第9章:マチネの終わりに〜
舞台袖のドアが開くと、洋子の心拍は急に大きくなった。拍手が起こった。一瞬後に、蒔野が、黒いシャツに黒いズボンという格好で姿を現した。(中略) 蒔野がいる。過去の記憶の中ではなく、駆け寄って行けるほどのこんなに近い距離に。−そのことの現実感を、彼女はしばらく捉えそこねていた。
プログラムの第一部は、ブローウェルの三部構成の名曲《黒いデカメロン》に始まり、ヴィラ=ロボス、武満徹、ロドリーゴと続いて、再びブローウェルのソナタで締め括られる構成だった。
17.5つの前奏曲 より
第2番「カパドシオ(リオの伊達男)の歌」(ヴィラ=ロボス)
18.すべては薄明のなかで より 第1曲(武満徹)
第9章:マチネの終わりに〜
洋子は、自分の感情が混乱し始めているのを感じた。蒔野が再び舞台に姿を現した。シャツだけを白いものに着替えていて、それが、引き締まった顔によく似合っていた。(中略)
後半のプログラムではるバッハの無伴奏チェロ組曲は、その代名詞のような第一番、何曲を以って知られる第五番、そして、セゴビア以来、ギターの編曲としては最も親しまれている第三番が選ばれていた。
無伴奏チェロ組曲 第3番 BWV1009 より(J.S.バッハ/福田進一編)より
マチネの終わりに and more
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