ザ・コレクターズ
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●前作『東京虫BUGS』から2年ぶりに新作『青春ミラー(キミを想う長い午後)』をリリースすることになったんですが、この2年間は別に休んでいたわけじゃなくて、ライブにテレビ出演に結構、忙しかったんですよね。
加藤:ご存知の通りCDの売り上げ自体が全然活気がなくなって、もうほとんどのバンドが休むか解散していく中で、2003年から所属事務所を変えなくてはいけなくなって。今までにないくらいいろんなことを(古市)コータローくんとかと考えなきゃいけなくなって、とても1年に1枚アルバムを作るなんていうことはできなかったね。もうやることが増えすぎちゃったから。前は1年でやれたことを今は2年かけないと、とてもじゃないけどやれない。
●じゃ、一度、バンドの運営体制を仕切り直すっていう感じがあったんですか?
加:凄くあった。事務所が替わるときに仕切り直しっていうか。
古市:出直しって感じじゃない?
加:デビュー当時みたいな「浮かれ度」がないだけに辛かったね。
●逆にいうと、他人任せにしていられない分、コレクターズをやることに対して腹をくくれたんじゃないですか?
加:初めて自分で確定申告した感じだよね(笑)。
古:そうだよね(笑)。
加:今までは会社に税金の処理とかさせてたのが、領収書も全部自分で集めてやんなきゃいけなくなるっていう。でも案外そういうことをしないで、世の中の人って死んでいっちゃうんだよ。なんか、ちっちゃなシステムでも人が生きていくのは、案外大変なんだなっていうのが知れたのが何よりも良かったね。
古:毎日あれだよ、ホームレスになる覚悟で。
加:だから、それはある意味なんだろうな、基本なんだな。生きる基本が知れたのが一番よかった。
●そういうことがあると、バンド活動に対する意識って激変するんじゃないんですか?
加:全部、変わるよね。意識も変わるし。変えざるを得ないもん。だって頼るところが何もなくなっちゃったんだから。
●よくそこを乗り越えられましたよね。
加:街で潰れそうなオモチャ屋さんとか、案外ずっと生き残ってんじゃん。あれはカミさんが呑気なんだろうな。それと同じだよね。俺は結構ダメージくらっちゃったんだけど、コータローくんが呑気で。裏ですごく動いてくれてたんだろうけど、表向きは呑気に見せてくれんのよ。「来年になりゃ大手レコード会社が『ハンコ持ってきてくれ!』って言うに決まってんだから」みたいな(笑)。そんな感じだったから。「そんなこたぁねえだろう」と思っても「母ちゃんがそう言うんじゃしょうがねえなぁ」みたいな(笑)。バンドじゃなかったらとっくに終わってたね。
●コータローくんの中では、このバンドは絶対に上手くいくんだっていう確信があったんですか?
古:つーか、(バンドを)始めた時点で就職したような感じなのね。だから「そういうところで終わってはいけない」っていう風に思ってるわけよ。会社と一緒でさ、「潰しちゃいけない」って思ってるわけよ、基本的に。
加:コータローくんは若い時代に苦労をしたからね。世の中のノウハウを、案外知ってたんだよ。俺は考えてみたら、普通に大学を出て普通に就職して、で、今度は「就職先がテイチクレコード(※コレクターズの最初の所属レコード会社)になりました」みたいな、そんな感じでデビューしていくからさ。「次はコロムビアで」みたいな。スルスルいっちゃうから、案外苦労してないんだよね、そういった意味では。
●ところがコータローくんは……
加:高校中退して、(家を)飛び出して、サリンジャーみたいなことになっちゃうわけじゃない?
●経験を積んだコータローくんが率先してバンドの苦境に立ち向かったわけですね。
加:コータローくんがいなかったら、(バンドの)形が変わっていただろうね。面白いもので、(バンドが)上手くいっているときは罵り合いなんだけど(笑)、案外まずい時に力を貸せるのがホントのバンドっていうか。そこまで情熱があったんだなっていうのが、初めてわかったね。
今回の新譜を出すとき、コロムビアの社長に直談判したんだよ
●ということは、今まで以上にバンドをやる覚悟ができたわけですよね。
加:覚悟も何も、コータローくんにだって「40過ぎたらもう求人欄見たってロクなところないよ、加藤くん」なんて言われちゃって(笑)。
古:俺、もう求人欄見るの、やめたもん(笑)。前は趣味でさ、居酒屋とかで、「日刊ゲンダイ」とかの求人欄を見るのが好きだったのよ。だんだん年齢(制限)が駄目になってきちゃってさ。こりゃもう逃げ場ねえなって。
加:「リーダー、もうないよ」って言われて(笑)。
●だけど、テレビでも何でも、それこそスルスルって器用にこなせてるように映ってるから、全然、ピンチな感じはしませんでしたけどね。『ロックの学園』もポッドキャストも。ポッドキャストに至ってはiTunesの2009ベスト25に選ばれたし、普通に考えると、バンドは順風満帆ですからね。
古:いや、だからその辺は向き不向きであってさ。「向いてるな」って思ってるのよ、我々は。だから(テレビやポッドキャストを)やってるの。これが「不向きだな」って思ってたらね、「まあ、ここらでやめときますか」って話になるわけよ。
加:だって、(バンドが)こんな状況で「NHKに出てください」とか言わないじゃん。そんなあっぷあっぷしてる人にさ。でも、やっちゃうんだよ、できちゃうんだよ。これがもう才能なんだよね(笑)。
古:モッズだったからさ、(あっぷあっぷしたところを)見せないようにするわけよ。
加:ヤセ我慢(笑)。ヤセ我慢の美学をモッズ時代に持ってたから。金なんかなくたってスーツとか作っちゃうわけだよ。細いスーツでさ、座れないようなスーツでさ、くたびれても「ん? くたびれてないよ」って(笑)。
古:そうそうそう(笑)。
加:「武士は喰わねど高楊枝」っていう、あの精神があったから。表向きでは「順調ですよ」っていう。
古:「金は後からついて来る」っていうのが俺らの考えだからね。あと「棚からボタモチ」ね。
●それを言うなら、「芸は身を助く」でしょ(笑)。
加:今回の新譜だってアレだよ、コロムビアの社長に直に会いに行っちゃったんだから。
●マジで? 直談判したの? 知らなかったなあ。
加:そんで「どうすんの? コレクターズ」って言っちゃって。「2枚契約だったのに1枚しか出してないよ」とか言って(笑)。「それは前の社長の時(の約束)ですから」って。「イヤイヤイヤ」なんて言って。
●凄いね。そんなことやってたんだ!?
古:悪いこと思いつくんだよ。
加:そう、思いつくの、どんどん。「社長に会っちゃえばいいんじゃない?」って。でも、会いに行っても十中八九、駄目だろうと思ってたの。このご時勢だし。「10万枚売れる人しかやりませんよ」みたいなね。
●出版業界なんか、まさにそんな感じだもん。
加:でしょ? そしたら「あ〜、いいんじゃない?」って話になって(笑)。アルバムの発売日決まっちゃって。曲、1曲もないんですけど、みたいな(笑)。
●やるなあ、コレクターズ。
古:『アンヴィル!』なんか観て笑っちゃったもん、俺。「全然、普通のことだよ、これ」と思って。
●カナダのヘヴィメタル・バンドのドキュメンタリー映画ね。
加:だって俺、アルバム作るからと言って、お姉ちゃんが、金、出してくれないもん。
●姉貴かなんかがレコーディング費用を工面するんだよね。ヨーロッパ・ツアーはファンが仕切るんだよね。
加:お姉ちゃんがお金出して、ファンがワールドツアー仕切ってくれたらね、俺たちなんか頼っちゃうよ。居ないんだから、そんなの。アンヴィル以上ですよ。
コレクターズはあまりにもオリジナルで強烈すぎるんだよ
加:やっぱ面白いんだろうね。本当にオリジナルっていうかオンリー・ワンなんだろうね、コレクターズっていうバンドは。そう強く感じたよ。結局、フォロワーもいないし、フォローできないし。あまりにも強烈すぎてね、わかんないから。とっつきにくいからファンもガーンとは増えなかったけど、それで食いついたファンは常連になっちゃったからね。(気づいたら)俺たちじゃなきゃ駄目だっていうような奴が根底にごっそりいたんだよね。他のバンドはもう右行ったり左行ったりするようなファンが多かったじゃない? だからサッっといなくなるんだろうけど。だから、その辺が良かったんじゃないの?
●前作の『東京虫BUGS』が凄くいいアルバムだったってことも大きかったように思うんですが。
古:ある意味、『東京虫BUGS』をプロモーションする2年だったよ。
加:それはある。
古:(ライブの)選曲的にも『東京虫BUGS』を中心に組んできたしさ。
加:前みたいに「CD生命はリリースしてから3ヶ月で、次、また1年後に」みたいな作り方してちゃ良くないなと思って。消耗するだけだし。俺たちはもっとじっくり聴いてもらえるものを作ってるわけだから。1年かけて作ったんだったら、1年かけて売っていくみたいなね。そしたら作ったり売ったりで、最低2年はかかるわけですよ。
古:ローリング・ストーンズのスタイルだからね、俺らは。2年間のワールド・ツアーで(新譜を)売るみたいなスタンスなわけですよ(笑)。
加:そういうスタンスを作った方がいいと思う。そのかわり、作品に関しては、いつ聴いても「いいね」って言ってもらえるような、妥協知らずのものを作ってね。それをじっくり売っていくような、そういうスタイルにしていかないと、バンドももたないし。だからもう「出せばいい」ってもんじゃない。出したらやっぱり売っていくっていう。ポップ・ミュージックをやっている以上は「売れてナンボ」だから。
古:そうなんですよ。それが評価なんですよ。
●一瞬だけ売れて、明日になったら誰もいなくなっていたっていうのはまずいけど。
加:だからその「明日になっていなくならないようなもの」っていうのは作品の中に込められていると思うんだよ。だからそういうものを作っていかないといけないな、と常に思ってる。売れてヒットしたものだって、忘れ去られるものも沢山あるじゃない。
●そういう意味では、今回の『青春ミラー(キミを想う長い午後)』も、凄くいい作品なんですよ。この作品のアイディアは以前からあったんですか。
加:全然。
●じゃもうすべてが社長への直談判以降に動き出したんだ?
加:だから才能あるなと思って、ちょっとびっくりしてるんだよね。
●(笑)。
古:でももともと締め切りがないと作らないタイプだからね。
●あ、そうなんだ?
加:俺はね、駄目なの。追い込まれないと何にも出来ないタイプ。
●メンバーは何も言わないんですか? 「リーダー、そろそろ新曲を」みたいな話にはならないんですか?
加:いや、散々言われたよ。「渋谷クアトロ(のライブ)1回につき、新曲1曲ずつ披露するんだよ」って言われたのに、(マンスリー・ライブを)5回やって1曲しか出来なかった(笑)。
●コータローくんはケツ叩かなかったの?
古:駄目なものは駄目なんだからさ(笑)。
加:駄目な子なんだよ。「1曲作ったからいいでしょ?」って。
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2年振り17枚目のオリジナルアルバム堂々完成。未だ色あせぬロックがここにある!
ALBUM 2010/04/07 Release
青春ミラー(キミを想う長い午後)
COCP-36086 / ¥3,150(税込)
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