■らくだ
貧乏長屋に住むこの界隈で一番の乱暴者で嫌われ者、通称“らくだ”がふぐにあたって死んだところへ来たのが兄貴分の“丁の目半次”、そのらくだの死骸を前に葬式をどうしたものかと思案中だ。そこへ通りかかったのが人はいいが酒好きの屑屋、半次から脅され香典を集めに近所を回ることになる。しかし界隈の住人は迷惑顔だし、まして大家に酒や肴をせびるのは無理だと言うと、「じゃあらくだの死骸に“かんかんのう”踊らせるぞ」と、本当に踊らせて見せ、驚いた大家はすぐに酒、肴を届けたものだ。さて半次はその酒で通夜をするんだと、屑屋に無理やり酒をつぐ。最初は渋々飲む屑屋だったが酔いが回り始めると二人の立場が微妙に変わり始めた。
多くの落語家がこの噺を手がけているが、演じ方によって暗い空気になりかねないこのストーリーを、林家たい平は明るく聴かせる形にした。後半の酒を酌み交わすところでは、たい平の新たな工夫に思わず爆笑が起きる。
*かんかんのう:江戸時代に長崎経由で中国から伝わった俗謡、踊りとともに明治にかけて大流行した。
2009年10月4日 横浜にぎわい座「天下たい平 Vol.35」にて収録
■長命
「伊勢屋の若旦那がまた死んだ。」と妙なことを言いながらご隠居を訪ねて来た八五郎、実は迎えた婿養子が次々と亡くなったことを伝えたのだ。「どういうわけでそんなに早死にするんですかね?」という八公の問いに、ご隠居は「それはお嫁さんの器量が良すぎるので、まあ、ナニが過ぎるからだろう。」ということを遠回しに悟らせようとするが、これがなかなかわからない。ようよう訳が飲み込めた八公、うちへ帰ってかみさんを相手に自分も早死にかどうか確かめようとしてみたら…。
林家たい平はこんな大人の噺を明るい笑い満載に仕上げ、また収録部分にはないがマクラでふれた初めて見に来たお子さんを気遣いながら愛情たっぷりのギャグへと昇華し、この爆笑編に暖かみがさらに増した。
2009年1月15日 紀伊國屋サザンシアター「たい平発見伝 其の五」にて収録
2009年作品 本編74分収録
片面1層,チャプター有,メニュー画面
カラー/16:9LB
音声 ステレオ/ドルビーデジタル
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林家たい平が新境地を切り開いた「らくだ」とおかしさ倍増の「長命」が映像化!
落語家は新たに覚える噺に自分なりの演出を加え、高座にかけて行くのだが、林家たい平はそんな作業に対して常に真摯に取り組む落語家である。
この「らくだ」という噺にも新たな視点を持ち、見事な“たい平版「らくだ」”を作りあげた。そしてもう一席はちょっと大人の噺、何とも楽しい「長命」だ。