五大陸を股にかけて活発な演奏活動を繰り広げる若き俊英ピアニスト、福間洸太朗。初の協奏曲アルバムは、21世紀のヤマカズこと山田和樹率いる横浜シンフォニエッタとの共演です。共に世界に飛び出しての活躍をみせる二人が意気投合して迎えた演奏会(シューマン)は、瑞々しく溌剌とした魅力に溢れ絶賛を受けました。初共演とは思えない音楽的相性の良さに、翌年の再共演(モーツァルト)がすぐに決定。ここに2公演のライヴ録音をまとめてのアルバムリリースとなりました。次代を背負って立つ同世代の俊英による演奏は、ライヴとは思えないしなやかさと緻密さを兼ね備え、アーティストの旬の勢いがストレートに感じられる佳演といえましょう。
1979年神奈川県秦野市生まれ。東京藝術大学指揮科卒業。指揮法を松尾葉子・小林研一郎の両氏に師事。2009年第51回ブザンソン国際指揮者コンクールに優勝、併せて聴衆賞も獲得。ただちにモントルー=ヴェヴェイ音楽祭にてBBC交響楽団を指揮してヨーロッパデビュー。同年、ミシェル・プラッソンの代役でパリ管弦楽団を指揮、すぐに再演が決定する。2010年には、小澤征爾氏の指名代役として、カザルスホールでの演奏会、スイス国際音楽アカデミーにて指揮したほか、小澤氏の推薦により、サイトウ・キネン・オーケストラを指揮、好評を博した。これまでに、NHK交響楽団をはじめとする日本国内主要オーケストラ、BBC交響楽団、フィルハーモニア管弦楽団、バーミンガム市交響楽団、パリ管弦楽団、トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団、ストラスブール・フィルハーモニー管弦楽団、モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団、スイス・ロマンド管弦楽団、ローザンヌ室内管弦楽団、ベルリン放送交響楽団、フランクフルト放送交響楽団、ケルン放送交響楽団、ザールブリュッケン・カイザースラウテルン・ドイツ放送交響楽団、ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団、エッセン・フィルハーモニー管弦楽団、ワイマール歌劇場管弦楽団、ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団、エーテボリ交響楽団、プラハ交響楽団、シンフォニエア・ヴァルソヴィア、サンクトペテルブルグ・フィルハーモニー交響楽団などへ客演。
2012年には、サイトウ・キネン・フェスティヴァル松本にて小澤征爾氏の代役としてオネゲル作曲「火刑台上のジャンヌ・ダルク」を、サントリー芸術財団サマーフェスティヴァルではクセナキス作曲「オレステイア三部作」を続けて指揮、好評を博した。スイス・ロマンド管弦楽団とのCD「フランス舞踏音楽集」を2013年に、「ドイツ舞踏音楽集」を2014年にペンタトーン・レーベルより続けてリリース。「オーケストラのとびらをひらく」出版(アリス館)。横浜文化賞文化・芸術奨励賞、出光音楽賞、渡邊暁雄音楽基金音楽賞、齋藤秀雄メモリアル基金賞、文化庁芸術祭賞音楽部門新人賞受賞。現在、スイス・ロマンド管弦楽団首席客演指揮者、日本フィルハーモニー交響楽団正指揮者、横浜シンフォニエッタ音楽監督、オーケストラ・アンサンブル金沢ミュージック・パートナー、仙台フィルハーモニー管弦楽団ミュージック・パートナー、東京混声合唱団音楽監督。2014年9月よりモンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団首席客演指揮者に就任。
ベルリン在住。
2012年にドビュッシー『水の反映』のアルバムを録音し、
水を巡る旅は、アルバムタイトルにもある私自身が編曲した『モルダウ』で始まります。深い山奥で湧き出した泉が川となり、チェコの首都プラハを通り、エルベ川と合流し、ドイツを北へ横断し、北海へ注ぎ込むまでの情景を描いた『モルダウ』、次に、6曲で一つの旅物語を成すビゼーの『ラインの歌』、シュルツ・エヴラーが豪華絢爛に編曲したシュトラウスの有名な『美しき青きドナウ』という風に、ヨーロッパを流れる三つの川を巡ります。
続いて、イタリアのヴェネツィアへ移動し、メンデルスゾーン、ショパン、リャードフという3人の『舟歌』をお聴きいただきます。これらは、嬰ヘ短調、嬰へ長調、嬰へ長調という調性の関連もさることながら、メンデルスゾーンとショパンは曲の終わりの音列が同じこと、そしてリャードフのメロディにはショパンらしさが垣間見えるので、敢えて3曲を繋げました。
その後、今回のテーマにピッタリなシューベルトの3つの歌曲編曲で、水に寄せて歌うドイツ歌曲の世界へ誘います。更に、『水の戯れ』とミュージカル『雨に唄えば』の主題を合体させたシャリーノのとても洒落た作品を挟み、フィンランド(カスキ)とイギリス(ベインズ)の郷愁溢れる海の作品をご紹介し、最後は、平和や愛を象徴する「白鳥」の素敵なピアノソロ編曲で旅は終わります。
2012年秋に『モルダウ』を初披露した際に、お客様から「ぜひCDに!」という声を沢山いただきました。このアルバムは、そういう声があって実現したものです。この場を借りて、皆様に心から感謝いたします。
クラシックの本場・欧米から、アジア列国、さらには南米で。世界五大陸をまたにかけ、その類まれなるパフォーマンスを披露し続けている、日本が誇るピアニスト一番星、福間洸太朗。超絶技巧曲を憎いほどにやすやすと弾く、その類まれなるテクニックはもちろん、時に曲に没入し、端正なその弾き姿の向こうに剥き出しの本性が現れる瞬間、官能とデモーニシュな感性が放射され、観る者を圧倒します。 日本のみならず世界で着実にスターダムにのしあがりつつある福間が、ドビュッシー、ショパンに続き3枚目のアルバムとして選んだのが、ロシアン・プログラム。メインである大曲「展覧会の絵」では、福間のドラマトゥルギーに満ちた圧倒的な構築力を見せつけてくれます。また、ピアノ史上に燦然と輝く超絶技巧曲「イスラメイ」での、自家薬籠中の弾きぶり、さらに圧巻は、ストラヴィンスキー「火の鳥」ピアノ編曲版。究極のピアノプレイが展開される中、まさに火の吹くような圧倒的なクライマックスを築き上げます。
福間洸太朗 (ピアノ、スタインウェイ) 録音:2013年3月7日~9日 岩舟町文化会館(コスモスホール)
水と光は、生命にとって不可欠な要素であるだけでなく、その美しさは人々に大きな感動を与えます。朝日に金色に染まる水面、静かな湖に映る月の光、力強い滝の水しぶきや虹を映す雨上がりの水たまり。時には激しく制御不能の恐ろしさを見せる水も、光に照らされることで、希望や癒しを与える存在になります。古今の作曲家たちは、この情景や印象を様々な音楽で表現してきました。 私は、自分の名前にある「洸」の字が「水」と「光」から成ることもあり、「水の光」をテーマにしたプロジェクト『Shimmering Water』を数年前から温めてきました。水に関連したピアノソロ作品を数多く書いているドビュッシー、彼の生誕150年と私自身30歳という節目の年が重なった2012年、このプロジェクトの第一弾として、本アルバムの録音が実現したことは、本当に幸運なことでした。また、光栄なことにドビュッシーが生きた時代に製造され、今年100歳を迎えたヴィンテージ・NYスタインウェイピアノを録音に使わせていただくことができ、本当に嬉しく思います。 アルバムのタイトルにもなっている「水の反映」は、私が中学一年の時から弾いている大切な曲であると同時に、この度の録音を通して、音楽から受けるヴィジョンや感情を心の水面に反映させる、という新たなアプローチの可能性にも気づかせてくれました。このアルバムをお聴きくださる方に、幻想的な「水の光」を求める想像の旅をご提供できれば、私にとってこの上ない喜びです。