実家の本棚には、絵本作家・林 明子さんが描いた絵本がたくさんあって、妹と一緒によく読んでいました。お気に入りは『こんとあき』や『きょうはなんのひ?』でしたが、『あさえとちいさいいもうと』や『いもうとのにゅういん』(すべて福音館書店刊)も、作中の姉妹を自分たちと重ねて、幾度となく読んだものです。母も、林 明子さんが描く姉妹に私たちの面影を重ねて、購入してくれていたのかもしれません。
*右/『いもうとのにゅういん』作:筒井頼子 絵:林 明子 福音館書店刊 左/『あさえとちいさいいもうと』作:筒井頼子 絵:林 明子 福音館書店刊
息子を妊娠中に、子どもたちにもそんな存在になる絵本を選んであげたいと思い、『ちょっとだけ』(福音館書店刊)という絵本を購入しました。
『ちょっとだけ』は、赤ちゃんが産まれてお姉ちゃんになった「なっちゃん」が、赤ちゃんのお世話で忙しそうなママを見て、自分でがんばってみるお話です。牛乳が飲みたいけれど、赤ちゃんが泣いていてママは忙しそうだから、自分でいれてみたら“ちょっとだけ”いれられた。パジャマのボタンを留めてほしいけれど、ママは赤ちゃんを寝かせているところだから、自分でやってみたら“ちょっとだけ”成功した。そんな小さな成長が描かれています。でも、結局最後は“ちょっとだけ”ママに甘えるんですけどね。
*『ちょっとだけ』作:瀧村有子 絵:鈴木永子 福音館書店刊
作中の赤ちゃんとなっちゃんが、年のころもわが子と近そうなことから、つい娘と息子のことを想いながら読み聞かせをしてしまいます。また、表紙の赤ちゃんが持っている青いドーナツ型の、このおもちゃ。息子が持っているラトルにそっくりなのです。息子が産まれた次の日に、病院にお見舞いに来てくれた娘がプレゼントしてくれたものなのですが、実母曰く「お見舞いに行く前に一緒におもちゃ屋さんに行って、娘ちゃんが自分で選んだものなのよ」とのこと。息子にとって、人生で初めての贈り物でもありました。
*生後2日目の息子と、娘がおばあちゃんと一緒に買ってきてくれたラトル
そんな理由もあって、私は作中の子どもたちを娘と息子に重ねてしまいがち。そして読むたびに、「弟が産まれて、娘も娘なりにがんばっているんだろうな。娘のお願いになるべく応えてあげたいし、がんばる娘も応援してあげたい」と、背筋がしゃんとするのです。
当の本人も、絵本を読み出してから、今まで飲まなかった牛乳を飲みたいと言ってみたり、「娘ちゃんはボタンを全部ひとりでとめられるよ!」と見せてきたり、どうやらなっちゃんを意識している様子。夜、寝る前の絵本タイムにもよく持ってくるので、気に入っているようです。作品の最後に、なっちゃんとママがぎゅーっと抱き合うシーンがあるので、私たちも真似をして、ぎゅーっとしてから眠りにつくのがお決まりになっています。
出版元の福音館書店のホームページの紹介文には「弟が生まれて」という記載があるので、赤ちゃんは男の子かもしれませんが、作中では「あかちゃん」という呼称しか出てこないので、妹が産まれる、または産まれたご家庭にもおすすめの1冊です。ご自身のお子さんや、ご友人のお子さんに贈ってみてはいかがでしょうか。
平岩茉侑佳
<<<vol.5 | 特集TOPページ | vol.7>>> |