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エリアフ・インバルの言葉
「新ウィーン楽派について」
新ウィーン楽派は、20世紀において、いやもしかするとあらゆる世紀を通じて、最も偉大で最も影響力の大きな音楽革命を成し遂げたと言えるでしょう。シェーンベルク、ベルク、ヴェーベルンの音楽は、今日でもほとんどの音楽愛好家にとって「現代的」に聴こえるとしても、その音楽言語は、バッハ、古典派の巨匠たち、ブラームス、ワーグナー、そして特にマーラーらが生み出した究極の「伝統的」音楽をそのまま進化させ、発展させたものなのです。シェーンベルクと彼の友人たちは彼らが崇拝するマーラーの音楽を編曲してよく「音楽の夕べ」で演奏していました。マーラー自身も、シェーンベルク、ベルク、ヴェーベルンの3人の作曲家から何かすごいことが生まれつつあることを感じ取り、それが何であるかはまだ理解していなかったにしても、興奮を感じてもいました。マーラーがもっと長生きしていたら、彼ら3人の作品をニューヨークをはじめ各地で指揮したことでしょう。
シェーンベルクの音楽にある桁はずれに強烈な感情と情熱、驚くべき個性と革新の精神は、シェーンベルクにポリフォニーと半音階の集中的な使用を促すことになり、その結果として、すべての不協和音に(のちには音組織の12音すべてに)等しい権利を与える新たな音楽語法が生まれ、音列と音楽素材の絶えざる変形による音楽構造がもたらされました。そうしたとどまることを知らない進化が、音楽における最大の革命を引き起こしたのでした。
驚くのは、シェーンベルクは非常に伝統的な作曲家だったことです。つまり彼はバッハ、ベートーヴェン、ブラームス、マーラーの方法を使い、それらを生き返らせて燃え立つ“炉”に変え、それによって、調性と構造と音楽表現のすべての限界を破壊し、粉砕したのです。
そしてシェーンベルクにはたまたま数人の天才的な弟子がいました。彼らはシェーンベルクの教えを彼らなりのやり方で発展させ、そうして「新ウィーン楽派」が生まれました。この楽派は、当時から今日まで、音楽に大きく深い影響を与え続けています。ヴェレス、マデルナ、ノーノ、ブーレーズ、シュトックハウゼン、ベリオ、ツィンマーマン、あるいはポーランドの作曲家たち、さらにはヘンツェやゲルハルトといった作曲家たちの音楽は、シェーンベルクと彼の革新なしには想像することができません。ヴェーベルンは沈黙の技法とミニマリズムを発展させ、そこからは当然のこととして革新の連鎖が生まれました。ベルクはいかにして調性が12音音列と共存可能であるかを示しました。あのストラヴィンスキー──20世紀音楽におけるもうひとつの革命を成し遂げ、「ロシア=フランス派」をはじめとする“民族色”の強い一連の偉大な作曲家たちを生み出した──でさえ、晩年には新ウィーン楽派の革新を採用しました。
まとめれば、新ウィーン楽派の音楽は、20世紀前半に生まれた中で、精神的にも感情的にも最も濃密で深遠な音楽と言うことができます。
この音楽の受容の歴史はいまだに進化の途上にあり、また聴き手に要求することも多いため、この音楽を、古典派やロマン派の音楽と並ぶ中心的レパートリーとして広範囲の聴衆が吸収できるようになるまでにはもう少し時間が必要でしょう。
『新ウィーン楽派管弦楽作品集』楽曲情報は
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