げた「ダイアモンド・ベイ」のHome Demoが史上最高の出来だと思っている。疲れ切ったプロモーションの中でぼくが救われた音楽はビル・エヴァンスとジム・ホールの共演盤『アンダーカレント』だった。雪の日、秋田のタワレコでそのCDを買ってすぐに列車で聴き始め、そのままボーっと何度も聴き返したことを思い出す。この曲は珍しくもそんなジャズの思い出を手探りで彷徨った実験作だけど、不器用な片手弾きのピアノがここまで気分よくハマるとは…。それも偶然とはいえ、このHome Demoを聴くと「よくできたなぁ」と自分でも珍しく感心してしまうし、バンド・ヴァージョンに比べると「ちゃんとやろう」という力みがない分、脳裏に浮かぶ夜空はリアルに映る。
 このDisc-2に収められたHome Demoはすべてカセット・マスターを使用。09年11月、TASCAM488にあえて当時使っていた古いエフェクターを接続しリミックス、ProTools経由で新たなデジタル・マスターを起こした。

※PDF バージョンはこちら(▼)pdf[pdf:187KB]
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