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上岡が秘められた音楽ドラマに斬新な光を当てる感動のR.シュトラウス!
R.シュトラウスのオーケストラ曲の中でも最近とみに脚光を浴びている《家庭交響曲》を、上岡は丹念に読み込み、繊細かつ大胆に表現します。手勢ヴッパータール響との息のあった演奏から、ユーモラスかつ奥深いシュトラウスの音楽が、オペラの情景を観るように生き生きと甦ります。
リヒャルト・シュトラウス:家庭交響曲 op.53
[総収録時間:52.33]
★指揮:上岡敏之、ヴッパータール交響楽団
ライヴ録音:2009年4月19、20日 ヒストーリッシェ・シュタットハレ(ヴッパータール)
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ドイツを本拠に、オペラとコンサートの分野に活躍している上岡敏之――。 あまたの日本人指揮者の中でも、最も個性的な「楽譜読み」をする人であろう。彼は、決してありきたりの解釈で演奏を創ることをしない。テンポや、楽器の響きのバランスや、音色などに、他の指揮者とは全く異なるユニークな試みを施し、常に新鮮なアプローチを行なう指揮者なのである。彼の指揮で聴くと、聴きなれていたはずの名曲が、予想外の表情を以て現われて来る。それがまた、すばらしく面白いのだ。スリリングな指揮者、と呼ばれるゆえんである。 この《家庭交響曲》の演奏も、その例に漏れない。彼は、2009年4月末に東京で新日本フィルとこの《家庭交響曲》を演奏したが、その10日ほど前にドイツでヴッパータール交響楽団を指揮している。それが、ここに聴くディスクである。東京での演奏と同じように、かなり遅いテンポが採られている。51分強という演奏時間は、ブルックナーの《第7交響曲》を90分もかけて演奏した(通常なら70分程度)こともある上岡の面目躍如たるものだろう。 だが、その超遅テンポにもかかわらず、楽曲全体の構築バランスは明確に保たれていて、音楽はいささかも弛緩することはない。上岡は、この曲の演奏にありがちな外面的な威容と明るさを排し、翳りのある音色で全曲を統一している。「子守歌」や「アダージョ」における壮大な音の流れと、あふれるカンタービレの沈潜した美しさとは全曲中の白眉だが、しかしそこでは、これまでの和やかな《家庭交響曲》のイメージは覆され、異様な緊迫感に支配されたドラマティックな音楽と化しているのだ。紙と記号のみでできているスコアから、かくも個性的な解釈を引き出す上岡の新鮮な発想には、舌を巻かずにはいられない。 (音楽評論:東条碩夫) |