ザ・コレクターズ

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  • 『青春ミラー(キミを想う長い午後)』コレクターズ・加藤ひさし&古市コータロー・ロングインタビュー 

    「コレクターズ・パターン」っていうのが型になったら、それはそれでいいんじゃないかな

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    ●コレクターズの独自性に開き直った宣言が「孤独な素数たち」(♪試聴♪)に封じ込められていますよね。
    加:「素数」で歌を作ったのは俺だけだろう、みたいな。
    ●交わらないよ、と。
    加:交わらないよ。全然。2と3しかないんだから。一人くらいしかいないんだよ、オレを解るのは、みたいな。でもこういう歌はさ、コレクターズじゃなきゃ歌えないんだよ。誰も歌えない。割り切れない世の中のことを歌った人は沢山いたけれど、それを素数に例えて歌うっていう人は、俺とケイト・ブッシュしかいない(笑)。彼女はπの歌をうたったけど。円周率の歌を。
    ●結成して24年経って、今でもちゃんと独自性を掲げているんだぞ、と、わざわざ宣言するところが面白いですよね。
    加:それがコレクターズの生命線だよね。だって後にも先にも真似できないものを作らなきゃ。永ちゃん然り、真似して出てくる人はいても、全然もう格が違うじゃない? ああいうクッキリした人しか、世の中必要じゃないんだよ。ブルーハーツもそうだったじゃない? フォロワーみたいな人がいたけど、全然、格が違うじゃない。コレクターズもそういうバンドになってる。だから、あとはこれをどう気に入ってもらえるかっていうところだけだよね。
    ●「コレクターズっていうバンドはこういうもんだ」っていうのを前作あたりから、ちゃんと言い始めた感じがしますよね。
    加:だから、今までにいろんなバンドがいろんな歴史を作ってきて、いろんなバンドのパターンみたいのがあるけど、コレクターズみたいなバンドがいてもいいんじゃないの?っていう。「コレクターズ・パターン」っていうのが型になったら、それはそれでいいんじゃないかな?って思うようになったんだよ。
    ●それは凄く面白いですね。
    加:だから、これからデビューするバンドがいて、レコード会社の人たちが「いいじゃん、コレクターズみたいなパターンでさ」って言うような(笑)、「23年もやってんだよ、アイツら」って言って、「ヒット曲なんて1曲しかないんだよ。それもたいしてヒットしてないんだよ」って。「でも面白ぇんだよなー」って。「コレクターズ・パターンで売ろうよ」みたいな。自分たちがそう言われるように出来るのかなっていうのも楽しみではあるね。
    ●自分たちがやっているスタイルを自分たちでちゃんと評価できるところに来たんですよ、きっと。
    加:(今年で)50歳じゃん。もうジタバタしてもしょうがないってのはあるんだよ。ね、コータローくん?
    古:そうだよ。もう後に引けないし。しょうがないよね。だって、今さら「間違えたな」って言っても、遅いんだから。いかに肯定して生きるかなんだよ、その辺は(笑)。
    加:やっぱりキーボード入れておけばよかったな、みたいな。

    古:だから、自分たちのことを「正しかった」という風にするために、やってるわけですよ。笑ってぽっくり死ぬためにね(笑)。
    加:みんなに勇気を与えるバンドになってきちゃって。「加藤も頑張ってるから大丈夫だ」みたいな(笑)。
    ●(笑)。
    加:いいんじゃない? 俺なんかコレクターズの存在自体が新しい形だと思ってるよ。やり方とか。いろんなところにぶつかって来たけど、別に大手プロダクションに所属したこともないし。なんか面白い。
    ●ちゃんとリスナーも評価してくれてるしね。
    加:そうだね。
    古:新曲も喜んでるしね。
    加:だから、俺たちに触れて、みんなユーモアをもった暮らしをしてくれればさ、案外、世の中もいいんじゃないの? 「死にたい、死にたい」って言わなくなるんじゃない?

    古:そうだね。



    渋谷クアトロでのマンスリー・ライブは一番やりがいがある

    Photo●今年も渋谷クアトロで5ヶ月連続のマンスリー・ライブをやるんですけど、新作を出していない間も、ずっと続けてきて、しかもライブの動員は右肩上がりだという。
    加:美輪明宏さんも言ってたけど「最後は人柄」っていうかね。
    ●え、どういうこと?
    加:やっぱコータローくんの人柄でね、仕事取って来ることが多いの。やっぱ営業なんだよ。だって渋谷クアトロなんか貸してくんないよ。金土日なんか、みんながやりたがってるのにさ。
    ●そういうことか。言われてみればそうですよね。
    加:「1年の半分、金土日ください」って言ってさ。「え〜?」って言うよ、普通。「2日くらいでいいんじゃないですか?」っていうところをさ、「いいですよ。」って(笑)。
    古:クアトロの(マンスリーの)最後の月の時に、翌年のスケジュールもらっちゃってんだから(笑)。
    ●あははははは。
    加:もらっちゃってんだから、打ち上げでもう(笑)。「じゃ来年は4月から8月」とか言って(笑)。
    ●だけど、内容もいいからね。毎年、渋谷クアトロのマンスリーを大事にしていることはもう選曲や演出でわかるしね。それがちゃんとライブ・ハウスにもオーディエンスにも伝わってると思う。
    加:それはやらないとやっぱり。
    ●その努力が報われてると思うんですよ。
    加:それは報われてる。
    古:すぐバレるからね、手を抜くと。
    加:だから必死だよ、こっちもね。クアトロは何度も重ねれば重ねるほど、ネタがなくなるから。ただ曲だけはあるから。「あれやってないからこれやろうよ」みたいな。
    古:いつも考えてるもん。
    加:もう他のバンドを観にいくと「またこれかよ」っていうのが多いよ。

    ●コレクターズの渋谷クアトロは、その辺りの世界観の作りがひじょうに凝っているというか。練り込まれてますよね。
    加:そうなんだよ。
    古:一回ぽっきりだからね。ツアーじゃないから。こっちは真剣なんだよね。
    ●で、今年も渋谷クアトロのマンスリーが始まるんですけど。
    加:やります。4月から。
    ●今年も創意工夫で。
    加:もう、全然、創意工夫してますよ。しかもやっぱり一番のバロメーター。毎年、同じにやってて、(オーディエンスの)人数がはっきりわかるわけだから。それが人気のバロメーターになるわけだから。だから一番やりがいがある。
    古:だから初回はコケられないんだよ。4月の一発目は。これ、コケると後は来ないから、みんな。「あと4回来ないと!」って思わせないといけないんですよ。だから、とくに気をつかうね、一発目は。最後(8月)はもう「みんなでハッピーに終わろう!」でいいんだけど。
    加:最後はみんなお祭りだからさ、ご祝儀持って現れるわけだよ。「今年もよくやりました」ってね。
    古:「また来年!」っ言ってさ。
    加:去年と比べて動員数が増えていれば、それでいいわけだよ。これが下がってたら駄目。

    古:シビアなところなんだよ。
    ●コアなファンに向けても創意工夫をしなければいけないのと同時に、動員を増やすためには間口を広げなくてはいけないわけですからね。
    加:だから新しく来た人が「何だ、これ?」みたいな世界に突入しちゃっても困るし。
    古:一番辛いところなんですよ。
    Photo●4月のキックオフはどういう感じに?
    加:まだ全然、決めてない。
    古:渋谷クアトロのシリーズって特殊だからさ、「新譜出ました!」ってやってもみんなあんまり満足してくれない。「それはそれで、また別の機会を設けてください」っていう。
    加:「新譜は新譜でやってよ」って(笑)。
    古:「クアトロはクアトロでお願いしますよ」っていう(笑)。
    加:「まだ(新作を)全部聴いてないんだよね」って(笑)。
    ●だいぶ贅沢だよね、そりゃ。
    加:贅沢だよ、リスナーは。
    古:だって俺が誰かのライブ観に行ったって、贅沢だもん。
    加:ローリング・ストーンズが新譜出してさ、「頑張りました、新譜、全部やります」って言われたら「え〜!」ってなるよね(笑)。
    古:キース・リチャーズだって言ってたじゃん。「誰も新曲なんか聴きたくねぇ」って(笑)。だから古い曲(中心)でもさ、「ああストーンズ新譜出たんだ。聴いてみよう」と思えばいいんだよね。
    加:そこのさじ加減が難しいんだよね。だから、そのためにも2年は必要なんですよ。全部(の曲を)みんなに紹介していくのには。
    古:宣伝しすぎも逆効果なんですよ(笑)。
    加:みんな、もうね、(メディアを)疑ってかかってるから。だから、2年で一作品をどこまで売れたかっていうような評価をするような感じにしていかないと。

    古:そうそう。だから「あまり早めに返品するな」ってことを言いたいわけですよ(笑)。
    ●それはCDショップに対するメッセージね(笑)。
    加:「返すんじゃねえぞ!」と。「置けよ!」と。


    25周年のお祭りで『青春ミラー』を鳴らさないといけない

    ●えっと、今年はバンド結成24年なんですよね?
    古:来年が25周年。
    ●来年、なんかやりましょうよ。大きなライブを。
    加:だから松本社長に「どこでできんの?」って。このね、上昇のカーブを見ながら行かないと、ねぇ?
    ●慎重なんだね。
    加:そりゃそうですよ。
    古:今、勝負できる状況じゃないんですよ。援助金は出ないしね。
    ●手弁当でどこまでできるかっていうところが勝負なんだ?
    加:そういうことですよ。その限界に挑戦してんだから(笑)。
    ●ある意味ロックだよね。
    加:ロックだよ。アンヴィルに見せたいもん、俺。逆に「俺たちがいるよ」って。多少、無理はしたいんだけどね。会場的にも、やり方的にも。だってさ、お祭りなんだもん、5年ごとの。これはやっていかないと。節目、節目で。
    ●20周年は日比谷野外音楽堂でやったんですよね。
    加:だから結婚式だって、盛大に開いた人の方が離婚しないんだから。
    古:しないよね。もったいなくてね。
    加:もったいないし、お祭りを大事にするんだよね。だから、そういう人はその後も5年ごとにスィート・ダイアモンド・リングをあげているわけですよ。ところが「お金かかるから結婚式なんかやんないよ」っ言って結婚した奴に限って、すぐ離婚ですよ。
    古:籍だけ入れちゃうタイプね。
    加:籍だけいれちゃうタイプ。世の中、そういうもんなんだよ。だから無理してでも結婚式とか派手にやる奴の方が離婚しない。

    ●それがバンドを長く続けるコツなんだ?
    加:コツ! コツだし、村祭りにしてもなんにしても、あれって大事なんだよ。年に1回ハメ外さなきゃ、農作業できないんだから、みんな。ガス抜きでもあるし、だからお祭りって絶対、必要なの。
    ●じゃ2011年は是が非でも…
    加:やらなきゃいけない。
    古:どの規模でできるかが楽しみだよね、だから。
    加:でも、それは無理がつきもの。お祭りってのは、絶対、怪我もするし。

    ●武道館なのか野音なのか、AXなのかBLITZなのかコーストなのかわかんないけど。
    加:わかんないけど、でもその状況においてのワンステップ上のところでお祭りをしないといけない。
    ●そう考えると、ますますこのアルバムは重要ですよね。
    加:もちろんそうだよ。
    ●これを鳴らさないといけないわけですね、お祭りで。『青春ミラー』を。
    加:もちろん鳴らさないといけないわけですよ。でも、そういうのが大事だなって、齢とったら余計思ってきたね。そこでバンドのメリハリも付くし。次への目標ができるんだよ。
    ●いいですね。今日はいい話が聞けたなあ。
    加:うん。あとは心配なのは病気だけ(笑)。
    ●なんだそりゃ(笑)。どういうオチなんだよ、このインタビュー(笑)。
    加:これだけはほんと。ね、コータローくん。
    古:ほんとだよ。
    加:元気なうちは何だってできちゃうんだから。

    【完】

    <<<◆Part2
  • 2年振り17枚目のオリジナルアルバム堂々完成。未だ色あせぬロックがここにある!

    ALBUM
    2010/04/07 Release
    青春ミラー(キミを想う長い午後)
    COCP-36086 / ¥3,150(税込)
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