カイルベルトのマイスタージンガー、クンツのドイツ学生歌・・・。
語り継がれる名演・名盤がお求めやすい廉価BOXで再登場!
DENON名盤BOX ---全10タイトルリスト
エリアフ・インバルの言葉
「ブラームスについて」
若い頃にブラームスの一連の交響曲を初めて聴いた時のことは、この上なく強烈な、圧倒的な体験として私の中に今でも残っています。そこには“ふたつの世界”の最高の出会いがありました。すなわち、動機に基づいた“古典的”な展開の手法と、ドイツ、ウィーン、ハンガリー民謡やジプシー音楽に基づいた“ロマン主義的”な感情表現の広がりのことです。そしてそのような民族音楽的な起源にもかかわらず、そこでは人間の希望と欲望、“変容”、そして自然への愛がきわめて高尚な表現を与えられ、宇宙的とも言える次元に到達していました。第4交響曲の第2楽章、その第2主題の再現部を初めて聴いた若い私は、“その時”が来たら、この音楽のこの瞬間を指揮しながら現世に別れを告げ、天国に向かう途中で蒸発するように宙に消えてしまいたいものだと思ったのでした。この夢は今でも変わってなく(非常に遠い将来であることを願っていますが)、ただ、最期の瞬間に指揮すべき曲目として、マーラーのすばらしい「アダージョ」群と、ブルックナーの一連の交響曲が加わりました。
マーラー、シェーンベルク、ブルックナーがブラームスと同じ時代に生きていたこと、そしてさらにマーラーとシェーンベルクの場合は、ブラームスと実際に会い、話し、議論までしていたことには驚きを覚えずにはいられません。
有名な評論家ハンスリック──ブラームスをアンチ・ワーグナー、アンチ・ブルックナー的な作曲家として、従って“反進歩主義的”な作曲家として利用した──はブラームスに「伝統的な作曲家」というイメージを貼り付けましたが、私たちは、アルノルト・シェーンベルクが1933年に『進歩主義者ブラームス』と題して行った有名な講演以降、ブラームスが実は前衛的な作曲家だったことを知っています。そして彼が前衛的だったのは、不協和音によってではなく、その後のマーラーそして第二次ウィーン楽派への道を開いた、「絶えず変形し続ける動機」に基づいた驚くべき展開手法によってでした。そのような点から見るなら、ブラームスは、古典派・後期ロマン派と、現代のセリー音楽の作曲家たちとの転換点にあった作曲家だったと言えるでしょう。
『ブラームス交響曲全集』楽曲情報は
こちら▲