DIMMAK
ミラクルチョースケ パーレーン ディムマックサンプラー YOUNG PEPLE dimmakとは?
レッド・ソウル・コミュニティ

  (メンバー)
  ケヴィン・ディスコ :ギター/Arp Omni(アナログ・シンセ)/ヴォーカル
マット・ハウズ   :ドラム
1. I Want Your Sass / アイ・ウォント・ユア・サス    
2. C‘est la vie / セ・ラ・ヴィ    
3. Saturday / サタディ    
4. Quarkscrews / クォークスクリューズ    
5. Got the Piece of Mind (Shoot Me in the Fucking Head) 
 / ガット・ザ・ピース・オブ・マインド
 (シュート・ミー・イン・ザ・ファっキング・ヘッド)
 
6. The Shots / ザ・ショッツ    
7. Erehwonmorferaew    
8. Seizure / シーザー    
9. The Pulse / ザ・パルス    
 ※M-9→日本盤ボーナス・トラック

プロフィール

狂気的でノイジーなギターに、ソウルフルでファンキーなヴォーカルが重なり
Noise Rock、Disco Punk、Electronic Funk、Chaos Rockなどが混ざり合ったサウンドを紡ぎ出
Dance Disaster Movement 衝撃のデビュー・アルバム.。


2001年にケヴィン・ディスコ、マット・ハウズの二人でデュオ結成。
地元カリフォルニアはロングビーチのポスト・ハードコア・シーンに身を置いていたケヴィンとマットが、
「最高に狂ったダンス・ミュージックを作ろう!」をスローガンにダンス・バンドを組んだことにさかのぼる。

その後、アグレッシヴなライヴ・パフォーマンスが話題を呼ぶなど紆余曲折をへて、現在のインディー・シーンを沸かす注目バンドを数多く擁するレーベルDIM MAKと契約。

そして、2003年にデビュー・アルバムになる本作をリリース。
アルバムをリリース後は、サウス・バイ・サウスウエストにも出演し、シアトルのブラッド・ブラザーズやニューヨークのエックス・モデルズらと精力的にライヴをこなす。
昨年10月にはそのエックス・モデルズとともに初来日も果たし成功を収める。

現在DDMは、先月末にデトロイトの俊英ザ・ヴォン・ボンディーズとのライヴを終え(インディー時代はDIM MAKに在籍していた)、まもなく始まるピーチズとの西海岸ツアーが待機中である。

西海岸のアンダーグラウンドな音楽シーンがなんだかおもしろいことになっている――。
とても漠然とだが、そんなことを感じるようになったのは2年か3年ほど前のことだった。きっかけはエラス・エラッタというサンフランシスコのガールズ・パンク・バンドのファースト・アルバム『Other Animals』を聴いたことで、当時巷ではザ・ストロークスのブレイクに端を発する形でガレージ・バンド勢が幅を利かせ、さらにそれを煽るようにメディアが大量投下した粗悪なエピゴーネンに心底辟易していた僕は、その彼女たちのアヴァンギャルドにぶっ壊れた、しかしユーモアと不思議なポップさを湛えたサウンドに完全に魅せられてしまった。“シンプル”“ストレート”“剥き出しのまま”と書けば聞こえはいいが、要は「芸のない」勢いと口だけは達者な新人バンドが表舞台にあふれ返っていたなかで(もちろんいいバンドもいましたが)、“複雑”“ニヒリスティック”“底なしに闇雲”な彼女たちの「どこにも属さない」個性は、「ロックンロール・リヴァイヴァル」を標語に原点回帰と退化が峻別なく無批判に賛美された状況下においてダントツに異彩を放って感じられたのである(余談だが、彼女たちが当時ソニック・ユースのモスト・フェイヴァリット・バンドだったことも個人的には大きかった)。

その後、同じサンフランシスコのディアフーフやナンバーズ、サクラメントのヘラ、サン・ホセのシュ・シュ、サンディエゴのキル・ミー・トゥモロー、今はニューヨークで活動するヤング・ピープルやムーヴィング・ユニッツといった彼女たちと共振するユニークな才能を(遅ればせながら)発見するに至り、かの地で起きつつある/起きている「なんだかおもしろいこと」の予感は実感へと変わっていく。

また、その頃もっぱら音楽シーンの話題を集めていたのはニューヨークであり、そういう意味でも「カリフォルニア」という響きは自分にとって余計に新鮮に感じられたのかもしれない。しかしなによりそうした西海岸のバンドたちが興味深いのは、傍目から見ればまさに「シーン」と呼べるところのコミュニティやネットワークが存在しなが轣Aその音楽的な特徴については、実のところ「シーン」と呼べそうな統一性などまったく欠いている点だ。まるでサイケデリックな貼り絵のようにさまざまなカラーの個性が寄り集まり、それぞれがバラバラな方向を見つめているところに西海岸の「シーン」のおもしろさがある。たとえば、先日某誌でインタヴューする機会に恵まれた当の本人たちは、そんな西海岸の音楽シーンの独特なあり方についてこう話す。
「これは“音楽の不思議の国”みたいなものなんだよ。そこではただ、天才的な人間たちが純粋に自分たちのやり方でエキサイティングなことをやってるに過ぎないんだ。単にヒップだとか、特定のスタイルの復活だとかそういうんじゃない。

何か新しいこと、年が変わっても変わらク何らかの価値をもっていることをやってるはずなんだ」(グレッグ:ディアフーフ)「たしかに“西海岸らしさ”みたいなものはあると思う。でもそれは『何々ムーヴメント』とか名前が付いているわけじゃない。たとえばディアフーフがサンフランシスコから出てきても、その後に同じエリアから亜流みたいなバンドがいくつも出てくることはないっていう。ディアフーフは最高にディアフーフである、みたいなところでやってて」(ジェフ:ヤング・ピープル)彼ら西海岸のバンドたちについて共通して言えるのは、その「ジャンル」というものの概念を内側から食い破るような、極端から極端へとやすやす振り切れてしまう圧倒的に自由な音楽センスだ。ロックンロールもパンクもハードコアもメタルもエレクトロニカも、サイケデリックもジャンクもアヴァンギャルドも現代音楽もポスト・ロックも、分け隔てることなくまるごと呑み込んで咀嚼し、胃液もろとも吐き出してしまうようなしたたかで屈託のない豪快さが彼らにはある。

それは一方で、60年代や70年代のキャプテン・ビーフハートやフランク・ザッパ、レジデンツらの時代から脈々と受け継がれる西海岸特有の“音楽との付き合い方”とも言えるが、しかし同時にそれはあくまで先のグレッグやジェフが語るように「特定のスタイルの復活」でも「何々ムーヴメント」でもないオリジナルな地平で自然発生的に彼らのなかから生まれたものであるのは間違いない。ある意味“やったもん勝ち”とも言える無邪気さと、「何か新しいこと、年が変わっても変わらず何らかの価値をもっていること」を大切にするアーティストとしての自負の狭間で舵を取りながら、とことん我流のスタイルをつき詰める――そんな創作や表現というものをつねに「オリジナリティ」のレベルで審美し判定する文字どおりワン・アンド・オンリーな価値に情熱を捧げるような魅力を、彼らと彼らが創り出す音楽には強く感じるのだ。

さらに言えば、そのことにほかの誰よりもやっている彼ら自身がもっとも意識的であるところに、西海岸というロック史における「彼岸」が尽きることなく独創的な音楽を世に送り続けている秘密があるようにも思う。いずれにせよ、保守化のサイクルを飽きもせずに繰り返す今の音楽シーンにあって、かの地の自由奔放に歴史や“約束事”を更新するバンドたちがひときわ輝いて映るのは言うまでもない。

さて、前置きがだいぶ長くなってしまったが、本稿の主役であるダンス・ディザスター・ムーヴメント(以下DDM)もまた、そんな西海岸のおおらかなクリエイティヴィティを育む磁場が産み落としたバンドのひとつである。今回、日本盤としてリリースされる本作『ウィー・アー・フロム・ノーホエア』は、昨年1月に本国でリリースされた彼らのデビュー・アルバムになる。それは、いかにも今の西海岸のバンドらしい、ルール無視で前のめりに転がりまわるエクストリームな音楽センスが凝縮されたA唯一無比のまことに天晴れな作品だ。
まずはバンドの簡単なプロフィールから紹介しよう。
メンバーは、
ケヴィン・ディスコ:ギター、Arp Omni(アナログ・シンセ)、ヴォーカル
マット・ハウズ:ドラム
の二人からなるデュオ(ちなみに白シャツ・白パンが彼らのユニフォームだ)。彼らが結成されたのは3年前の2001年。地元カリフォルニアは
ロングビーチのポスト・ハードコア・シーンに身を置いていたケヴィンとマットが、「最高に狂ったダンス・ミュージックを作ろう!」をスローガンにダンス・バンドを組んだことにさかのぼる。その後、アグレッシヴなライヴ・パフォーマンスが話題を呼ヤなど紆余曲折をへて、プリティ・ガールズ・メイク・グレイヴスやザ・ゴシップなど現在のインディー・シーンを沸かす注目バンドを数多く擁するレーベルDIM MAKと契約。そして昨年、ツアー限定の7インチ(現在は入手不可)をはさんで、満を持して完成・リリースされたのが本作『ウィー・アー・フロム・ノーホエア』だ。

ちなみにアルバムをリリース後は、サウス・バイ・サウスウエストにも出演し、シアトルのブラッド・ブラザーズやニューヨークのエックス・モデルズらと精力的にライブをこなす。昨年10月にはそのエックス・モデルズとともに初来日も果たした。DDMのサウンドを形作るのは、アナログ・シンセやギターが繰り出すノイジーでパラノイアックなフレーズ、エッジィでトライバルに脈打つドラム、そして喚きたてるようにアジテートするヴォーカルだ。その歪でカオティックな三位一体によって、まるで非合法パーティーのような禍々しくも熱狂的な空間が立ち現れる――。
そこには、リスナーによってさまざまなバンドの名前を思い浮かべることが可能だろう。

そのイクレクティック(折衷的)なビート/リズムのなかに、ギャング・オブ・フォーやPIL、ア・サータン・レイシオ、ディーヴォといった80年代初頭のポスト・パンク/ニュー・ウェイヴの姿を。その神経症的なエレクトロニクスの響きのなかに、シルヴァー・アップルズやスーサイドの荒々しい血筋を。あるいはさらにさかのぼって、そのロウでハイヴォルテージなパフォーマンスのなかに、イギー・ポップやジェイムス・ブラウンに通じる本質的なワイルドネス/ファンクネスを嗅ぎ取るリスナーもいるかもしれない。一方、同時代的な視座からDDMのサウンドを見た場合、現在のニューヨーク/ブルックリン周辺のバンドとの共振性も指摘できるのではないか。たとえばラプチャーやレディオ4、あるいはライアーズといった、大雑把に言って「ディスコ・パンク」「ポスト・ノー・ウェイヴ」といったレッテルで括られたりするバンドたちとDDMは、もちろん異論もあるだろうが、ある部分で確実に“時代の気分”のようなものを共有しているように感じられる。また、お互いともそのルーツをハードコア/パンク体験に深く根ざしている点も共通項と言えるだろう。

しかし、おそらくDDMが、そうした過去のバンドによる参照においても、また同時代のバンドとの比較においても特別な個性をもった存在だと
思われるのは、彼らの意識があくまで「ダンス・ミュージックの創出」に向けられているゆえ、と言えるかもしれない。先に記したように彼らは
「最高に狂ったダンス・ミュージックを作る」ことを目的としたダンス・バンドとして出発している。そしてDDMを理解するうえで、あるインタヴューで語ったケヴィンの以下の言葉はとても興味深い。

「僕たちはダンス・ミュージックというものを“次の段階”に押し上げたいと考えている」続けて彼は「そうすればきっと新しいダンス(踊り)も創り出すことができるんじゃないかな」と話す。もちろん本作を聴けばわかるように、DDMがいわゆるダンス・ミュージックの範疇には留まらない多面性とポテンシャルを秘めた、むしろマーズ・ヴォルタなんかと比較されて耐えうる射程をもったバンドであることは明らかだ。
しかし一方で、彼らが自覚するように「新手のダンス・ミュージック」としても聴くことができることは、気が早いかもしれないが次回作以降の
彼らの行く末を占う意味で重要な手がかりだと言えるかもしれない。ちなみに日本盤のボーナス・トラックとして収録された“ザ・パルス”は、
今年2月に録音された現時_で彼らの最新音源になる。

 現在DDMは、先月末にデトロイトの俊英ザ・ヴォン・ボンディーズとのライヴを終え(彼らもインディー時代はDIM MAKに在籍していた)
、まもなく始まるピーチズとの西海岸ツアーが待機中。本国でのアルバムのリリースから一年が経ち、一定の評価を得た彼らにとって、今年はいろんな意味で飛躍の年になるかもしれない。どうやら新たな曲作りも順調に進めているようなので、もしかしたら今年の終わりか来年の頭にはニュー・アルバムも期待できるのでは。とりあえず、今回の日本盤のリリースを機に一人でも多くの真摯な音楽ファンが彼らを「発見」してくれることを、そして再度の来日公演をお願い申し上げたい。
                                                    
2004年4月 天井潤之介

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